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死刑執行がテーマのサンダンス映画祭審査員グランプリ作、監督らが語る

今作で死刑囚を演じたオルディス・ホッジ
今作で死刑囚を演じたオルディス・ホッジ

 今年のサンダンス映画祭のUSドラマ部門で審査員グランプリを獲得した話題作『クレメンシー(原題) / Clemency』について、チノナイ・チュクー監督と俳優のオルディス・ホッジが、3月27日(現地時間)、ニューヨーク近代美術館(MoMA)にて開催中のニュー・ディレクターズ/ニュー・フィルムズのオープニングナイトのイベントで語った。

【写真】主演はエミー賞を4度受賞している名女優アルフレ・ウッダード

 長年、刑務所の所長として死刑を執行してきたバーナディン・ウィリアムズ(アルフレ・ウッダード)は、死刑囚への家族の思いや死刑執行に反対する人々の感情などに直面し、精神的に疲れ果て、私生活にも支障をきたしていた。だがある日、新たな死刑囚アンソニー・ウッズ(オルディス)の死刑執行に取り掛かる過程で、これまでとは異なった抑えきれない感情が彼女に芽生えていく。映画『アラスカランド(原題) / alaskaLand』のチュクー監督がメガホンを取った。

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 無知で暴力的な死刑囚とは異なるアンソニーを演じたオルディスは「映画を通してどんな人間であるかを(観客に)伝えることをまず考えたんだ。チュクー監督が実際に会ってきた刑務所の看守や死刑囚についての話をしただけでなく、彼女の死刑に対する価値観みたいなことも語り合ったよ。それは、これまで僕が頭の中で描いていた刑務所のイメージとは異なっていて、彼女との話し合いの過程で、刑務所に関する自分の考えも変わったんだ。僕は、強盗や盗みをした囚人や、実際の死刑囚とも接して、それぞれ刑務所内で扱われ方にどんな違いがあるかも調べた。そこで気付いたのは、どんな死刑囚であっても彼らは人間で、刑務所にいるという環境であっても、希望も持っていることだったよ」と語った。

チノナイ・チュクー監督
難しいテーマに挑み、見事、審査員グランプリを獲得したチノナイ・チュクー監督

 チュクー監督は主演のアルフレと共に、オハイオ州の刑務所の所長や死刑囚、看守たちと実際に会い、話を聞いたという。「アルフレは、撮影開始の2年前から今作の主演が決まっていたの。彼女は撮影前に『深く掘り下げていく準備はできている』と言ってくれたわ。それは、演技上の技能ではなく、精神面を掘り下げていくということよ。刑務所所長や死刑囚たち、看守たちとの会話を、まるでスポンジのように吸収して、役柄に取り入れていったの。わたしたちにとってこのオハイオ州でのリサーチは、感情的な部分を捉える上で、とても有効的な時間になったわ」その後、映画全体を通しての主役の感情の起伏を考えていったそうだ。

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 クライマックスで印象的なバーナディンのクローズアップのシーンについて、チュクー監督は「彼女の人間としての葛藤を、観客にひるまずに、おどおどせずに目撃してほしかったの。個人的には革新的な手法になったのじゃないかと思うわ。黒人女優の顔を4分近くもクローズアップして、彼女の顔がスクリーン全体を埋め尽くしているの。それはわれわれ黒人女性たちは、見捨てられたり、目に見えない存在ではないことを主張すると共に、人々にきちんと認識されていることを確かめるための、アーティストとしてのわたしの選択だったわ」と込められた思いを明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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