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ジャーナリズムを変えた…ジョーゼフ・ピューリッツァーを描いたドキュメンタリー、監督を直撃!

オーレン・ルダフスキー監督
オーレン・ルダフスキー監督

 アメリカのジャーナリズムに多大な貢献をしたジョーゼフ・ピューリッツァーを題材にしたドキュメンタリー映画『ジョーゼフ・ピューリッツァー:ヴォイス・オブ・ザ・ピープル(原題)/ Joseph Pulitzer: Voice of the People』について、オーレン・ルダフスキー監督が、2月21日(現地時間)、ニューヨークのヒルトン・ホテルで単独インタビューに応じた。

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 ピューリッツァーは、元米大統領セオドア・ルーズベルトやJP モルガンを相手に、フランスパナマ運河会社に対する米国による4,000万ドルの詐欺の報道をめぐって争った裁判で、言論の自由を勝ち取った人物。ピューリッツァー賞は彼の遺志に基づいて設立された。

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 言論の自由を訴えたピューリッツァーを描くのは、現在、メディアを批判するトランプ米大統領政権下ではタイムリーに思える。だが、実際にはトランプ大統領が当選する前から動き出していたという。「脚本家のロバート・セイドマンが、ピューリッツァーを題材にした映画を扱いたいという話を持ってきたんだ。製作の一番のきっかけとなったのは、ピューリッツァーの秘書をしていたこともある作家アレン・アイルランドが書いた著書『An Adventure with a Genius: Recollections of Joseph Pulitzer』に影響を受けたからなんだ」

 ピューリッツァーがミズーリ州の州議会議員だったことについては「彼はとても政治に興味を持っていたんだ。それに、当時の多くの新聞社は政党と提携していて、政治家が新聞社で働いていることもあったんだ。政党に対する反対意見を持っていたりもしていたが、アメリカ的価値観やデモクラシーの理想をとても大切にしていたよ。権力に対しても、真実を語ることを恐れていなかったんだ」と当時の様子を説明した。

 政治に詳しかったピューリッツァーは、ニューヨークに移り、ニューヨーク・ワールド紙を買収すると、人間に興味を示したストーリーやスキャンダルなどのセンセーショナリズムを追求する。「実際に、当時のニューヨーク・ワールド紙の記事を見て素晴らしいと思うのは、誰かが妻を殺したなどのスキャンダラスなストーリーを、まるでチャールズ・ディケンズの物語のように、生々しく描写していたことだね。それが、人々の関心を引きつけたのだと思うよ。その他にも、労働者階級、貧困層、富裕層についての話も含まれていて、その横にはニューヨークと海外の政治的な記事もあったんだ。いかに読者が新聞を読むか、しっかり把握しながら、構成していたんだ」

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 映画『市民ケーン』のモデルとなった人物、ウィリアム・ランドルフ・ハーストが買収した、ニューヨーク・ジャーナル紙とのライバル関係については「ハーストは、ピューリッツァーのことを当初は称賛し、自身のヒーローとしてあがめていたんだ。ニューヨーク・ジャーナル紙を買収した後は、ピューリッツァーのニューヨーク・ワールド紙のスタイルを真似たり、ニューヨーク・ワールドのスタッフを買収したりもしていた。そんなライバル関係が続く中で、米西戦争(19世紀末、アメリカ・スペイン間に起こった戦争)の真実よりも、イエロー・ジャーナリズム(新聞の発行部数を伸ばすために、事実報道よりも扇情的な内容を売り物にする形態のジャーナリズム)へとつながっていくんだ」と語った。

 当初、台座がなく、資金面から建てるのは困難とされていた自由の女神像。建てるための資金を民間からの寄付で募る案を考えたのもピューリッツァーだった。「当時は、自由の女神が、これほどアメリカの象徴になるとは誰も思っていなかっただろうね。でも移民の人々の心を知っていた彼は、船でやってくる移民にとって、この自由の女神が“希望の光”になり得ることをしっかり理解していたんだ。だからこそ彼は、自身の新聞で一般の人々から基金を集めて、自由の女神の台座を作ることを決めたんだ」と偉大な功績を明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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