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想田和弘監督、政治的発言を行う理由を明かす「きっかけは震災」

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想田和弘監督
想田和弘監督

 最新作『牡蠣工場』が上映中のドキュメンタリー映画監督・想田和弘が、安倍政権批判など社会問題に鋭く切り込む“論客”としての活動の出発点について明かした。

牡蠣工場から見えてくる日本が抱える切実な問題とは……?

 「観察映画」と銘打った独自のドキュメンタリー作品を手掛ける傍らで、「日本人は民主主義を捨てたがっているのか?」や1月に発売された最新刊「観察する男 映画を一本撮るときに、 監督が考えること」などの著書を出版するなど、現在の日本の政治や社会のあり方に警鐘を鳴らす想田監督は、「いつの間にかこんな役割に」と苦笑する。

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 きっかけは2011年の東日本大震災だった。ニューヨークの自宅で原発事故のニュースを見ていたときに「日本で報じられていることと海外のメディアの内容が全然違う」と感じたという。「例えば日本では大学教授が『全然大丈夫です』みたいに安全を強調していたけれど、CNNでは最初からメルトダウンという言葉を使って大惨事として報道していた。そのギャップに疑問を持って、自分で調べてツイッターに投稿し始めたんです」。

 気鋭の映画作家として注目されていた監督の発言は反響を呼び、新聞の取材を受けたり雑誌から原稿を依頼されるようになった。「日本の状況が悪化するばかりでやめられなくなった感はあります。映画作家としては、政治的発言をすると『選挙』のような作品は自民党批判のために撮られた映画だと思われてしまう。実際は同級生が立候補したことが面白くて撮った映画ですから、誤解なんですけどね。先入観で観てもらえないとしたらデメリットしかないので、震災までは政治的発言をすることは極力控えていました」。

 「成り行きで」と謙遜しつつも言葉の端々に本気の覚悟をにじませる。「学生のときは東大新聞で政治の問題を扱って『ペンで社会を変えてやる!』くらいの気持ちでいました。でも特に原発問題なんかは誰にも届かなかったというか、虚しくなったんです。だからその後映画の道に進んでからは、市民としての責任を果たすのは選挙に行く程度で、基本的にはサボっていた。でもその間も小出裕章先生のような方はずっと闘っていらっしゃった。福島で原発事故が起きたときには、僕自身、ずっと恐れていたことが起きたと思いましたし、自分も何かせずにはいられなかった」。

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 最近ではツイッター上での「菅官房長官語で答える」という一連のツイートが話題を呼んだ。菅官房長官や安倍総理の会見や答弁の言葉が、いかにコミュニケーションを成立させないように仕組まれているかを検証しようという試みだった。「段々、普通に発信するのが面白くなくなって、あのときはもう一種のアートにしてしまえと思ったんですよ」と笑って振り返る。

 当たり前のことに疑問を持つという姿勢は、「観察映画」も言論活動でも変わらない。『牡蠣工場』では水産業の現在を通じてグローバリズムや震災後の日本の姿を静かにあぶり出す作品に仕上がっているが、社会に直接訴えかける“当代一の論客”というニーズも増すばかりだ。(取材・文:村山章)

映画『牡蠣工場』はシアター・イメージフォーラムほかで上映中

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