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映画『共喰い』は製作時から視覚障害者を意識 バリアフリー上映の新しい取り組み

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映画『共喰い』 - 主演の菅田将暉
映画『共喰い』 - 主演の菅田将暉 - (c)田中慎弥/集英社・2013『共喰い』製作委員会

 田中慎弥の芥川賞受賞作を青山真治監督が映画化した『共喰い』の「音声ガイダンスのないバリアフリー上映試写会」が8月30日、渋谷の映画美学校試写室で行われた。ゲストとしてNPO法人ピープルデザイン研究所代表理事の須藤シンジ氏、ブラインドサッカー日本代表の加藤健人氏、そして音声ガイダンス上映に詳しい「虹とねいろプロジェクト」の松田高加子氏が出席した。

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 一般的に視覚障害者向けのバリアフリー上映として採用されているのは、劇中の情景や動きなどを、「整理された白い部屋」「コップを持つ」といった具合に副音声で流し、映画鑑賞の理解を補助するというスタイル。しかし今回、映画製作陣との協力体制と上映後のアフターフォローを導入することで、「従来の音声ガイダンス」に代わる新たなバリアフリー上映を実現した。

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 『共喰い』では製作準備段階より、常々「音声ガイダンスなしで、視覚障害者の人たちが理解できないものか」と考えていたという須藤氏が監修として参加。須藤氏はその際、二つの点を留意したと明かす。「一つは、状況音やセリフなどを使って場面を理解できるようにすること。風景の理解を手助けするセリフがあるかどうかに留意しました。二つ目は、状況音をわかりやすくするために、通常の7倍の感度のハイクオリティーな集音マイクを使うということ。これによって、細かい状況音を拾うことができました」。

 そうはいっても、完成した作品には説明的なセリフもほとんどなく、通常の映画と何ら変わらない印象。それだけに、映画を鑑賞した視覚障害者の観客からは「状況音がよく聞こえた」という意見がある一方、「何が起こっているのかわからない箇所があった」という声も。ほぼ全編で目をつぶって鑑賞してみたという健常者からは「雨音が大きくてビックリしたけど、目を開けて観てみたら音のことはそれほど気にならなかった」という感想も聞かれた。

 まだ発展段階ゆえに今回の試みには賛否両論があったが「大事なのは、視覚障害者と健常者が一緒に映画を観るという機会を作ること」と松田氏が語る通り、この日は両者が肩を並べて共に映画を鑑賞。“心のバリアー”を取り払うような試みを今後も期待したい。(取材・文:壬生智裕)

映画『共喰い』は9月7日より新宿ピカデリーほか全国公開

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