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アカデミー賞外国語映画賞ノミネートのガエル・ガルシア・ベルナル主演の新作『ノー』

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パブロ・ラライン監督
パブロ・ラライン監督

 映画『バッド・エデュケーション』、『モーターサイクル・ダイアリーズ』などでおなじみのメキシコ出身の俳優ガエル・ガルシア・ベルナルが主演した新作『ノー(原題)/ No』について、パブロ・ラライン監督が語った。

 同作は、長い間軍事独裁政権を敷いていたチリの大統領ピノチェトの任期の延長の是非を問うために、1988年にチリで国民投票が行われ、反ピノチェト派は広告業界のエグゼクティブ、レネ(ガエル・ガルシア・ベルナル)を雇って、ピノチェトを否定する「No」の選挙キャンペーンを展開し、「Yes」を掲げるピノチェト側と対立していくというドラマ作品。映画『トニー・マネロ(原題) / Tony Manero』(日本未公開)のパブロ・ララインがメガホンを取り、本作はアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされている話題作だ。

 チリでこの国民投票が行われた当時について「僕はまだ12歳の時で、まるで母国のチリがワールドカップに出場したときのように誰もストリートに立っていなくて、国中がこの国民投票でテレビに釘付けだったのを覚えている。ピノチェト側の『Yes』の選挙キャンペーンは無愛想で攻撃的で、どこか馬鹿げていると感じていた。それに引き換え、『No』の選挙キャンペーンは新鮮だったのを覚えている。でもあくまで僕は主役レネの息子のように、子どもの観点で当時の状況を見ていたと思う」と語った。

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 当時の状況を描くうえで、Uマチック(家庭用ビデオテープレコーダー)で撮影したことについて「この当時の映像を作り出すために、スーパー35からUマチックなどおよそ7種類のフォーマットにトライしたんだ。それはこの映画を観て、どの映像が僕らが撮影して、どれがアーカイブの映像かわからなくさせるためでもあった。実際にはこの映画に30%くらいはアーカイブ映像が含まれているが、それさえもわからない映像を施している。だが、一週間ごとにカメラの調子が悪くなり、今ではどこにもこのカメラを修理するような場所がないことも厄介だった」と語った。

 興味深いのは、広告業界の視点から政界を見つめていることだ。「僕は個人的に、近年、言葉の重みが薄れてきている気がする。例えば、洗濯機や冷蔵庫を売るのに、あなたの人生を変えると言われても、どうでもいいと思ってしまう。そして、政治家も同様に、あなたの人生を変えると言っても、何か国のために大きな改革をするのだろうと思うが、そんな言葉にも僕らの多くはどうでもよいと思っている。ところが、広告業界が政界にクロスオーバーすることで、(この映画のように)何か化学反応を起こし、影響のある言葉が残せるんだ」と述べた。

 映画は、独裁政権がもたらす「Yes」キャンペーンと、政界のことが全くわかっていなかった「No」キャンペーンのアプローチの仕方が、当時の政治状況と製作者の思惑が重なり合い、興味深い映画に仕上がっている。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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