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子どもも持たず独身のまま人生を終えるのは悲劇的なのか?巨匠マイク・リーの新作『アナザー・イヤー』

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左から、ルース・シーン、マイク・リー監督、レスリー・マンヴィル、ジム・ブロードべンド-第54回ロンドン映画祭
左から、ルース・シーン、マイク・リー監督、レスリー・マンヴィル、ジム・ブロードべンド-第54回ロンドン映画祭 - Samir Hussein / Getty Images

 現地時間10月18日夜、第54回ロンドン映画祭で開催されたイギリス・プレミアに先立ちマイク・リー監督映画『アナザー・イヤー/Another Year』(原題)の会見が行われた。会見には、リー監督、プロデューサーのジョージーナ・ロウ、主人公夫婦を演じたジム・ブロードべンドとルース・シーン、その友人役レスリー・マンヴィルが参加した。

 「これは、連帯と孤独、家族、親と子、年をとることについての映画だ」「与えること、奪うこと、失望、喪失感、切望、思いやること、育むこと、人生と仕事の関係……たくさんのことを自分自身からも取り込んである」とリー監督は本作を説明する。主人公と周辺の人々の日常を丁寧に描くことで人生をすくいあげて見せるリー監督の持ち味が堪能できる秀作だ。

 時にウィットに富んだ会話で笑わせながら、長い歳月を経た夫婦の温かさを演じて見せるブロードベンドとのシーンもさることながら、その友人の独身女性マリーを演じるマンヴィルが見せる寂しさも印象的だ。「現代では、このマリーのお話を他人事と思える女性は少なくないんじゃないかしら。ある種、悲劇的とも言えるし。望んだわけでもなく、独身で子どもも持たずにきちゃったんだから」とマンヴィルは語る。これほど切実でリアルな独身女性を描けたことについてリー監督も「たくさんの映画、文学、そのほかさまざまなことから学べたからね」と話す。

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 多くのリー監督作品に出演している3人だが、その理由をシーンは「気がどうかしてるせいよ」とジョークで答えた後、「いつも創造的でいさせてくれる。以前やったものとは、毎回まったく違うの」と言い、ブロードベンドも「いつでもリスクがある。それにはワクワクさせられる。それがまたいっしょにやる理由だよ」と話す。それに答えてリー監督は「ここにいる彼らは、とてつもなくいい人たちなんだ。いい俳優、有名な俳優はたくさんいる。でも彼らは特別だよ。創造的なアーティストなんだ」と絶大な信頼を寄せているところを見せた。

 イスラエルの記者から、前日発表されたリー監督のイスラエル訪問取りやめについて問われると「もしイスラエルがきちんと行動し、パレスチナの平和が保たれ、ガザで人権が尊重される状態になれば、私は一番に訪問し、イスラエルの映画制作者やアーティスト達とわかちあうこともする。その時がくるまで、そうすべきではない」と監督は答え、なおも質問を続けようとする記者に対し「それが言いたいことのすべてだ」と訪問取りやめの意思に変わりがないことを明らかにした。

 長く映画を撮り続けてきたリー監督だが「映画は観客がいなければ意味がない。批評家の意見も大事だし、友人の感想が何かを指し示してくれることもある。でも実際のところ観客がすべてだ。いろいろな反応が返ってくる。それぞれの観客がちょっとずつ違う意見を持つんだ。それが大事なんだ」と語る。いい作品を生み出し続けている秘密は、そこにあるのかもしれない。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)

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