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映画たて・よこ・ななめ見!

優しさは大事、でも特別扱いはいらない!

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 ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、村本自らが選んだ映画『わたしはダフネ』。母親を失っても明るくポジティブに生きるダウン症の女性ダフネから、村本と中川は何を感じて、どんなことを考えたのでしょうか。(取材・文:森田真帆)

今回の映画は、公開中の『わたしはダフネ』です。

 フェデリコ・ボンディが監督と脚本を手掛けた人間ドラマ。母親が他界したダウン症の娘と父親の旅を描く。自伝を出版するなど創作活動を行ってきたダウン症のカロリーナ・ラスパンティが主演を務め、『傷だらけの帝王』などのステファニア・カッシーニが母親を演じる。

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大切な友人がダウン症だからこそ、観たかった映画

わたしはダフネ
(C) 2019, Vivo film - tutti i diritti riservati

村本大輔(以下、村本):今回のこの映画は、オレが観たくてリクエストさせてもらった映画やねん。

中川パラダイス(以下、パラダイス):あ、そうやったん? なんでこの映画?

村本:パラダイスも知ってると思うけど、オレの友だちにケーイチっていうダウン症のやつがおってさ。おかんがおらんくて、お父さんしかおらんねん。それで、この映画を知ったときに、なんかケーイチと重なってさ

中川:実際に重なったところはあった? 

村本:ダフネもケーイチも似ているところは、純粋で素直ってところやな。ダウン症の人って施設に行くバスに詰められている姿しか見たことがなかったけど、オレはケーイチと出会ってそういうダウン症の人への印象がだいぶ変わった。パラダイスもケーイチのこと知ってるもんな。

わたしはダフネ
(C) 2019, Vivo film - tutti i diritti riservati

中川:うん。僕はケーイチ君がダウン症の方って知らんかった。今、聞いて初めて知ったわ。よう笑う子やんな。

村本:初めてケーイチがオレのライブ来たときにさ、オレが障害者の人イジるネタやってたら、周りの人がみんなケーイチのことを見るのよ。でもオレは、いつも言っているようにLGBTQだろうが障害者だろうが全員、ほんまに1人の例外もなくイジるから。そこで忖度する方が差別と思っているからさ、その日もネタにしてたわけ。でも傷付けたら嫌やなって思って、独演会終わってから、追いかけてお父さんに「オレは全員ネタにする。障害者だってダウン症やってネタにする。もし彼が傷ついてしまうなら、連れてこない方がいいかもしれない」って伝えたのよ。そしたら、その日の夜にケーイチ自身からDMが来て、全部ネタにしてくれって。それから毎回彼はZARAで働いて稼いだお金でおれの独演会に来てくれてる。オレはあいつの純粋さも知っているから、1人でも多くの人が映画を観てダウン症の人のことを知ってもらえたらええなって思ってんねん。

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変な押し付けがなくて良かった

わたしはダフネ
(C) 2019, Vivo film - tutti i diritti riservati

村本:ダフネ役の女優さんは本物のダウン症の方らしいね。彼女を主人公にするって監督は素晴らしいなって思ったわ。すごく自然に映画の中にいたし、そこにわざわざ「障害者の方の映画ですー!」みたいな変な押し付けがなかったやん。それがめっちゃええなって思って。日本ってさ、ああいう障害者の役を俳優が演じてわざと泣かすようなドラマにするやろ。これはそういうのじゃないやん。わざわざ障害者を使って泣かせようとしてる、感動ポルノじゃなかったのが良かったわ。

中川:そうやな。そういうようわからん、観てる人を泣かせる狙いみたいなのは、全く感じんかったわ。

村本:これが日本で作られてたら、クソみたいな作品やったかもしれんで。めっちゃ有名でキレイな女優とイケメン俳優を使って作ったかもよ。イケメン使うしか数字取れへんからな。この映画みたいに本人連れてこいって思うわ

中川:そうやな。変に坊主にして障害者に寄せてきたりするもんな。

村本:なんやその坊主にするって(笑)。

中川:だいたい有名な俳優がそういう役柄やるとき、変な髪型にして寄せてるやん。

村本:そういうんちゃうかったもんな。主人公を演じた人は、たぶんこのダフネみたいな人なんやろなって思うわ。ダフネ、めっちゃ素敵やったもんな。一言一言が、素直で真っすぐでさ。こっちが考えてもないようなユーモアでオモろいことをいっぱい言うから最高やった。でも、あの主人公の子、障害者雇用で雇われてて、ギャラめっちゃくちゃ安かったらどうする?

中川:そんなん何よりもの差別やわ!

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優しさは大切だけど、特別扱いはいらない

わたしはダフネ
(C) 2019, Vivo film - tutti i diritti riservati

中川:この映画さ、ダフネの周りの人たちがみんな優しくてええ人ばっかりやったやん。理想やなって思ってたわ。特に、スーパーの同僚がめっちゃ良かった

村本:分け隔てない感じ、ええよな。

中川:自分が好きな人に、好きって素直に伝えられる感情って、めっちゃええよなって。そう思った。

村本:実はこの前、被爆した人たちの施設に行ったことがあったんやけどさ。日本人って昔から異質な人間を遠くにやる資質があると思うねん。学校とかも、特別学級とかで分けたりするやん。分断したがるよね。混ざり合わせないから、怖いとか先入観を持ってしまうやん。でもさ、この社会なんて、普通に見えるやつが平気で人を殺すことだってあるやん。そう考えたら、わざわざ分断なんてしなくてええんじゃないかって思うねん。だからさ、もしかしたらこの映画のこと知った人たちは、そんなに興味を持たないかもしれんし、「重そうやな」って思うかもしれん。でも、オレはこの映画をオレらを通して、この連載を通して観てくれる人がいたらうれしいなって思ってん。ダウン症の人たちって、日本ではどこか避けられてるところがあるからさ、この映画を観てダフネの素敵なところを観て、変な先入観を取り払ってもらいたいと思うねん

中川:オレも村本が選ばんかったら絶対観ない映画やけど、実際観たら全然重くもなかったし、オモろかった。

村本:なんでやろ。中川が言うと全然ちゃう映画に感じるわ。

中川:でもこの映画観てめっちゃ思ったのは、優しさっていうのはすごく大事やと思うけど、特別扱いはいらんってことやったな。周りがダフネをそのまま受け入れていたからこそ、ダフネは自分の思っていることを言えて、あんな風に感情を出して怒りまくれるんやと思う(笑)。

※記事内容には個人の意見が含まれています。

『わたしはダフネ』7月3日公開
映画『わたしはダフネ』公式サイト
(C) 2019, Vivo film - tutti i diritti riservati

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ウーマンラッシュアワー・プロフィール  

2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。

村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です!」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため(中退)、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。

村本大輔ツイッター

中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。

中川パラダイスツイッター

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