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絶叫クイーンから天才チェス少女へ!驚異の才能アニャ・テイラー=ジョイ

今週のクローズアップ

Netflixオリジナルシリーズ『クイーンズ・ギャンビット』独占配信中

 孤高の天才チェスプレイヤーの活躍を描いたNetflixの大ヒットドラマ「クイーンズ・ギャンビット」で主演を務め、世界中から注目を浴びる若手俳優アニャ・テイラー=ジョイ(24)。ホラークイーンとして頭角を表し、マッドマックス』最新作の主演にも抜擢された、次代を担う才能の魅力に迫ります。

英語を拒否していた少女時代

インタビューなどでは明るい表情を見せてくれるアニャ Jason Merritt / Getty Images for Sundance

 「クイーンズ・ギャンビット」は、冷戦期のアメリカを舞台に、母親を失い孤児院で育った孤独な少女が、チェスの才能を開花させていくドラマシリーズ。昨年10月に全世界配信されると、そのクオリティーの高さで瞬く間に話題を呼び、28日間で約6,200万世帯が視聴。The New York Times によると、アメリカでは、本作が配信されてからeBayにおけるチェス関連アイテムの売り上げが215%も増加したというほどのブームを巻き起こしました。

 本作でアニャが演じたのは、孤児院で与えられた薬物への依存に苦しみながら、チェスに居場所を見出す主人公ベス・ハーモン。男性ばかりのチェスの世界で自分の存在を証明していく主人公を、時に激しく、時に愛らしく表現し、本年度のゴールデン・グローブ賞や全米映画俳優組合賞(SAG賞)にノミネート。受賞が期待されています。

 1996年に6人兄弟の末っ子としてアメリカ・フロリダ州マイアミで生まれたジョイは、物心つく前にアルゼンチンのブエノスアイレスに移り、6歳で英国ロンドンへと移り住みました。今でこそ英語で素晴らしい演技を披露している彼女ですが、ブエノスアイレスから大都会ロンドンに渡ってからは、2年ほど英語を話すことを拒否していたとNMEのインタビューで語っています。「私は家に帰りたかったし、6~7歳のころの自分は、英語を話せなければ、両親が家に戻してくれるはずだと考えていたんです」

 そんな彼女を変えたのが、叔父が一緒に読んでくれた「ハリー・ポッター」シリーズの存在。そこから英語を学んでいったという彼女は「若い頃は本から言葉を学んでいたので、かなり早熟でしたね」と振り返っています。

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絶叫クイーンとしてブレイク!

リアリティーを追求した当時の描写も恐ろしかった『ウィッチ』 A21 / Photofest / ゲッティ イメージズ

 幼いころから、両親に女優になると語っていたという彼女は、14歳でアメリカ・ニューヨークとイギリスを行き来するようになり、16歳のころにロンドンでモデルとしてスカウトされ、俳優への足がかりをつかみます。彼女をスカウトしたのは、ケイト・モスを発掘した大手モデル事務所ストーム・モデルスの創設者サラ・ドゥーカス。当時のアニャは、自分の後をつけてくる車をストーカーだと勘違いし、走って逃げようとしたと、トーク番組などで明かしています。

 初めての映画『ヴァンパイア・アカデミー』では出演シーンをカットされてしまいましたが、2015年製作のゴシックホラーウィッチで初主演。17世紀のニューイングランドを舞台にした本作でアニャは、家族から魔女の疑いをかけられる清教徒の少女役を務め、その熱演は各国の映画祭で絶賛されます。

 その後、SFスリラー『モーガン プロトタイプ L-9』(劇場未公開)で暴走する人工生命体役、Netflix映画『バリー』で若き日のバラク・オバマの恋人役を務め、ベストセラー小説が原作のミステリードラマ「ミニチュア作家」に主演。2017年には、ある家族の恐ろしい秘密を描く『マローボーン家の掟』、互いに凶暴性を露わにしていく2人の少女を描く『サラブレッド』、そして、多重人格の男に拉致監禁される女子高生たちを描いたM・ナイト・シャマラン監督のスリラー『スプリット』でヒロインを務め、新世代の“スクリーム・クイーン”として名を広めます。

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孤高のヒロインがよく似合う

『スプリット』のケイシーは続編『ミスター・ガラス』にも登場。やっぱり散々な目に合う Universal Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 吸い込まれそうな輝きを放つ大きな瞳と、純粋無垢な子供にも、全てを知り尽くした大人にも見える表情が、アニャの魅力のひとつでしょう。『ウィッチ』で彼女の才能をいち早く見出したロバート・エガース監督は、本作のコメンタリーで「何を考えているのかわからない謎めいた表情が、ミステリアスな魅力を役に与えてくれた」と語っています。

 そのアンニュイな表情ゆえか、世間からはみ出た孤高のヒロインが似合う彼女。『ウィッチ』の主人公トマシンは、敬虔なキリスト教徒一家のなかでも、一人過酷な現実を見つめる少女。『スプリット』で演じたケイシーは、つらい過去を胸に秘め、どこか世の中を俯瞰している孤独な女子高生。『X-MEN』シリーズ最新作『ニュー・ミュータント』で演じた、心に強烈なトラウマを抱えた、強力なパワーを操るツッパリ少女・イリアナ役も彼女にピッタリでした。「クイーンズ・ギャンビット」では、大人にも子供にも見えるその魅力を発揮し、10代からのベスの成長を見事に表現しています。

 そして、ジョージ・ミラー監督作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)のスピンオフ映画では、シャーリーズ・セロンが圧倒的な存在感を発揮した女戦士フュリオサの若き日を演じることに。大役のプレッシャーは計り知れませんが、孤高のヒロインを得意とするアニャなら、若きフュリオサを魅力的なキャラクターとして演じてくれるはず。全米公開は2023年6月23日を予定しています。

今後は賞レースの常連になるかも? アニャ・テイラー=ジョイ Rodin Eckenroth / WireImage / Getty Images

 さらに『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト監督が手掛ける『ラスト・ナイト・イン・ソーホー(原題) / Last Night In Soho』、『ウィッチ』のエガース監督と再びタッグを組む『ザ・ノースマン(原題) / The Northman』、『アメリカン・ハッスル』のデヴィッド・O・ラッセル監督の新作、さらに「クイーンズ・ギャンビット」で企画・製作総指揮企画・脚本・演出を手掛けたスコット・フランクの新作映画も控えるなど、数年先まで新作が待機中の彼女。快進撃は始まったばかりです。(編集部・入倉功一)

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