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日本から世界へ発信するNetflixアニメ作品に注目!

 多数のオリジナル作品でサブスク系(定額制)動画配信サービスをリードするNetflix。昨年の『ROMA/ローマ』(2018)に続き今年のアカデミー賞にも『アイリッシュマン』(2019)、『マリッジ・ストーリー』(2019)などを送り込み全配給会社の中で最多となる24ノミネートを記録しました。アニメーションにもオリジナル作品が多く今年のアニメの祭典アニー賞で作品賞を含む7部門の最多受賞を記録し、アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた『クロース』(2019)や、インディペンデント作品賞を受賞した『失くした体』(2019)もNetflix製作の作品です。(村松健太郎)

全ては2017年から始まる

DEVILMAN crybaby
Netflixオリジナルシリーズ「DEVILMAN crybaby」より - (C)Go Nagai-Devilman Crybaby Project

 そんなNetflixは2017年に日本にアニメ制作の専門部署を創設します。ここでの第一回作品が2018年の「DEVILMAN crybaby」。『夜は短し歩けよ乙女』(2017)、『きみと、波にのれたら』(2019)の湯浅政明監督が永井豪原作のコミック「デビルマン」をアニメ化した企画です。これまで複数回映像化されてきた「デビルマン」ですが、コミックの筋書きを明確に踏襲したのは本作が初めてとなります。

 元々、原作の「デビルマン」も世界的にファンが多い作品ですが、それを完全アニメ化した本作もまた、日本だけでなく世界的に大ヒットを記録。日本製Netflixオリジナルアニメの制作に大きな勢いを与えることになりました。

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「DEVILMAN crybaby」から2年、待望の湯浅監督×Netflix最新作!

日本沈没2020
Netflixオリジナルアニメシリーズ「日本沈没2020」は7月9日より全世界独占配信

 「DEVILMAN crybaby」を成功させた湯浅監督が再びNetflixと組んで制作したのが「日本沈没2020」です。2度の実写映画化で知られる小松左京のSF小説「日本沈没」を初めてアニメ化。舞台設定を2020年の現代の日本にアップデート。スマホやYouTuberといった最新のIT事情や東日本大震災での経験も反映させた、今起こりうる災厄の顛末が描かれます。

 日本を襲う大災害の描写は、アニメーションだからこそ描ける規模感や視点で描かれていて、「正直、かなりの描写を見せてくるな」というのが最初の感想です。表現の自由の幅が広がった分、(もちろんこの「日本沈没2020」はフィクションですが)描き手としてはテーマを支えているさまざまな設定について嘘をつけず、逃げ場がありません。

 しかし、「DEVILMAN crybaby」でも披露した湯浅監督のダイナミックでスケールのある演出がぶれないまま、むしろ冴えを感じさせます。湯浅監督はこれまでどちらかというとファンタジー寄りの作品が多く、その描写もどこか現実離れしたイメージを受けてきました。これに対して「日本沈没2020」では具体的な自然・物理現象を描くことになります。しかし、意外な程に湯浅監督の映像表現が生かされ、徹底的に観る側を打ちのめしに来ます。「DEVILMAN crybaby」でも感じる部分がありましたが、物語が湯浅演出によって残酷な方向に触れるとここまで絶望感が強いのかと感じさせられます。

 オープニングソングの大貫妙子坂本龍一「a life」(エー・ライフ)が何気ない日常を歌い上げているのがかえって、物語の切なさを助長します。その一方で、最終話に描かれる僅かな希望を感じさせる未来像もまた、アニメーションだからこそ描ける風景といえます。

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「DEVILMAN crybaby」から生まれた流れ

ULTRAMAN
Netflixオリジナルアニメシリーズ「ULTRAMAN」より

 「DEVILMAN crybaby」の成功を受けてNetflixは2019年に「ULTRAMAN」を配信します。タイトル通り日本特撮界の一大ブランド・ウルトラマンを主人公に据えながら、1966年の人気特撮「ウルトラマン」以降の作品とは違う時間軸という新しい設定を採用したリブート的なコミックを映像化した作品。

 本作を手掛けたのは『東のエデン』シリーズなどで知られる神山健治と『APPLESEED アップルシード』の荒牧伸志。「ULTRAMAN」は結果として「DEVILMAN crybaby」を上回るヒットを記録。「ULTRAMAN」は後に地上波でも放映されたほか、Netflixが発表した「What's Hot? 2019」の2019年の配信作品ランキングではアニメ部門で1位、総合部門でも6位にランクイン。後に地上波で放映され、さらにシーズン2の製作発表されました。

 この神山健治・荒牧伸志の監督コンビは、過去にさまざまな形で映像化されてきた士郎正宗のベストセラーコミック「攻殻機動隊」を新たにフル3DCGアニメ化した「攻殻機動隊 SAC_2045」を製作し、現在全世界独占配信(※中国本土を除く)中で、こちらも早々にシーズン2が決定しています。

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この先もさらに広がるアニメ作品群

泣きたい私は猫をかぶる
『泣きたい私は猫をかぶる』より - (C) 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会

 「DEVILMAN crybaby」と「ULTRAMAN」、そして同じクリエイターによる諸作品によってアニメの発信源としての地位を固めたNetflixには多岐に渡るタイトルが登場するようになります。

 車田正美のベストセラーコミックを3DCGで再構築させた「聖闘士星矢: Knights of the Zodiac」は2019年7月と2020年1月にパート1、パート2が配信され、原作を再構築した作風は話題になっています。

 他にも話題のコミックを原作にした映像化企画は多くあります。「DEVILMAN crybaby」と「ULTRAMAN」の成功体験があるからかジャンルとしては、SF・ファンタジー作品が多く、「虫籠のカガステル」や「Levius -レビウス-」、「ソードガイ The Animation」、「7SEEDS」、「A.I.C.O. Incarnation」などのタイトルが並びます。また、バトル要素が強い「バキ」や「ケンガンアシュラ」や音楽・歌を大きく取り入れた「LOST SONG」、ぐっとコメディーに振りきった「斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編」、サンリオのキャラクターを主役に据えた「アグレッシブ烈子」などが楽しめます。オリジナル企画では「B: The Beginning」、「HERO MASK」などがあり、「HERO MASK」はパート2まで配信済みで、「B: The Beginning」もシーズン2の制作が決定しています。

 また、オリジナル作品ではありませんが長編映画『泣きたい私は猫をかぶる』が新型コロナウィルスの感染拡大に伴う映画館の休業のあおりを受けて劇場公開ができないでいました。すると、Netflixが手を挙げて、2020年の6月18日より配信が決定するという流れがありました。

 今後の長編作品の配信プラットフォームとしてNetflixが定着しいてくかもしれませんね。

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Netflix日本オリジナルアニメ今後の注目作

エデン
Netflixオリジナルアニメシリーズ「エデン」

 今後のNetflixオリジナルアニメの待機作としては「日本沈没2020」が7月9日から配信されますので、まずはそこに注目となりますが、他のタイトルでは「スプリガン」(SPRIGGAN)があります。たかしげ宙原作、皆川亮二作画によるベストセラーコミックのアニメ化作品です。スプリガンと呼ばれる超古代文明の守護者たちの闘いを描いた本作は1998年に『AKIRA』の大友克洋総監修のもと、一度長編アニメーション映画として公開されましたが、今回新たにアニメシリーズとしてNetflixが手掛けることが発表されました。

 もう一つ注目なのが「エデン」。監督はハガレンことテレビアニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」の入江泰浩監督。数千年後の未来を舞台に、唯一生き残っていた人間の子供を育てるロボットの物語という、原作無しの完全オリジナル作品となっています。

まとめ

 2018年、2019年とアニメスタジオと業務提携してきたNetflixですが、今年2020年の2月にはさらに一歩踏み込んだ形で、『劇場版 カードキャプターさくら』(1999)の創作集団CLAMP、コミック「金田一少年の事件簿」シリーズの原作で知られる天樹征丸樹林伸)、作家の乙一冲方丁太田垣康男ヤマザキマリといったクリエイターとのパートナーシップの発表をしました。

 これはNetflixが配信だけにとどまらない発信者になっていくという意思表明といっていいでしょう。テレビアニメ「カウボーイビバップ」の実写化企画などでは東京オフィスも中心的な役割を担っているという発言もありますので今後もアニメカルチャーの発信者としてのNetflixから目が離せません。

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