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スワロフスキーの輝き~映画を彩るダイヤモンド~

映画に見る憧れのブランド

ロックフェラーセンタークリスマスツリー
NYロックフェラー・センターのクリスマスツリー - Al Pereira / WireImage / Getty Images

 NYロックフェラー・センターのクリスマスツリー、メトロポリタン・オペラのシャンデリアやアカデミー賞受賞式など、アイコニックな舞台を飾るスワロフスキー。ジュエリーやアクセサリーは私たちにもお馴染みですが、ブランドについては意外と知らない人も多いと思います。スワロフスキーが衣装や美術協力をした映画からスワロフスキーの輝きをたどりましょう。

誰もが手にすることができるダイヤモンド

スワロフスキーロゴ
Roberto Machado Noa / LightRocket via Getty Images

 1862年10月24日、北ボヘミア(現在のチェコ共和国)でガラス加工の工場を営む家族に生まれたダニエル・スワロフスキーは小さな頃から父の工場を手伝っていましたが、本当はバイオリニストになりたかったそう。しかし、プロになれるような腕前には上達せず、諦めた彼はパリで教育を受け、その地で近代科学に触れました。そして研削ガラスに電気を使うことを研究し(※1)、1891年、より精密にクリスタルをカットする世界初の電動機械を発明します。(※2) その後オーストリアへ移住したスワロフスキーは、1895年に貴石を模造した人工クリスタルを製作する会社を設立しました。

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スワロフスキー・クリスタル
iStock / Getty Images

 当時、ダイヤモンドという触れ込みでダイヤモンドの価格で売られていたことが多かった人工クリスタル。(※1) しかし、スワロフスキーは人工クリスタルであることを偽ることなく売出し、「誰もが手にすることができるダイヤモンド」として貴石よりもずっとリーズナブルな価格で人々に提供。ダイヤモンドの輝きを一般大衆にも届けました。その結果、スワロフスキーのクリスタルは上流階級から中流階級のあらゆる人の新しいファッショントレンドとなり、1920年代にはアメリカのジャズホールからパリのオートクチュールメゾンまでスワロフスキーのクリスタルやビーズをふんだんにあしらったドレスが世界中を席巻したそうです。(※2)

映画衣装に輝きを添えるスワロフスキー

ジュディ・ガーランド、バート・ラー、ジャック・ヘイリー、レイ・ボルジャー
映画『オズの魔法使』より - MGM / Photofests / ゲッティ イメージズ

 独自のクリスタル製造の技術を開発し、他社が競合できぬほど高い品質のクリスタル製品を生み出し続けたスワロフスキー。第一次世界大戦の際には、ヨーロッパにおけるジュエリーの需要は落ち込みましたが、経済的なダメージが少なかったアメリカ市場に注力することでスワロフスキーは危機を乗り越え、ハリウッド映画とのコラボレーションを始めます。1932年に公開されたマレーネ・ディートリッヒ主演作『ブロンド・ヴィナス』ではジュエリーや衣装に(※2)、ジュディ・ガーランド主演作『オズの魔法使』(1939)ではドロシーが履くルビーの赤い靴にスワロフスキー・クリスタルが使用されました。(※3)

マリリン・モンロー
映画『紳士は金髪がお好き』より - Twentieth Century-Fox Film Corporation / Photofests / ゲッティ イメージズ

 マリリン・モンローがかの有名な「ダイヤモンドは女の親友」を歌った『紳士は金髪がお好き』(1953)。この映画で光るジュエリーはすべてスワロフスキー製で、マリリンはダイヤモンドを一切身につけていなかったとか!(※3)

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映画のセットを飾るスワロフスキー・クリスタル

 1950年代には映画界だけではなく、クリスチャン・ディオールとクリスタルを共同開発するなどファッション業界ともコラボレーションを始めました。ほどなくシャンデリアやガラスの彫刻、ミニチュアの製作にも取り掛かり、ますます事業は拡大。(※2)

オードリー・ヘプバーン
映画『ティファニーで朝食を』より - Paramount Pictures / Photofests / ゲッティ イメージズ

 その後も映画とのコラボレーションは続き、『ティファニーで朝食を』(1963)ではオードリー・ヘプバーンが歴史に残るリトル・ブラック・ドレスとパールネックレスというアイコニックなスタイルで登場していますが、彼女が被っているティアラもスワロフスキー製です。(※3)

ニコール・キッドマン、ユアン・マクレガー
映画『ムーラン・ルージュ』より - 20th Century Fox / Photofests / ゲッティ イメージズ

 2000年代に入るとスワロフスキーは映画のセットの美術協力にも関わり始めニコール・キッドマンユアン・マクレガー主演の『ムーラン・ルージュ』(2001)やピアース・ブロスナンがボンドを演じた『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002)の衣装とセットにもクリスタルを提供しました(※4)。

シャンデリア
映画『オペラ座の怪人』より - Warner Bros. / Photofests / ゲッティ イメージズ

 また、映画に登場する豪華絢爛なシャンデリアも、もちろんスワロフスキー製ジェラルド・バトラーがファントムを演じた『オペラ座の怪人』(2004)で、物語を語る上で欠かせないあのシャンデリアは2.2トンの重さがあり、時価130万ドル!(約1億4300万円、1ドル110円計算)(※5)レオナルド・ディカプリオがギャツビーを演じた『華麗なるギャツビー』(2013)のシャンデリアは手作りで、クリスタルを装着するのに200時間もかかったのだそうです。(※6)

ガラス製のベル型ドーム
映画『美女と野獣』で使用されたベル型ドーム - Stefanie Keenan / Getty Images for Swarovski

 同様に、『美女と野獣』(2017)のシャンデリアもスワロフスキーが手掛けています。エマ・ワトソン演じるベルが着るイエロードレスには2,160個ものスワロフスキー・クリスタルがつけられていますが、最も印象的なスワロフスキーのアイテムは、物語の鍵となる一輪の魔法のバラを守るガラス製のベル型ドーム。氷に包まれているように見せるために、スワロフスキーの職人がガラスドームの表面に細かいエッチングを施し、煌めきを出すために543面のファセットにカットされているそうです。(※7)

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アカデミー賞受賞式の舞台装飾をするように

 2月に行われた第91回アカデミー賞受賞式の舞台を装飾したのもスワロフスキー。実はこれは12回目のコラボレーションであり、きっかけは2006年のミュージカル映画『ドリームガールズ』だったのだそう。本作の衣装やカーテンに使用されているスワロフスキー・クリスタルを見た当時のオスカーのプロダクションデザイナーの働きかけによりスワロフスキーとオスカーのコラボレーションが2006年以降に始まりました。なかでも2018年のアカデミー賞では、1995年にスワロフスキーの創業100周年を記念してオープンしたオーストリアのヴァッテンスにあるスワロフスキー・クリスタルワールドをモチーフにしたクリスタルドームを舞台に作り(※4)、世界中から称賛を集めたのです。

スワロフスキー独自の虹色の光とカッティング技術

 スワロフスキーが映画界に愛されるのはなぜなのかーー。その秘密は他社がマネできないスワロフスキー・クリスタルの虹色の光でしょう。これは独自の亜鉛含有量やカッティング技術によって成されていますが、スワロフスキーの技術は決して社外に明かされていないので詳細は不明。そんな唯一無二の技術が結集されたアイテムがリリー・ジェームズ主演の『シンデレラ』(2015)に登場するガラスの靴。衣装デザイナーのデザイン画を見たスワロフスキーの商品開発部は、当初、この靴をクリスタルで作るのは不可能だと思ったそう。(※8)

ガラスの靴
映画『シンデレラ』で使用されたガラスの靴 - Jan Hetfleisch / Getty Images

 6回ものデジタルレンダリングを経てやっと完成されたガラスの靴は、300個のクリスタルが使われ221面ものファセットにカットされたもの。光の反射によって虹色に輝くこの靴の中央に飾られたは、灰被りの娘がサナギから脱皮し強く美しいプリンセスへと変身する成長を象徴しているかのよう。そこにはダイヤモンドの輝きをすべての女性に与えたいというダニエル・スワロフスキーの願いが重ねられているのではないでしょうか。ほかにもシンデレラが被るティアラや舞踏会のブルードレスに散りばめられたクリスタルなど、約700万個のスワロフスキー製のクリスタルが使用されました。(※8)

タロン・エジャトン
映画『ロケットマン』より - Paramount Pictures / Photofests / ゲッティ イメージズ

 ちなみに、今年公開された映画『ロケットマン』のタロン・エジャトン演じるエルトン・ジョンがドジャー・スタジアムでまとうキラキラの野球ユニフォームにもスワロフスキーのクリスタルが10万個以上も散りばめられています。(※9)

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映画製作会社を立ち上げたスワロフスキー

 80年以上にわたり映画に協力をしてきたスワロフスキーは、2011年にスワロフスキー・エンターテインメントという映画製作会社を立ち上げました。企業の社会的責任を重視したクリスタルの製法を守りながらクラフツマンシップと匠の技で素晴らしい芸術品を創作すると同時に、業界によりよい行動と姿勢が広まるように務める「コンシャスラグジュアリー」(※1)というスワロフスキー哲学を映画を通して世界へ伝えたい、という願いが製作会社設立に込められているのだとか。

ヘイリー・スタインフェルド、ダグラス・ブース
映画『ロミオとジュリエット』より - Relativity Media / Photofests / ゲッティ イメージズ

 スワロフスキー・エンターテインメントが初めて製作した映画がヘイリー・スタインフェルドダグラス・ブース主演の『ロミオとジュリエット』(2013・日本未公開)。劇中の衣装、ジュエリー、アクセサリーや仮面に使われたスワロフスキー・クリスタルは50万個です。(※10) 政略結婚や社会的抑圧に反して、自分らしさや愛を貫いた若者の姿を描いたこの不朽の名作は、まさにスワロフスキーブランドが製品を通して世界に伝えたい自分らしい愛や情熱の輝き、そして究極の芸術を体現しています。

 年間30億ドル(約3,300億円、1ドル110円計算)以上もの利益を誇るスワロフスキーは創立者の子孫が経営する独立したプライベートカンパニーです。(※11) 10月末にティファニーがLVMHグループからの買収案を検討しているという衝撃的なニュースが世界を駆け巡りました。由緒あるラグジュアリー・ブランドでファッション・コングロマリットに吸収されず、独立を保っているブランドはもはや片手で数えるほどしかないでしょう

スワロフスキー店内
Vivien Killilea / Getty Images for Swarovski

 ダニエル・スワロフスキーが会社を立ち上げた19世紀末のヨーロッパは、財産権、離婚法、妻の地位、職業の制限、参政権などにおける女性解放が本格的に始まった時代。そんな時代にダイヤモンドの輝きをすべての女性に解放し、女性をエンパワーしたダニエルは、それまで富裕層だけのものだったジュエリーを民主化したとも言えるのではないでしょうか。

 「誰もが手にすることができるダイヤモンド」という創立者の理念を、124年経った今でも子孫が大切に守り続けているのがスワロフスキーなのです。

【参考】
※1…Daniel Swarovski Biography: Crystal Stones That Shine Like Diamonds - Astrum People
※2…ブランドの歴史 - スワロフスキー公式サイト
※3…Making History - Crystals from Swarovski
※4…From Moulin Rouge! to the Oscars: The Long History of Swarovski in Hollywood - VOGUE
※5…The Phantom of the Opera (2004) Trivia - IMDb
※6…GREAT SCOTT - SWAROVSKI
※7…FIT FOR A FAIRYTALE - SWAROVSKI
※8…Magic in the Making - Swarovski
※9…SWAROVSKI BRINGS ROCKSTAR DAZZLE TO ROCKETMAN MOVIE - Swarovski
※10…LOVE STORY - SWAROVSKI
※11…SWAROVSKI FACT SHEET 2017 - SWAROVSKI

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此花わかプロフィール

此花わか

映画ライター。NYのファッション工科大学(FIT)を卒業後、シャネルや資生堂アメリカのマーケティング部勤務を経てライターに。ジェンダーやファッションから映画を読み解くのが好き。手がけた取材にジャスティン・ビーバーライアン・ゴズリングヒュー・ジャックマンデイミアン・チャゼル監督、ギレルモ・デル・トロ監督、ガス・ヴァン・サント監督など。 (此花さくや から改名しました)

Twitter:@sakuya_kono
Instagram:@wakakonohana

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