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『108~海馬五郎の復讐と冒険~』中山美穂 単独インタビュー

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『108~海馬五郎の復讐と冒険~』中山美穂 単独インタビュー

夫婦げんかのシーンにアドリブ

取材・文:坂田正樹 写真:上野裕二

元女優の妻・綾子の浮気をSNSで知った脚本家の夫・海馬五郎(松尾スズキ)。激怒した彼は、妻の投稿についた「いいね!」の数だけ浮気を仕返すという奇妙な復讐に出る……。夫を翻弄する綾子を演じるのは、監督・脚本・主演の3役を務めた松尾からラブコールを受けたという女優の中山美穂。爆笑必至のコメディーとはいえR18+指定の過激な描写に一抹の不安を覚えるも、「絶対に面白い映画になる」と確信し、快諾したという。監督の要望に応え、これまでのイメージを覆す新境地に挑んだ中山が、松尾ワールドの魅力を語った。

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ぶっ飛んだ「松尾ワールド」に惹かれた

中山美穂

Q:完成作品をご覧になっていかがでしたか?

もう、おなかを抱えて笑っちゃいました。脚本を読んだときに、「これ、どうなっちゃうんだろう?」と思うシーンも多かったですし、わたしが出ていない未知のシーンを含め、ワクワクしながら観たのですが、想像していたよりもすごかったですね。共演者の皆さんが、この映画でしか体験できない個性的な役を振り切って演じていらっしゃるところも面白かったです。

Q:松尾さんから直接ラブコールを受けたと聞いています。

共演シーンはなかったのですが、京都で同じドラマ(NHK「平成細雪」2018年)の撮影があって、そのときにスタッフを交えたお酒の席で初めてお会いしたんです。それまで面識はなかったのですが、この映画の壮大な構想をうかがっているうちに、松尾さんの独特の世界観にどんどん惹かれていって。ここまでぶっ飛んだお話ならチャレンジしがいもありますし、「絶対に面白い作品になる!」となぜか確信したんですよね。

Q:その場で即答されたんですか?

後日、改めて正式にオファーをいただいたと思います。でも、まさか妻の綾子役をいただけるとは思っていなかったので驚きました。脚本を読ませていただいたときは、かなりぶっ飛んだ描写もあり、ある意味大胆な役でもあったので、多少は戸惑いましたが、「夫から見た綾子」という設定において、思い切ってできるのではないかと。松尾さんも「大丈夫、絶対にいい作品にするから」とおっしゃってくださったので、思い切って決めました。

自分のタトゥー姿が新鮮で思わず記念撮影

中山美穂

Q:奇想天外な世界観なのでそのぶんシーンの解釈、演技も難しかったと思いますが、綾子役をどのように捉え、演じたのでしょう。

「夫から見た綾子」が多かったので、楽しみながら演じました。五郎が追い詰められれば追い詰められるほど面白くなるので、できるだけ「穏やかでしたたかな怖さ」というか、五郎と対極に映ればいいなと思いました。その部分はこだわりましたね。

Q:松尾さんの演出はいかがでしたか? ご自身が主演も兼ねているので、撮影現場での比重を減らすためリハーサルを入念に行ったそうですね。

そうですね。リハーサルをしっかりやっていたので、撮影もいいテンポで進みました。撮影現場でも独特の世界観が出来上がっているので、松尾さんが監督の顔になったり、主演の顔になったり、忙しくされていても全く違和感なく、自然体でいらっしゃる感じでやりやすかったですね。演出については、綾子の声のトーンやセリフの言い方にはこだわりがあったようですが、特に厳しいと感じた注文はありませんでした。

Q:綾子に共感できる部分はありましたか?

演じているときは全くなかったというか、わからなかったですね(笑)。ただ、ある人から「綾子っていい女ですよね」って言われてハッとしたんです。今まで気づかなかったのですが、確かに正直でピュアなところもあるので、観客の方々にもそう映るのなら、なおさらいい役をいただけたなと思います。

Q:綾子がイケメンダンサーの名前を刻んだ腕を見せるシーンは、一瞬びっくりしました。

いい大人の女性が、あそこまで入れ込んで突拍子もない行動に出る心理は、正直、わからないのですが、そこもちょっと可愛らしいかなって。自分のタトゥー姿があまりにも新鮮だったので、思わず記念写真を撮っちゃいました(笑)。

夫婦げんかのシーンではアドリブも

中山美穂

Q:綾子が五郎に浮気を問い詰められるシーンは抱腹絶倒でした。

夫婦がものすごい修羅場を迎えている最中、グツグツ煮立った鍋の音が鳴り響いているというシチュエーションがおかしくて(笑)。ああいうところのセンスが面白いですよね。あと、けんかがピークに達しているときに五郎のスマホが鳴って、綾子に「(怒り狂った)その感情をそのままキープしておけ!」とか言って、冷静に電話に出ているところも最高でした。

Q:アドリブもあったのでしょうか。

基本は台本に沿って進行していきますが、その場で変えることもあったと思います。

Q:アドリブで印象に残っているシーンはありますか?

五郎から「これを見ろ!」とスマホを突き付けられるシーンがあるのですが、本当に文字が小さ過ぎて見えなかったので、とっさに少しスマホを顔から離したんです。そしたら松尾さんから「おまえ、これ(老眼鏡)かけとけ!」ってメガネを渡されて(笑)。

Q:予測不可能な松尾さんのアドリブを平然と受け止めて芝居を続けられる中山さんもすごいですね(笑)。

確かに(笑)。でも、わたしが出演しているシーンでは、松尾さんがどんなにおかしなことを仕掛けてきたとしても、例えば笑ってしまったりNGを出したことは一度もなかったです。わたしが絡まない松尾さんのシーンは、思い切りゲラゲラ笑って観ていましたけどね(笑)。

ひたすら笑ってほしい

中山美穂

Q:妻の不貞を許せず、SNSについた108の「いいね!」にキレる夫。まるで子供のようにのたうちまわる五郎の振る舞いを、どう感じましたか?

(コメディーなので)このキャラクターは極端に描かれていますが、ドタバタしていく感じが滑稽だったり、可愛かったりする。バカだなぁと思いながらも、どこか愛おしいというか。だって、妻のことが大好きで、大好きで、大好き過ぎて、おかしくなっていくわけですからね。浮気の復讐のために財産を使い果たすなんてありえないですけど、ニクめない(笑)。

Q:この映画を通して夫婦間におけるさまざまな問題が見えてきますが、何か新しい発見や気づき、みたいなものはありましたか?

うーん、どうですかね。そんな難しいことを考えるよりも、わたしとしては、ひたすら笑ってほしいです。ただ、最後に「切なさ」みたいなものは残りますよね。人間って、愛が強すぎると滑稽にもなる。この先、2人がどうなっていくのかはわかりませんが、もしわたしだったらどうでしょう……。お互いに許し合えるのかな? ここまでの事態になると、正直わかりません(笑)。本当に、思い出したら笑ってしまう映画です。


中山美穂

奇才・松尾スズキが放つ大人向けのR18コメディー。尻込みしそうな企画でも、「絶対に面白い作品になる」という自身の直感を信じ、腹を決めたら一直線に突き進む。そんな、松尾も脱帽した中山の潔さはスクリーンにもにじみ出ており、すがすがしいほど。「もしも続編の企画があったら?」と尋ねると、「ぜひぜひ!」と笑顔を見せる中山に、女優としての貫禄、懐の深さを見た。

(C) 2019「108~海馬五郎の復讐と冒険~」製作委員会

映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』は10月25日より全国公開

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