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『追憶』岡田准一インタビュー

撮影後は小栗旬と柄本佑とサウナで反省会

『追憶』

数々の名作を世に送り出してきた名匠・降旗康男監督と、撮影の名手・木村大作。そんな日本映画界の黄金コンビが約10年ぶりにタッグを組んだ『追憶』は、ある殺人事件をきっかけに刑事、被害者、容疑者として25年ぶりに再会した幼なじみの3人の狂おしい運命を描いた感動のヒューマン・ミステリーだ。本作で主人公の刑事・四方篤に扮した岡田准一が、レジェンドたちとの現場や、容疑者と被害者を演じた同世代の俳優、小栗旬柄本佑との共演を振り返った。

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■自分自身を見つめ直す時間になった

『追憶』

Q:少年時代のトラウマに縛られた刑事の四方篤という役にどう臨まれましたか?

僕は自分の感情を乗せて物語が進んでいくような主人公を演じさせてもらうことが多いんですけど、今回の篤という役は抱えているものを見せないように演じる方法もあるなと思っていました。でも、役づくりに関してあまり多くを語らない降旗監督から、撮影に入る前に「抱えていることを出し惜しみせずに出して欲しい」と言われたので、感情をしっかり出していくようにしました。でも、本当に言葉が少ない方なので、その気持ちを探りながら、監督と大作さんにラブレターを書くように芝居をしていた感じがありますね。

Q:降旗監督は「『追憶』は陰を抱えた人たちの話」で、その陰を抱えた主人公が「岡田さんにピッタリだ」と言われていました。

若い頃は「陰のある芝居ができる」と言ってもらえたこともありましたし、自分でも多重的に見せることにこだわっていた時期もあったんですけど、最近は侍か軍人、社長か警察官の役のオファーしか来なくて(笑)、あまり陰のある役はやってなかったんですよね。ただ、役を演じるときは岡田准一とは違って見えることをずっとテーマに掲げていましたし、『海賊とよばれた男』(2016)だったら石油会社の社長に、『永遠の0』(2013)だったらゼロ戦のパイロットに、「SP(エスピー) 警視庁警備部警護課第四係」(2007)では警察官に見えることだけを考えて、役柄が愛されるようにというところにこだわってやってきたんです。逆に、僕の本質を見たいと言われることもなかったんですけど、今回の撮影が終わった後に「そろそろ『演じる』ということを考えるのをやめたらどうだ。もっと自分の人間力が映るようにしていった方がいい」ってはっきり言われたんです。

『追憶』

Q:降旗監督に言われたんですか?

大作さんにですね。「無理に演じようとしたり、自分のキャラクターを変えて演じることにこだわらなくていい」って。そういう、その役者の心だったり、核となるもの、もっと言うと、人間そのものを撮りたいと思って撮り続けてきた方たちとの仕事は、自分自身を見つめ直す時間でもありましたね。

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■緊張の一発撮りに、安田顕が…

『追憶』

Q:北陸ロケでは、毎日のようにホテルのサウナで小栗旬さんと柄本佑さんと反省会をしていたそうですね。

今はデジタルでの撮影が主流で、同じ芝居をアングルを変えて何度でも撮るスタイルが一般的になっていますけど、今回は昔ながらのフィルムでの撮影だったんです。1テイクで終わってしまうことも多いですし、一発しか撮らない緊張感もあって、震えながら芝居をしていた人もいたんです。それこそ、刑事たちが会議をするシーンでは6カメで撮ったんですけど、6カメで撮ることもなかなかできない経験ですし、一発しか撮らないのでセリフを噛めないというプレッシャーもあって。刑事の一人を演じた安田顕さんも、本番前に「ヤバいです」と言いながら、尋常じゃない手汗を見せてくれました(笑)。そういう一種の緊張感と高揚感、お祭り感が混在した現場でしたけど、監督が何か多くを語ってくださるわけでもないですし、富山で午後2時に撮影が終わってもやることがないから、とりあえずサウナにみんなで行って、「俺たち、ちゃんとできているのかな?」って反省会をしていたんです。

『追憶』

Q:そこで問題提起する人は誰でしたか?

小栗くんは撮影に途中から参加したので、現場に入る前は「どんな現場ですか?」ってメールが来ました。それで「大作さんが『今日はカモメが撮りたかったけど、鳶がいるから撮らない』って吠えていた。そんな楽しい現場だよ」って返して(笑)。でも、サウナではそんなに激論を戦わせることもなく、結果的には「この現場を経験できて、俺たちは本当に幸せだね」って話していましたね。それに昔、新春ドラマの「大化改新」(2005) で共演したことのある小栗くんと再会できた喜びもあったし、役者から尊敬されている佑くんと仕事ができたこともいい刺激になって、すごく楽しかったです。

Q:反省会では、小栗さんや佑さんの現場での立ち方とか、仕事への向き合い方も垣間見ることができたんじゃないですか?

芝居論みたいなものを話す3人ではなかったけど、僕らには台本がちょっと難しかったんですよね。でも、3人ともこの台本には自分たちには見えないけど、監督と大作さんに見えている何かがあるはずだと思っていて。みんな、それを探しながら現場に来ていたから、サウナでは「同じこと思ってたんだ!」って盛り上がりました(笑)。

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■小栗旬、柄本佑との共演で感じたこと

『追憶』

Q:降旗監督からは「台本の後半を2人(岡田・小栗)で考えて変えてくれ」と言われたそうですね。

設定を変えることはできないので、セリフをそれぞれの思いが伝わるものにして欲しいということだったんです。それで例えば、佑くんの演じた悟が死んだことを聞いたときのリアクションがサラっとしているから、僕がちょっと泣きそうになる芝居を加えたり、余白が多い台本だったので、「俺たちはもっと早く会うべきだった」というセリフを入れて、小栗くん演じる啓太と僕が演じる篤の、それぞれの感情がもう少しわかるようにしたりしました。

Q:小栗さんは岡田さんのことを「侍のような人」と言われていましたが、岡田さんから見た小栗さんと佑さんの印象は?

小栗くんは、今や“小栗一派”の後輩たちのリーダー的な存在で、みんなに好かれる人柄だから役者の仲間内でも兄貴的な存在です。そんな彼が少しだけ先に主演をやるようになった僕のことを先輩として見てくれるのは嬉しかったけど、不思議な感じでした。それに対して、佑くんはとにかくご家族が役者一家ですからね。それに純粋に役者さんとして魅力的ですし、彼の役者の才能は羨ましくもある。二人ともとてもステキでしたね。

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■取材後記

北陸での撮影の日々を懐かしむように振り返った岡田。「昔から頑張ることに美しさを感じている自分がいて。でも、今後はいい意味で力の抜けた芝居を求められるようにならなきゃいけないと思っていたときだっただけに大作さんの言葉は大きかった」と語る彼は、日本映画の伝統を肌で感じる今回の貴重な撮影と同世代の俳優たちとの共演を経て、これからどのように進化していくのだろうか? 映画『追憶』は、これからの日本映画界を担う岡田の、役者としての生き方にも大きな影響を及ぼしているに違いない。(取材・文:イソガイマサト)

映画『追憶』は5月6日より全国公開

(C) 2017「追憶」製作委員会

映画『追憶』オフィシャルサイトはこちら

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