ADVERTISEMENT

文学映画への招待!作家を描いた映画特集

今週のクローズアップ

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア

画像テキスト

 呑んだくれの自称“詩人”が出版社に作品を認められるまでを描いた『酔いどれ詩人になるまえに』、破天荒な文学の寵児たちの青春ドラマ『キル・ユア・ダーリン』、巨匠・黒澤明監督作品『まあだだよ』やベネット・ミラー監督『カポーティ』など個性豊かな作家たちが登場する作品を紹介する。(構成・文:編集部・那須本康)

赤裸々な女性の性と美しい南仏の自然『ヴィオレット-ある作家の肖像-』(2015)

ヴィオレット
古いパリの情景や登場人物たちの衣装にも注目 (C) TS PRODUCTIONS - 2013

 本作は、作家ヴィオレット・ルデュックの半生を描く。1907年に非嫡出子として生まれた、ヴィオレットは、同性愛者の作家モーリス・サックスとともにナチスに占領されたパリを離れる。戦後、作家で思想家でもあるシモーヌ・ド・ボーヴォワールに文章の才能を認められた彼女は、処女作「窒息」を1946年に発表する。性や自分の境遇などをつづった内容は、アルベール・カミュジャン=ポール・サルトルら高く評価された。

 シモーヌ・ド・ボーヴォワールをはじめ、ジャン・ジュネといった文化人との交流を経て作家としての才能を開花させる一方で、愛に飢え、ひたすら抑えきれない情欲と向き合うヴィオレット。生々しく、赤裸々に女性の性を描き出し、創作と、偶然に訪れた自然豊かな南仏の田舎町での生活に安らぎを見いだしていくまでをつづる。『セラフィーヌの庭』でセザール賞作品賞を受賞したマルタン・プロヴォ監督がメガホンを取り、『アメリ』『イヴ・サンローラン』のマデリーン・フォンテーヌが手掛けたキャラクターの個性を全面に活かした衣装も魅力。映画『ヴィオレット-ある作家の肖像-』は12月19日より岩波ホールほかで公開。

ADVERTISEMENT

デイン・デハーンが美し過ぎて困る『キル・ユア・ダーリン』(2013)

キル・ユア・ダーリン
日本劇場未公開の『キル・ユア・ダーリン』はDVDが発売中 発売元:カルチュア・パブリッシャーズ セル販売元:TCエンタテインメント (C)2013 KYD FILM LLC ALL RIGHTS RESERVED

 文学の殿堂であるコロンビア大学を舞台に、伝統に抗う詩人アレン・ギンズバーグとビート文学世代の作家たちの学生時代を描く。『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフと『アメイジング・スパイダーマン2』のデイン・デハーンが、危険でピュアな恋愛関係に陥る青年二人を演じる。デハーンの美青年ぶりに世のお姉さまたちもイチコロな一本。嫉妬と文学への情熱、友情とが交錯する彼らの青春時代が、悲劇的な事件で終焉(しゅうえん)を迎えるまでの物語。ラドクリフとデハーンのキスシーンも話題になった。

 アレン・ギンズバーグ、ジャック・ケルアックウィリアム・S・バロウズといった、ビート・ジェネレーション(ビートニク)ともの作家たち。既存の文章を切り刻んで再構築する斬新な手法で創作を行い、1950年代のカウンターカルチャーとしてアメリカ文学史にその名を刻んだ。とくにバロウズの人気は現在でも根強く、ウィリアム・テルをまねて自分の妻を射殺したエピソードに代表される奇行が知名度に貢献している。

ADVERTISEMENT

芸術、そして恋の都、黄金時代のパリへ『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)

ミッドナイト・イン・パリ
オーウェン・ウィルソンがクセ者アーティストに圧倒されっぱなし Photo by Roger Arpajou (C)2011 Mediaproduccion, S.L.U.,Versatil Cinema, S.L.and Gravier Productions, Inc.

 ウディ・アレン監督が、芸術の都パリを舞台に描いたロマンス。オーウェン・ウィルソンが演じる小説家志望の脚本家ギルが、憧れの時代……アーネスト・ヘミングウェイF・スコット・フィッツジェラルドといった作家のほか、パブロ・ピカソサルバドール・ダリなどの芸術家の集まるパリにタイムスリップする物語で、エイドリアン・ブロディが演じるダリをはじめアクの強いキャラクターが次々と登場する。レア・セドゥなど、豪華な出演陣を贅沢にちりばめているのも本作の魅力だ。

 ノーベル文学賞を受賞したアーネスト・ヘミングウェイ。スペイン内戦に参加、第二次世界大戦では従軍記者として活動し、自身の作品にもその影響を垣間見ることができる。劇中でもそのマッチョで好戦的な性格がコミカルに描写されている。フィッツジェラルドは「グレート・ギャツビー」で知られるアメリカの作家で、同作は度々舞台、映画の題材となっている。近年ではバズ・ラーマン監督の『華麗なるギャツビー』でレオナルド・ディカプリオが主演を務めたことが記憶に新しい。

ADVERTISEMENT

時代が遅すぎた!天才と呼ばれた作家の壮絶な一生『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ(原題) / Mishima:A Life in Four Chapters』(1985)

ミシマ
壮絶で侮辱と失望に満ちた最期までを重厚に描く Warner Bros. Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 自衛隊市ヶ谷駐屯地で決起し、45歳で割腹自殺した作家・三島由紀夫。10代で短編小説を発表するなど、誰もが認める天才として海外にもその名が知られている。「仮面の告白」「金閣寺」「禁色」などの作品を残し、独自の美学に基づく耽美的な世界観と精緻な文体が高い評価を受けている。

 『タクシードライバー』『レイジング・ブル』などの脚本で有名なポール・シュレイダーがメガホンを取った本作。三島由紀夫の幼少時代や三島事件として知られる市ヶ谷駐屯地でのクーデターを描き、「鏡子の家」「金閣寺」「仮面の告白」「奔馬」といった三島作品を絡める複雑な構成を持つ。緒形拳の鬼気迫る熱演に加え、沢田研二萬田久子佐藤浩市などの出演陣や、ターセム監督のもとで『ザ・セル』『落下の王国』などの衣装を担当した石岡瑛子が手掛ける独特の美術も見どころ。遺族の申し立てなどの諸事情により日本では公開が見送られた。

ADVERTISEMENT

酒と女とダメ男『酔いどれ詩人になるまえに』(2005)

ブコウスキー
大好きな酒を手に女に囲まれてご満悦かと思いきや浮かない顔…作家とは複雑な生き物だ Picturehouse / Photofest / ゲッティ イメージズ

 チャールズ・ブコウスキーは、前述のビート世代の作家と同世代の詩人・小説家。極度の酒好き、女好きで知られ、自伝的な作品を残した。社会的弱者の生活をドライな笑いに換えた文体でつづる異能の作家で、俳優のショーン・ペンや歌手のトム・ウェイツと交友を持つなど意外な一面もある。彼に関するドキュメンタリー『ブコウスキー・オールドパンク』という作品も存在する。

 そんなアメリカ文学の異端児ブコウスキーの小説「勝手に生きろ!」をもとに、作者の分身といわれる自称詩人のヘンリー・チナスキーが、ギャンブルと酒、女に溺れながら四苦八苦する本作。仕事も長続きせず、絵に描いたようなダメ男が度重なる出版社への持ち込みを経て作品を認めてもらうまでの破天荒な生活を描く。

美しく楽しい師弟関係を描く巨匠の遺作『まあだだよ』(1993)

まあだだよ
おっさんしかいなくても、こんなに楽しそう! WinStar / Photofest / ゲッティ イメージズ

 日本が誇る巨匠・黒澤明監督の遺作。「ノラや」をはじめとした内田百間の随筆をもとに、自由奔放で飄々(ひょうひょう)とした百間と教え子の交流を描いた作品。百間役で『切腹』『男はつらいよ』シリーズなどの松村達雄、教え子役で所ジョージ寺尾聰が出演している。

 夏目漱石の弟子であり、その子供のような性格から多くの人に愛された百間。小説作品のほか、ユーモアに富んだ「阿房列車」シリーズなどの紀行文、随筆も多く手掛け、愛猫家、食通としての一面を「ノラや」「御馳走帖」などで披露している。※内田百間の「間」は、門構えに月

ADVERTISEMENT

フィリップ・シーモア・ホフマンの怪演が光る『カポーティ』(2005)

カポーティ
劇中、カポーティが独り言を連発 パーティ・ピープルとは思えない近寄り難さ Sony Pictures Classics / Photofest / ゲッティ イメージズ

 アメリカの作家トルーマン・カポーティは、オードリー・ヘップバーン主演の映画『ティファニーで朝食を』の同名原作で知られる。雑誌ザ・ニューヨーカーに勤め、作家として大成した後はセレブリティーとの交流やゴシップに彩られた生活を送る。

 本作では、ノンフィクション小説のさきがけ「冷血」の誕生までを描く。一家4人が惨殺された事件の容疑者と交流を持ち、事件の内容を作品にしようと考える作家カポーティ。死刑囚を欺き、最期まで希望を持たせて事件の情報を引き出そうとする彼の作品への執念と道徳を意に介さない残酷さ。「冷血」とはいったい誰のことなのか。理解者がほとんどいないカポーティがポツネンとたたずむ姿は、哀愁とある種の狂気をたたえている。『マネーボール』『フォックスキャッチャー』のベネット・ミラー監督がメガホンを取った本作。後年、アルコールと薬物に心身を蝕まれ、奇行や不可解な言動を繰り返す変わり者の作家を故フィリップ・シーモア・ホフマンが見事に演じきった。オスカー主演男優賞を含む複数の賞を獲得する。ミラー監督とホフマンの以後のキャリアを大きく左右した作品でもある。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT

おすすめ映画

ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT