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4タイプの女の色気を醸し出す『海街diary』に見る魅力的な女優達

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『海街diary』

 鎌倉の古い一軒家に暮らす3姉妹と、そこにやって来た腹違いの妹が家族になっていく姿を美しい四季の風景とともに瑞々しく描いた映画『海街diary』是枝裕和監督の下、綾瀬はるか長澤まさみ夏帆広瀬すずという旬の女優たちが4者4様の“色気”を醸し出し、姉妹の関係をリアルかつ魅力的に表現しています。思わず目を奪われる、それぞれの色気を是枝監督の解説とともにひもときました。

長女・幸(綾瀬はるか)

色気ポイント:引っ詰め髪に白衣…抑えがちのワンテンポ遅い動作

綾瀬はるか
4姉妹をまとめるしっかり者。父との離婚後に自分たちを残して男のもとへ逃げた母を許せない。市内の病院に勤務する看護師で、医師の椎名(堤真一)とは不倫関係にある。

 病院。髪を引っ詰めて白衣にカーディガンを羽織り、ファイルを抱えた幸がエレベーターを待っていると椎名が現れる。横並びで言葉を交わす二人。椎名の勧めで疎遠だった父親の葬式に行ってよかったと思っている幸は、「たまには人の言うことを聞いてみるもんだろう」と笑う椎名に、優しい笑顔で素直にうなずく。エレベーターに乗り込む幸に、名残惜しそうに「今度日勤いつ? 晩飯でもどう?」と外から呼び掛ける椎名。振り返り「うん。勤務表確認してみる」と幸。手を振ろうとするも、少し上げたところでドアが閉まってしまう。……家では家長である責任を強く感じている幸が、一人の女性としての顔をふと見せるシーンです。

【是枝監督のワンポイント解説】「(手を振るのが)ちょっと遅いんです、いつも(笑)。“ちょっと遅い”っていうのを大事にしようと思いました。彼女は子供時代やいろんなものを封印された存在で、あの家ではそういう役割を担わされている。だから、女の子としてのかわいらしい部分がふっと出る感じを椎名とのシーンでやりたいなと思っていました。母親(大竹しのぶ)が帰ってくることになったと椎名に電話を掛けているときの、鏡の中に映っている顔もそう」

「要するに、一人になったとき、妹たちの前では見せない表情をどれくらい出せるかという話を綾瀬さんともしました。『妹たちの前では姉だし、すずの前では母でもあり、母親が帰ってきたときはつっぱっている娘で、椎名の隣に居るときは女の顔も撮る。幸という人間をどう立体的に表現していくかということはすごく大事だから、そこをきちんと撮りたいと思います。女の顔を』って。綾瀬さんは『女の顔か~女の顔……女の顔……』って言っていましたけど(笑)。だけど、ちゃんと鏡の中には女の顔が映っていたから『すごいな、この女優さん』と思いました」

次女・佳乃(長澤まさみ)

色気ポイント:無防備なベッドでの寝姿で長い四肢があらわに

長澤まさみ
地元の信用金庫で働くOL。酒癖と男運が悪く、年下の男に貢いでしまいがち。

 衣擦れの音。足からほっそりとしたふくらはぎ、太ももへとカメラがパン、男に抱かれ、片手を上げて無防備に眠る佳乃の姿が映し出される。遠くには波の音。身につけているのはタオルケットのみ。家からの電話に眠い目をこすり、脇を見せながら白く長い腕を伸ばす。……爽やかでありながら、女性の肉体が強調された色っぽいシーンです。

【是枝監督のワンポイント解説】「最初に、原作があのシーンから始まるのはなぜだろうと考えました。普通だったら家のシーンから始まって“家の話だよ”と明快にするのがオーソドックスなのに、佳乃から入る点がすごく気になったんです。思ったのは、佳乃はあの家の中には居場所がないからだということ。佳乃の居場所は男の隣なんですよね。それは母親と一緒で、だから父親が出て行っちゃった後、あの家の中に居場所がなくなった母親は隣に居られる男の人を求めて家を出ちゃうんです。母親と佳乃はその部分で似ている。幸が母親にすごく反発するのと同じように佳乃とぶつかるのは、だからだと思った。幸との対比と、佳乃と母親の近さというものを表すため、男の隣に佳乃を置くというのが一つでした」

「あとはやはり、これは長澤さんにも話したんですが、本作は全体が、(看護師の)幸が最終的にターミナルケア(終末医療)に向かうことも含めて死に覆われている。父親の葬式から始まる話ですし、僕の脚本としては二ノ宮さん(風吹ジュン)のお葬式で終わるようにしたこともあり、幸自体がそちら側にとらわれている、もしくはそちらと向き合おうとしている人だとすると、その対極の位置に“エロい”という意味ではない“エロス”っていうものを撮っておかないといけない。それは肉体だったり、食べるっていう行為だったり……。だからちゃんと肉体を撮るというところから始めて、両方存在できればいいなと。なので、千佳ちゃん(夏帆演じる三女)は食べることに専念してもらって、よっちゃん(佳乃)に肉体を担当してもらうっていう、そういう話をしました」

三女・千佳(夏帆)

色気ポイント:自然に繰り出されるボディータッチ

夏帆
マイペースで独特な感性を持つ三女。スポーツ用品店に勤めており、アフロの店長(池田貴史)と付き合っている。

 「よっちゃんが心配した通りになっちゃったね」。たくさんの柄の布地が使われたロングスカートにお団子頭で縁側の雨戸に寄っかかり、ショートパンツ姿で太ももまであらわに寝っころがった佳乃の脚を、足でとん、とん、と触れながら、祖母の七回忌に久々に顔を見せた母親と幸が衝突したことを話す千佳。……千佳と佳乃の姉妹ならではの、自然なボディータッチでコミュニケーションを取るシーンです。

【是枝監督のワンポイント解説】「あれは夏帆さんがやっていたのを、本番でもそのままやってと頼みました。原作(吉田秋生のコミック)は読めば読むほど4人のキャラクターがうまく描き分けているなと思いました。ただ実写にしていくにあたって、生活のディテールをどうそこに加えていくかという必要があったので、実際の3姉妹を取材させてもらって反映させたり、現場であの子たちを見ながら、思い付いたものを足していくという作業をしていきました」

「取材をすると、大体三女のファッションセンス、聴いている音楽、読んでいるマンガというのは、上二人とは趣味が全く違って共有できないということがわかりました。だから吉田さんはそれをわかって千佳をああいうふうにしているんだと思います。長女と次女はケンカもするんだけど、服の貸し借りはするんですよね。たぶんそこの二人のケンカを見ているときに、三女はどっちかに付いちゃうと対立がエスカレートしちゃうから、多分ニュートラルなポジションを選ぶ、バランスを取るんだと思います」

四女・すず(広瀬すず)

色気ポイント:生まれたままの姿で見せる無邪気な笑顔

広瀬すず
三姉妹の父親とほかの女性の間に生まれた異母妹。父の葬式で三姉妹と初めて対面する。実の母はすでに亡くなっており、病院で一人父の世話をしてきた。幸に誘われ、三姉妹と鎌倉の家で暮らすことを決める。

 雨戸が開け放たれ明るい陽射しでいっぱいの縁側に、風呂上り、バスタオルを体に巻いただけのすずが軽やかな足取りでやって来る。体に風があたるよう、真ん中に置かれた扇風機の頭を少し上に上げて足でスイッチを点けると、バッと足を開き、庭に向けてバスタオルまで開いて気持ちよさそうな声を上げる。「こら! 人が来たらどうすんの!」と驚きつつ叱る幸に、「ふふ」っといたずらっぽく笑って駆けていく。……父親の葬式の日、三姉妹と初対面したときとは全く違う表情を見せているシーンです。

【是枝監督のワンポイント解説】「これは原作にあるんです(笑)。ここで初めてあの子は子供に戻った。あの家で、幸と同様にずっと子供時代を奪われてきたあの子がようやく子供に戻り、そこに母親になってしまった幸が居て……。あの一連は母と娘のシーンにしているんです。だから子供っぽい方がいいなと思い、残しました」

「すずはお風呂のシーンが2回あるんですよね。入っているシーンと、出てきてバスタオルのシーン。入っているときはずーっと掌を見ている。自分の中にある自分の母親の血を意識する……この家の幸せを壊してしまった母親の血が自分にも流れていると自分の中に閉じるシーンとして(3姉妹の母親がやって来る)あの法事の前のお風呂のシーンがあったので、それがあの縁側で開くというのをちょっとやっておきたかったんです」

 是枝監督が原作への深い理解と取材によって、長女と次女、次女と三女……と女姉妹特有のリアルな「あるある!」を鎌倉の風のように爽やかに描き出し、それぞれ一人の女性としての顔も丹念に映し出した本作。4人の女優たちが魅力的に輝くシーンの数々は、じっくりと何度も観たくなる美しさです。

映画『海街diary』ブルーレイ&DVDはポニーキャニオンより12月16日発売 オフィシャルサイト

2015吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ

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