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第35回 塚本晋也監督、ジャ・ジャンクー監督らが講師に!次なる映画人を育てるタレンツ・トーキョー(日本)

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ぐるっと!世界の映画祭 塚本晋也監督、ジャ・ジャンクー監督らが講師に!次なる映画人を育てるタレンツ・トーキョー

第35回 塚本晋也監督、ジャ・ジャンクー監督らが講師に!次なる映画人を育てるタレンツ・トーキョー (日本)

昨今の国際映画祭でちょっとしたトレンドになっているのが次代の映画人の育成だ。アジアの気鋭作品を集めた「東京フィルメックス」でも関連事業として映像人材育成プロジェクト「タレンツ・トーキョー」を東京都・アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)と共に実施中。さらに今年からは国際交流基金アジアセンターも加わることに。タレンツ・トーキョー2014(2014年11月24日~29日)に参加した早川千絵監督のレポートです。(取材・文:中山治美 写真:東京フィルメックス、早川千絵)

タレンツ・トーキョー」ホームページ(英語)→

ベルリン国際映画祭と提携

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写真1
優れた企画に贈られるタレンツ・トーキョー・アワード2014の受賞者『サムウェアー・サウス・オブ・リアリティー(英題)/ Somewhere South of Reality』のジャンカルロ・アブラアン監督(フィリピン)を囲んで。右端にはデビュー映画『SHIFT ~恋よりも強いミカタ~』が昨年日本公開されたシージ・レデスマ監督の姿も。彼女も2014年の受講生だ。
写真10
講師を務めた中国のジャ・ジャンクー監督を囲んで。ジャ・ジャンクー監督は第15回東京フィルメックス・コンペティション部門の審査委員長を務めていた。国内外の映画祭ゲストが講師にやって来るというぜいたくさが魅力。

 タレンツ・トーキョーは2010年からスタート(2010年は「ネクスト・マスターズ・トーキョー」。2011年~2013年は「タレント・キャンパス・トーキョー」として開催された)。映画祭が行う人材育成プロジェクトはベルリン国際映画祭釜山国際映画祭が有名だが、そのベルリンで行われているベルリナーレ・タレンツと2011年から提携している。東京フィルメックスと同時期開催で、映画祭ゲストである著名監督を招いての講義や、企画合評会で参加者とさまざまな意見を交わしながら、ネットワークの構築と自身の企画をブラッシュアップしていくのが主な目的だ。

 わずか5年で早くも成果を発揮しており、第66回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人賞)を受賞したシンガポール映画『イロイロ ぬくもりの記憶』(2013年)のアンソニー・チェン監督と、昨年の第15回東京フィルメックスで最優秀作品賞を受賞した『クロコダイル』のフランシス・セイビヤー・パション監督は第1期生だ。

写真2
タレンツ(受講生)の一人、韓国のキム・ジュリ監督と席を並べる早川千絵監督。2014年は受講生15人のうち4人が女性だった。

 2014年の受講生は15人。「釜山国際映画祭の(人材育成ワークショップ)アジアン・フィルム・アカデミーの参加経験者が約半分。ベルリナーレ・タレンツに参加した人もおり、みんな同様のプログラムを活用していることを知りました。日本の映画監督がなかなか海外という発想が持てない中、たくましい。特に今回はミャンマーからの参加者が2人いたのですが、映画学校がないので、大使館の図書館を訪れる外国人に声を掛けて、映画の教科書を取り寄せてもらって勉強したと。各国の映画事情には驚きました」(早川監督)

きっかけは子供映画教室

写真3
2009年に行われた子ども映画ワークショップ<「映画」の時間>(主催:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会)にボランティアスタッフとして参加した早川千絵監督。子供たちをサポートしながら、自由で豊かな発想力に刺激を受けていたという。

 早川監督がタレンツ・トーキョーに参加することになったきっかけは、東京フィルメックスの広報担当・岡崎匡氏との出会いから。同映画祭では2008年より子ども映画ワークショップ<「映画」の時間>を行っており、以前より子供の映画教育に関心を寄せていた早川は、2009年と2010年に行われたワークショップにボランティアスタッフとして参加した。「自由な発想で伸び伸びと映画作りを楽しんでいた子供たちから得たものは大きかった。その後のわたしの映画作りの原点になっていると思います」(早川監督)。

写真4
ENBUゼミナールの卒業制作だった短編『ナイアガラ』(2014年)は、カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門に選出されたのを皮切りに、第16回ソウル国際女性映画祭で最優秀賞、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)「PFFアワード2014」グランプリを受賞した。

 時を経て、『ナイアガラ』でカンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門に参加が決まった2014年春に、岡崎氏からタレンツ・トーキョーの存在を紹介されたという。「ちょうどカンヌで同じシネフォンダシオン部門に参加していた『Oh Lucy!』の平柳敦子監督が2011年のタレント・キャンパス・トーキョー(当時の名称)の受講生だったので、体験談を伺うことができました。英語で申請ができれば大丈夫と言われていたけれど、自身の企画内容を5ページにわたって英文で書くのは結構大変でした」(早川監督)。

 2015年の応募提出書類も、実現したい企画をA4用紙に英語で5枚以内とある。頑張ろう!

6日間の集中講座

写真5
オープニング作品『野火』で参加していた塚本晋也監督もマスタークラスで講師を務め、どのような製作体制で作品を作り続けてきたか? などを話した。
写真6
メイン講師は諏訪敦彦監督。少人数制なので、講師との距離も自然と近くなる。

 講座は6日間で、朝10時から18時30分ぐらいまで。(2014年のプログラムはHPを参照)。夜には映画祭上映作品の鑑賞やイベント参加もあり、まる一日ビッシリ映画漬けの日々となる。それでもエキスパートと称する国際舞台で活躍するプロから話を伺える貴重な時間だ。「塚本晋也監督のマスタークラスは、これまでいかにして映画製作を行ってきたか? というパーソナルな話を。諏訪敦彦監督からは『不完全なふたり』(2005年)など日仏合作製作について本編映像を観ながら話を伺いました。実体験に基づく話は刺激になりました」(早川監督)。

写真11
東京フィルメックスの協賛にアニエスベーが入っており、オリジナルグッズデザインを手掛けている。園子温監督をはじめ、映画祭後もこのTシャツやバッグを愛用している監督たちも多い。

 メインは自身の企画のプレゼンテーション。三つのグループに1人のエキスパート(講師)が付き、マスコミや日本の映画会社関係者らも出席する公開プレゼンテーションに備える。「意見交換をするうちに企画の粗筋が変わっていく人もいますし、みんなの前で話すことで曖昧だった自分の意見がまとまってくることもあります。その日ダメ出しされたことを徹夜で修正して翌日の講義に備えるという作業は厳しいですが、企画自体を最高のものにする濃厚なプログラムだと思いました」(早川監督)。

 諏訪敦彦監督らメイン・エキスパートは審査員を兼ねており、最優秀企画には「タレンツ・トーキョー・アワード」が授与される。副賞は30万円。2014年はフィリピンのジャンカルロ・アブラアン監督に贈られた。

同じ釜の飯を食う

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受講生たちみんなと鍋を囲んで。2014年の参加者は、フィリピン、シンガポール、中国、台湾、韓国、そしてミャンマーからも!

 海外からの受講生は往復の航空券と日当、7泊分の宿泊費が支援される。日本在住の早川監督は宿泊費と日当のみ。宿泊は、外国人観光客に人気の神保町にあるホテルだ。「ドミトリー形式で女子4人が相部屋。プロジェクトの趣旨として“同じ釜の飯を食べて仲良くなる”という環境にしているのだと思います。ただ実際は、宿に帰って寝るだけという状態。翌日のプレゼンに備えてプランを練りたいのだけど、公共スペースのカフェは他の観光客が酒宴を開いているので集中できません。修了後に提出したアンケートにも書いたのですが、コンセプトは素晴らしいのだけど、せめて部屋に机があって作業ができるような環境にしてほしいと思いました」(早川監督)。

今年の締め切り間近!!

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ギリシャの製作会社の招聘(しょうへい)でシフノス島で撮影した『バード(原題) / BIRD』のスタッフと一緒に。

 早川監督はタレンツ・トーキョーのほか、ギリシャの製作会社の招聘(しょうへい)で現地に赴き、短編映画『バード(原題) / BIRD』を製作するなど着実に活動の幅を広げている。「やはりカンヌ国際映画祭に『ナイアガラ』が選ばれたことが大きいですね。同作は短編部門のある映画祭に片っ端から応募したのですが、カンヌへも卒業後の記念受験のような気持ちで送りました。ギリシャからの招聘(しょうへい)も、カンヌに選ばれたことがきっかけです」(早川監督)。何事も行動を起こさなければ始まらないのだ。

写真9
自身の企画をプレゼンテーション中の早川千絵監督。10年間のニューヨーク生活を経ており、英語に堪能。

 なおタレンツ・トーキョー2015は11月23日から28日まで開催。対象者は東アジア・東南アジア国籍の映画監督・プロデューサーで、過去に長短編1本以上の製作か、特定の監督に付いて現場経験がある人など。そして、英語が理解できることが条件となる。応募締め切りは6月18日。詳細は下記HPにて。

タレンツ・トーキョー」タレンツ・トーキョー ホームページ(英語)→

タレンツ・トーキョー」東京都 ホームページ(日本語)→

写真:東京フィルメックス、早川千絵

取材・文:中山治美

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