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あゝ、哀しき巨大生物たち

今週のクローズアップ

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【今週のクローズアップ】「あゝ、哀しき巨大生物たち」

 日本が生み出した怪獣ゴジラが『GODZILLA ゴジラ』としてハリウッドで2度目となる映画化がなされ、世界的なヒットとなっているのはご承知の通り。今回はそんなハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の公開に先駆け、ちょっぴりおちゃめな巨大生物たちを特集。その意外な萌えポイントに、キュンっ!

文・構成:編集部 福田麗

『マイティ・ジョー』(1998)

『マイティ・ジョー』
『マイティ・ジョー』より - Getty Images / Hulton Archive

 「哀しき巨大生物」といえば、まず『キング・コング』のコングが浮かぶが、その亜流ともいえる1949年の映画『猿人ジョー・ヤング』(あのレイ・ハリーハウゼンのデビュー作でもある!)を、1998年にディズニーが当時最新のVFXでリメイクした『マイティ・ジョー』に出てくる巨大ゴリラ・ジョーの存在も忘れ難い。

 ジョーは幼いころ、母親を密猟者に撃たれ、それからは同じ境遇の人間のヒロイン・ジルと共にアフリカの奥地で暮らしていた。だが密猟者に追われるジョーはアメリカの保護センターに移され、やがてジルを捜してロサンゼルスをさまようことになる。その心の優しさを知らない市民をパニックに巻き込んで……。

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『マイティ・ジョー』
実はシャーリーズ・セロンのハリウッドでの初主演作でもあります

 巨大生物と美女の関係を描いたという点では確かに『キング・コング』の二番煎じとそしられても致し方のない部分はあるものの、密猟というテーマを絡め、「動物物」として仕上がっている。ジョーのような動物を描く場合、今でこそ『キング・コング』(2005)や『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011)のようなモーションキャプチャーの手法が確立されているが、当時はまだCGの技術も未成熟であり、本作では特殊メイクアーティストのリック・ベイカーが腕を振るっている点にも注目したい。

『マイティ・ジョー』
怪獣映画復権は『キング・コング』の2005年を待つことに! - Universal/Photofest/MediaVast Japann

 もっとも、興行収入の方はさっぱりであり、同年に公開されたローランド・エメリッヒ版『GODZILLA ゴジラ』と共に、“怪獣映画は当たらない”という法則を発動させてしまった。ハリウッドでの怪獣映画復権の兆しは、『キング・コング』の2005年を待たなくてはならない。そういう意味でも“哀しい”作品である。

『アイアン・ジャイアント』(1999)

『アイアン・ジャイアント』
『アイアン・ジャイアント』より - ©1999 THE IRON GIANT and all related characters and elements are trademarks of and Warner Bros. Entertainment Inc.

 後にピクサー・アニメーション・スタジオで『Mr.インクレディブル』(2004)、『レミーのおいしいレストラン』(2007)を制作することになる才人ブラッド・バードが1999年に手掛けた初長編監督作にして、「世のロボット物」「ヒーロー物」のファンから涙を絞り取った感動作。

 本作に登場するのは、全身が鋼鉄でできた巨人「アイアン・ジャイアント」。ガタイはともかく、内面は記憶をなくしていることもあり、まるで3歳児のように無邪気。偶然、彼を見つけた少年ホーガースと友情を育み、「スーパーマン」のようなヒーローに憧れるが、実は「アイアン・ジャイアント」は兵器として作られたのだった……。

 誕生した瞬間から悲しい宿命を背負っているという点では、かの「フランケンシュタインの怪物」の変奏曲ともいえる「アイアン・ジャイアント」。ヒーローになりたいという「理想」を抱きながらも、兵器として生まれた「現実」に向き合わなくてはいけない姿は切なく、涙をそそる。

 ちなみにアメリカ国内では、7,000万ドル(約70億円)の製作費に対して、2,300万ドル(約23億円)程度の興行収入しか上げられず、もちろん大赤字。そういうところも、ああ哀しい。ただし、今に至るまで根強いファンがいる作品でもある。

『ソラリス』(2002)

『ソラリス』
『ソラリス』より - © 2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 かつてソ連の鬼才アンドレイ・タルコフスキーが『惑星ソラリス』として映画化したポーランドの作家スタニスワフ・レムの傑作SF小説を、どういうわけか、スティーヴン・ソダーバーグ監督がジェームズ・キャメロンのプロデュースで映画化してしまった作品。しかもどうしたわけか、ラブストーリーを物語の中心に持ってきてしまったため、レムの原作とは似ても似つかぬ、“哀しい”作品になった。

 しかし、巨大といえば、この作品に出てくる生物ほど巨大な生物もいないはず。なぜなら、本作に登場するのはソラリスという惑星を覆い尽くす“海”。ソラリスを探査していた宇宙ステーションが突然連絡を断ったため、主人公クリスは駆り出されるのだが、そこには死んだはずのクリスの妻レイアの姿が。だが、それは“海”が作り出した存在だった……。

『ソラリス』
『ソラリス』より - © 2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 巨大であるという点は言うに及ばず、ソラリスの“海”のどこがおちゃめなのかといえば、人間とコミュニケーションを取ろうとした結果、相手の潜在意識をスキャンして、トラウマとなっていた妻の存在を掘り起こし、それだけでは飽きたらずに現実によみがえらせてしまった点。でもね、それがソラリスなりのコミュニケーション方法だったんだよ……と思わずフォローしたくなる、いじらしさといえないこともない。(映画版はもちろん、原作でもそんな描かれ方はしていないが)

 タルコフスキー版『惑星ソラリス』は一部の口さがない観客から「画面から睡眠導入剤がばらまかれているんじゃないか?」と言われたりもしていますが、ラブストーリーに主眼を置いた本作も興行的には大失敗。4,700万ドル(約47億円)の製作費に対して、全世界で3,000万ドル(約30億円)しか稼げなかった。そもそも、なぜレムの原作を映画化しようと思ったのか……製作者を問い詰めたい。

『GODZILLA ゴジラ』(2014)

『GODZILLA ゴジラ』
『GODZILLA ゴジラ』より - ©2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC
『GODZILLA ゴジラ』
『GODZILLA ゴジラ』より - ©2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC

 すでに紹介したように、1998年のエメリッヒ版『GODZILLA ゴジラ』が大コケしたせいで“怪獣映画は当たらない”といわれることになったハリウッドだが、その後にピーター・ジャクソン監督の『キング・コング』(2005年)、マット・リーヴス監督の『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年)、そしてマイケル・ベイ監督の『トランスフォーマー』シリーズが大ヒットを記録してくれたおかげで、怪獣=巨大生物ものの映画に対する偏見は払拭。

 そして、おそらくは「もう二度とエメリッヒの轍(てつ)を踏むものか」と『モンスターズ/地球外生命体』の新鋭ギャレス・エドワーズを起用して、あらためてハリウッドで「ゴジラ」を製作したのが、本作だ。

『GODZILLA ゴジラ』
こちらは日本版ゴジラ! - Michael Ochs Archives / Michael Ochs Archives

 本作に登場するのは、日本でもおなじみのゴジラ。誕生の経緯については作中で明示されないものの、日本版第1作『ゴジラ』(1954)同様、人間による核実験がきっかけになっていることが示唆されている。つまり、ゴジラもまた、誕生した瞬間から、ある種の哀しい宿命を背負った巨大生物として描かれているのだ。

 体長こそ108メートルとオリジナルから巨大化しているものの、ゴジラを特徴づける背びれや尻尾に「これだよ、これ!」と熱狂するファンも多いはず。そして、ぜひとも注目してもらいたいのは、その咆哮(ほうこう)。日本版をなぞったのではない、“今”を生きるゴジラとしての声を追求したといい、ファンならずとも必聴だ。エドワーズ監督はオリジナルへのリスペクトを貫くとともに、作中の世界は現実の世界と地続きであるというリアリティーへのこだわりを見せており、そうした状況から生まれた新たな「ゴジラ」といえるだろう。

『GODZILLA ゴジラ』
『GODZILLA ゴジラ』より - ©2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC

 同作は、故郷ともいえる日本に先駆け、すでに世界62か国・地域で公開。北米で2億ドル(約200億円)超、全世界トータルでは4億5,000ドル(約450億円)を突破しており、“哀しい”結果にはなっていない。世界中で吹き荒れた“ゴジラ”旋風の日本上陸は、間もなくだ。

映画『GODZILLA ゴジラ』は7月25日より2D / 3D(字幕スーパー版 / 日本語吹き替え版)公開

※文中に出てくる興行収入は全てBox Office Mojo調べ・1ドル100円計算

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