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第14回 タルコフスキー記念国際映画祭の魅力に迫る!

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ぐるっと! 世界の映画祭 第14回 タルコフスキー記念国際映画祭

表現の自由を求めて祖国を離れ、亡命生活を送った映画『惑星ソラリス』の故アンドレイ・タルコフスキー監督。彼の精神は今再び故郷に戻り、後進たちに受け継がれています。それが2007年に生誕75周年を記念してスタートしたタルコフスキー記念国際映画祭「鏡」。2013年6月11日~16日に開催された第7回大会に参加し、中国映画『卵と石』でコンペティション部門グランプリを受賞した製作・撮影の大塚竜治氏がリポートします。

タルコフスキー記念国際映画祭公式サイト:http://tarkovskyfest.com

生誕75周年記念に誕生

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タルコフスキー記念国際映画祭
プリョスの映画祭会場ではタルコフスキー監督の大看板がお出迎え。ホアン・ジー監督と愛娘の千尋ちゃん(1歳)

開催地はタルコフスキー監督の故郷イヴァノヴォ州のイヴァノヴォ市とプリョス市。モスクワの北東にある「黄金の環」と称される古都郡に位置し、タルコフスキー作品に多大な影響を与えた風光明媚(めいび)な景色が魅力だ。その町で例年150作品が上映されるだけでなく、タルコフスキー監督に関する学術会議や展覧会なども行われ、多方面からタルコフスキー精神に触れることができる。

タルコフスキー記念国際映画祭
コンペティション部門でグランプリを獲得! 会場にはタルコフスキー監督の妹が駆けつけた-©Tarkovskyfest

「他の映画祭だと豪華さや派手さを売りにするところが多いですが、ここは真逆。スケジュールも緩やかで、非常にゆっくりした時間の中で自然を堪能し、映画を満喫するという、タルコフスキー監督の精神と映画を尊重する主催者側の気持ちが伝わってきました」(大塚氏)。

冠に惹(ひ)かれて出品

タルコフスキー記念国際映画祭
ホアン・ジー監督、大塚竜治撮影・製作の映画『卵と石』は第35回ぴあフィルムフェスティバル(9月14日~20日、)の連続講座「映画監督になる5つの方法」で招待上映される-©Yellow-Green Pi

大塚氏の夫人でもあるホアン・ジー監督『卵と石』は、コンペティション部門に参加した。監督の少女時代の実体験を繊細に描いた同作は、2012年ロッテルダム国際映画祭コンペティション部門で最高賞を受賞するなど、高い評価を得ており、今回は映画祭から打診を受けた。

タルコフスキー記念国際映画祭
ダニエル・へースル監督

「映画を芸術の域に昇華した、神様のような映画監督の名が付いた映画祭で自分たちの作品がどう評価されるのか期待と不安がありましたが、コンペ部門に選ばれたと聞き出品を決めました」(大塚氏)。同じくコンペには、今年のロッテルダムで最高賞を受賞したオーストリア出身のダニエル・へースル監督『ソルダーテ・ジャネット(原題) / Soldate Jeannette』も。「ホアン・ジーと同じくバイタリティー旺盛。ぜひ注目を」(大塚氏)。

賞金から30パーセントも税金が!

タルコフスキー記念国際映画祭
上映会場はイヴァノヴァ州のプリョスにあるフィルムセンターで。場内は地元の一般客や映画祭の常連客などでにぎわった-©Tarkovskyfest

上映会場はプリョス市のフィルムセンターとイヴァノヴォ市のシネコンで。ロシア人は寡黙というイメージがあったそうで上映後の反応が気になったが、終わってみると、監督の元へ観客が駆け寄り「タルコフスキーの精神が宿っていた」と絶賛してくれたという。「こんな感想は、この映画祭でしか味わえませんよね。これ以上ない喜びでした」(大塚氏)。

タルコフスキー記念国際映画祭
タルコフスキー監督の故郷では、民族衣装で着飾った地元の人々が歌やダンスで映画祭ゲストを迎えてくれた

その評価は5人の審査員も同意見だったようで、見事グランプリを受賞。トロフィーと副賞5万ドル(日本円で約500万円 / 1ドル100円換算)を獲得した。「ただ、ロシア非住民所得税という税金が30パーセント引かれたので、実際に受け取ったのは3万5,000ドル(約350万円)でした(苦笑)」(大塚氏)。しかし自主映画製作者には大金だ。

生まれ故郷にプチ旅行

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ユーリエヴェツ市にあるタルコフスキー監督の生家。9歳まで過ごしたという

期間中はタルコフスキーの生まれ故郷であるユーリエヴェツ市まで足を延ばし、タルコフスキー記念文化センターや生家を回った。「残念だったのは、ほとんどの展示品はイヴァノヴォ市の美術館に巡回中だったことでした。また説明の全てはロシア語で理解できず。改善を期待したいです」(大塚氏)。

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ボルガ川が望める自然豊かな場所で行われたお茶会

また連日、お茶会や野外パーティーがあり、プログラムディレクターで映画評論家のアンドレイ・プラホフ氏らと交流を深めたという。「彼は映画祭を総括する日記で“「鏡」の勝者は千尋”と題し、『国際的遺伝子を持つ千尋は、一度も泣かずに映画祭全てのイベントに参加し、ボルガ川の入浴も楽しんだ』と娘を褒めてくれた。その懐の深さに感動しました」(大塚氏)。

旅の醍醐味(だいごみ)を味わう

タルコフスキー記念国際映画祭
夕暮れのプリョス。夏の日没は夜10時ごろになるという

メイン会場のプリョス市には、モスクワ経由でイヴァノヴォ空港入り。そこからバスでの移動となる。映画祭ゲストである大塚一家には、モスクワ空港に映画祭スタッフが迎えに来たという。そこからが長い。モスクワ市内にある国内線用空港に移動し、約4時間待ってイヴァノヴォ行きに搭乗。到着後もプリョス市までバスで約3時間かかったそうで、結局モスクワから約12時間の大移動となった。

「毎回、詳細は知らされず、おまけにスタッフは英語が不慣れなので情報収集に苦労しました」。しかし、夜中12時に到着したイヴァノヴォ空港では、民族ダンスで歓迎されたという。

大塚氏から四つの注意事項

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アンドレイ・タルコフスキー監督『鏡』の名シーンがプリントされたTシャツ&メモ帳&トートバッグの映画祭オリジナルグッズ

1.生水に注意。おなかを壊した参加者もいます。常備薬持参をオススメします。

2.モスクワを離れるとドルとユーロしか両替できません。もっともペンションは3食付きで特にお金を使う場面はありませんが。

3.蚊が多いので長ズボン&長袖が最適。一晩で20か所以上刺された監督が、モスクワに逃亡した例もあります。

4.海パン&水着の用意をしてボルガ川で入浴を。よりイヴァノヴォの自然を満喫できます。

レポート・写真:大塚竜治
編集・文:中山治美

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