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第3回 ルーマニアのトランシルバニア国際映画祭の魅力に迫る!

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ぐるっと! 世界の映画祭 第3回 トランシルバニア国際映画祭

ドラキュラ伝説で有名なルーマニアのトランシルバニア地方。そのドラキュラ様の名を利用して生まれたトランシルバニア国際映画祭が東ヨーロッパで急成長中。ルーマニア映画界も、第60回カンヌ国際映画祭でクリスティアン・ムンジウ監督『4ヶ月、3週と2日』が最高賞を受賞して以来、勢いにノっています。第11回大会(6月1日~10日開催)にデビュー長編映画『夜が終わる場所』で日本人監督初のコンペティション部門に参加した宮崎大祐監督がレポートします。

民主化後にスタート

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トランシルバニア国際映画祭
映画祭のポスター。マラムレシュ地方の観光名所「陽気の墓」がモチーフ

政変によって国名が現在のルーマニアに改称されたのが1989年。若手育成&欧州へのルーマニア映画のPRを目的に2001年に設立された「ルーマニア・フィルム・プロモーション」の主催で、映画祭は2002年にスタートした。「映画祭関係者によると、当初はドラキュラの認知度を生かしてホラー映画祭を開催する、と資金集めをして開催にこぎ着けたけど、今ではすっかりアート系へとシフトしているそうです」と宮崎監督。

トランシルバニア国際映画祭
統一広場の野外劇場。1600人収容可能

その名残が「Shadows」部門にあり、ホラーやサスペンス映画を上映。また時期的に5月のカンヌ国際映画祭直後で話題作を上映できることから、近隣諸国のシネフィル(=映画通)たちがツアーを組んで参加。また若手作家・俳優育成プログラムも期間中に行われる。

日本映画初のコンペ入り

夜が終わる場所
宮崎大祐監督の初長編監督作『夜が終わる場所』は東京・渋谷のユーロスペースでレイトショー公開中-(C) 2011 Green80 Film Production

コンペ部門は新人監督が対象。これまでモントリオールヌーボーシネマ、マドリード、サンパウロ各映画祭に参加した宮崎監督は、次に東欧の新興映画祭に的を絞りトランシルバニアを選んだ。宮崎監督は「無表情な殺し屋が主人公の日本版フィルム・ノワールを目指した僕の映画は、『吸血鬼』(1931)のカール・テオドール・ドライエル監督の影響を受けて作ったので、ここで上映されたら面白いのでは? と。なのでShadows部門を期待していたらコンペ入りして驚いた」とのこと。

宮崎大祐
宮崎大祐監督とアーティスティック・ディレクターのミハイ・クリロフ

3回上映され、立ち見が出るほどの盛況ぶり。宮崎監督は「日本の若者のうつうつとした生態を描いているので、共産主義時代の抑圧された生活を知るルーマニア人の共感を呼んだのかも。年配の女性に、『この映画を届けてくれてありがとう』とハグされたのがうれしかった」。

参加作品は著名監督ばかり

ジ・エクスチェンジ(英題) / The Exchange
『ジ・エクスチェンジ(英題) / The Exchange』

第11回大会はスタンリー・キューブリック特集に松本人志監督作3本上映など盛りだくさん。中でも宮崎監督が感銘を受けたのはオーストラリア特集で上映されたジュリア・リー監督『スリーピング ビューティー/禁断の悦び』と、同じコンペ部門のエラン・コリリン監督『ジ・エクスチェンジ(英題) / The Exchange』(イスラエル・ドイツ合作)。

スリーピング ビューティー/禁断の悦び
『スリーピング ビューティー/禁断の悦び』-(C) 2011 Screen Australia, Screen NSW, Spectrum Films Pty Limited,Cardy&Company Pty Ltd, Lindesay Island Pty Ltd and Magic Films Pty Ltd.

宮崎監督は「『スリーピング~』は良い意味で思わせぶりな展開に引かれました。音の設計といい、ワンカットの長さとその中での演出といい、洗練されたフランス映画の面持ちを持っていて、豪州映画界に新時代の到来を感じましたね。『ジ・エクスチェンジ~』は家族と個人の崩壊をほとんどセリフなしでつづっていた。イスラエル映画でありながら、小津安二郎や黒沢清作品など日本映画の影響を受けているのでは」。

素材を生かした料理が中心

トランシルバニア国際映画祭
ママリガに、チョルバというスープとシンプルなキャベツサラダ。キャベツが名産らしい

宮崎監督は10日間滞在し、航空代とホテル代は映画祭が負担。滞在中の食事も街にある指定レストランで使用できる無料食事券が渡されたという。この地方はキャベツが名産で、サラダにスープにと欠かせない食材らしい。また主食は、とうもろこしの粉を牛乳とバターで練った「ママリガ」。トウモロコシ版マッシュポテトのような味わいだ。

トランシルバニア国際映画祭
ブラウニーのチョコレートがけの通称「かえるケーキ」

「スープや煮込み料理が多いのですが、いずれも日本人からすれば味がちょっと薄く感じられるかも。地元の方に聞いたら、調味料は塩が基本で、食材そのものの味を楽しむのだとか」。酒の種類はワインにビール、ウォッカと豊富で、宮崎監督もご満悦。

ブカレストは治安に注意

トランシルバニア国際映画祭
町中には少数民族ロマの姿も

映画祭の開催場所はトランシルバニア地方の中央にあるクルージ。ブカレスト経由で国内線に乗り換えるのがベストだが、ご存じの通り、今年8月に邦人女性が殺害される事件が起きた。ガイド本にもブカレストは「野犬とニセ警官に注意」と警告がある。宮崎監督も当初、深夜にクルージに移動予定だったが安全を考慮し、ホテルで1泊したという。

ただ「クルージは学生の街なので治安は良かった」とか。いずれにしても、海外の映画祭に参加する場合は、外務省の海外安全ホームページで治安情報を確認するのはもちろん、文化や宗教上の風習も知識として頭に入れ、トラブルのもとをつくらないように心掛けたい。

ホラー映画祭始めました

トランシルバニア国際映画祭
「トランシルヴァニア映画祭狂」と書かれた映画祭Tシャツとバッグ

同じ映画祭スタッフによって、今年8月16日~19日、ホラー&ファンタジー映画祭「フル・ムーン」が初開催された。場所は同じトランシルバニア地方にあるビエルタン。「トランシルバニア地方の要塞聖堂のある村落群」としてユネスコの世界遺産に登録されており、野外上映もある。今年の上映は『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922)、『ベルリン・オブ・ザ・デッド』(2010)など。ドラキュラの街で観るホラー映画……。トランシルバニアの名物がまた一つ増えそうだ。(取材・文:中山治美)

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