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『ジョゼと虎と魚たち』なぜアニメ化?作り手たちが込めた思いとは

劇場アニメで生まれ変わる!
劇場アニメで生まれ変わる! - (C) 2020 Seiko Tanabe / KADOKAWA / Josee Project

 芥川賞作家・田辺聖子の青春恋愛小説を新たに劇場アニメ化した『ジョゼと虎と魚たち』が現在公開中。タムラコータロー監督をはじめとするスタッフたちが名作小説を新たに映像化するにあたって大事にしたこととは?

あの名作がアニメに『ジョゼと虎と魚たち』本予告【動画】

 原作小説を収録した短編集は1985年に刊行され、2003年には犬童一心監督により実写映画化も行われた。妻夫木聡池脇千鶴が共演した同作は、今なお多くのファンに支持される人気作だ。そこからおよそ17年を経ての再映像化となるアニメ版では、中川大志が海洋生物学を専攻する大学4年生の恒夫、清原果耶が自ら“ジョゼ”と名乗る、車いすの生活を送るヒロインに声を吹き込み、設定やストーリーも刷新した新たな物語が誕生した。

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 アニメ映画化へ至る道のりの始まりは、田辺の原作小説だった。アニメ「ノラガミ」シリーズなどに携わってきたタムラ監督は実写映画もタイトルを聞いたことがあった程度だったというが、プロデューサーが用意したさまざまな小説の中から感覚的に惹かれるものがあり、企画が動き出すことに。

 そんなタムラ監督が大事にしたことが時代設定だという。原作は昭和、実写映画は平成にそれぞれ発表されてきたこともあり、スタート時から「時勢に沿いながら、今の時代に共感できる『ジョゼ』を出せたらいいなというのがあって、現代の話にしようというのは決めていました。あと原作小説は完結していない感じがすごくあって、その投げられたボールがどこに着地するのか、それを考えてみたい、想像してみたいなというのもあったんです」と考えがあったそう。

 脚本を手掛けたのは『ストロボ・エッジ』などの桑村さや香。桑村は原作を最初に読んだときに「この短い原作からあの映画の脚本を書いた渡辺あやさんは本当に天才だなと」と衝撃があったという。「それで今回、自分が脚本を書くことになって、あらためてちゃんと読み返したんですが、ジョゼのキャラクターがすごく魅力的で、『ジョゼ』と『虎』と『魚』──その3つの象徴的なものを選ぶセンスが素晴らしいと思いました」

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 そしてタムラ監督は「舞台が大阪で関西弁を話すジョゼ」という設定については一貫していたと語る。「原作は昭和に書かれた作品で、舞台は大阪で言葉も身近な関西弁なのに、すごくおしゃれで品があるんですよ。田辺先生が浪速のサガンと呼ばれる所以ですね。その感じは脚本とフィルムに焼き付けたいなと思いました。そこを外してしまったら、田辺聖子作品ではなくなってしまうというくらいに思っていました」。そのうえでジョゼ役には大阪府出身の清原がキャスティングされることとなった。

 原作の設定やセリフなどを生かしつつ、現代的なアップデートが試みられた今回のアニメ版『ジョゼ』。ジョゼや恒夫といった若い世代の意見をヒアリングするとともに、ジョゼを描くにあたって、タムラ監督は実際に車いすを使用している人たちのことも意識したと語る。作品に車いすが登場する場合には、健常者に向けて描かれることが多い。「障がいがある方自身が観たいと思えるような映画がなかなかないというご意見を車いすユーザーの方々からも伺っていたんです。そういう方にも楽しんでいただける作品を目指したいと思っていて、その結果が今回の『ジョゼ』という作品になっています。障がいがある方を取り巻く環境も昭和平成令和で随分と変わってきました」と述べる。

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 そういったディテールのみならず、美麗なアニメ表現も特徴となっている。だが、タムラ監督は映像として美しいものを表現することが前提である一方で、「清濁あわせ持った作品である」ということを意識していた。「恒夫とジョゼの物語を美しいものとしてとらえることもできますが、この世界自体が本当に美しいのかどうかはまた別問題なんですよね。そういう主観としての美しさを感じてもらえたらいいなと」と思いを明かしている。(編集部・大内啓輔)

中川大志&清原果耶 『ジョゼと虎と魚たち』本予告 » 動画の詳細
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