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100億円の映画作りはつまらない!『透明人間』仕掛人が語る低予算ホラー成功術

ハリウッドのトッププロデューサーと言っても過言ではないジェイソン・ブラム
ハリウッドのトッププロデューサーと言っても過言ではないジェイソン・ブラム

 ハリウッドのホラージャンルにおいて、間違いなく最強コンビと言えるプロデューサーのジェイソン・ブラムリー・ワネル監督が、古典ユニバーサルホラーを現代にリブートした新作『透明人間』が7月10日に日本公開を迎える。ブラムは、2007年の『パラノーマル・アクティビティ』の成功から、『インシディアス』『パージ』『ゲット・アウト』など、ヒットホラーを連発してきた映画プロデューサー。彼の製作会社ブラムハウスが手掛けた映画の興収は合計で20億ドル(約2,200億円)以上といわれ、今やホラーにとどまらず、ハリウッドで最も成功しているプロデューサーの一人と言っても過言ではない。10年前にアシスタントとたった2人で始めた同社は、今や100人ものスタッフを抱えるメジャープロダクションへと成長。そんなブラムハウスの成功の秘密を、本人が語った。

透明になったら何をする…『透明人間』予告編

 『透明人間』は全米で2月に公開され、初登場1位を記録。新型コロナウイルスの影響で1か月後にはデジタル配信に移行したが、それでも全世界興行収入は1億2,000万ドル(約132億円)を突破する大ヒット。米映画批評サイト Rotten Tomatoes でも、ホラー映画としては異例の91%の支持を獲得するなど、作品としての評価もすこぶる良い。

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 ブラムハウスの特徴は、ハイクオリティーなマイクロバジェット(超低予算)映画にあるとブラムは語る。『透明人間』の予算は700万ドル(約7億7,000万円)だが、彼の考えるマイクロバジェットはどの程度の予算なのか。

 「僕にとって、1,000万ドル(約11億円)以下の作品は全てマイクロバジェットになる。インディーズだったら、1,000万ドルはかなりの予算だ。でも、僕らはシネコン向けの映画を作っている。3,000スクリーン規模で観られる映画をね。スタジオ映画の平均予算は7,000万ドル(約77億円)。そうした他のスタジオ映画と競うわけだから、1,000万ドル以下はマイクロバジェットと言っていいと思う」

 メジャー作品では、その予算でクオリティーを維持するのは至難の技だ。そこでブラムは、低予算ならではの“自由”を武器にするという。「僕らは監督に、通常のハリウッド映画よりも(クリエイティブ面において)自由なコントロール権を与えている。ヨーロッパの作家主義のやり方を、コマーシャル映画に用いているんだ。そうすると監督たちはもっとオープンになってくれる。自分のやり方で映画を作れるかどうかを、心配しないですむからだ。そうなると、彼らから助けやアイデアを求めてきて、良い共同作業ができる。それが勝利の秘訣(ひけつ)だよ」

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古典ホラーを現代的なアイデアで描く『透明人間』(C) 2020 Universal Pictures

 そのクリエイティブ面における自由は、ブラムが低予算映画を作り続ける大きな理由のようだ。「予算が低ければ大きなリスクにならないから、思い切ったことがやれる。1億ドル(約110億円)規模の映画をやるには、僕が好きじゃない多くのことが伴うんだ。監督にファイナルカット権を与えられないし、全ての決断に20人もの人間が関わることになり、(制作プロセスが)とてもスローになる。1億ドル作品をプロデュースするのは、僕にとって、クリエイティブ的に面白くないんだ。あまりにビジネス的になりすぎてね」

 ホラーだけでなく、『セッション』や『ブラック・クランズマン』など、アカデミー賞にノミネートされた映画も手掛けているブラム。作品選びのセンスの良さには唸らされるばかりだが、ブラムハウスのテーマはあくまでダークなジャンルにあるという。「(FOXニュース創業者でセクハラ事件を起こした)ロジャー・エイルズを描く『The Loudest Voice』(ラッセル・クロウ主演のテレビシリーズ)もそうだけど、僕らがやるのは、ダークなテーマの作品だ。そして、ホラーもその一部なんだ」。
 
 どんなに成功しても、決して予算の大きな作品に手を出さないブラム。大作をやりたがる映画人が多いハリウッドにおいては、実に稀有な存在だが、これからも初心を忘れず、映画作りを続ける限り、ブラムハウスの快進撃は続いていくに違いない。(数字は Box Office Mojo 調べ、1ドル110円計算)(細谷佳史)

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