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全国の劇場支配人が危機訴える 深田晃司、濱口竜介、斎藤工ら無観客配信で会見

 13日よりMotion Galleryでスタートする小規模映画館支援のためのクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」のキックオフイベントが同日、DOMMUNEで実施され、発起人である深田晃司(映画監督)、濱口竜介(映画監督)をはじめ、浅井隆(アップリンク代表)、斎藤工(俳優・映画監督)、渡辺真起子(俳優)らが参加。中継をつないで全国のミニシアターの支配人が危機的状況を訴えた。

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発令され、補償が不明瞭な中、政府からの自粛要請が続き、全国の小規模映画館が閉館の危機にさらされている。「ミニシアター・エイド基金」は、ミニシアターに資金を送るためのクラウドファンディングで、目標額1億円。現在全国のミニシアター50館超の参加希望があり、署名活動を通じて政府への提言を進めている「#SaveTheCinema」とも連携していく。

 会見は無観客配信で、深田監督、濱口監督が進行を務める形で行われた。俳優、映画監督の斎藤工は、阪本順治監督が地方の劇場に手紙を送るなど密に連絡をとっていたことなどを挙げながら「各劇場が才能を発掘して育てているのを目の当たりにした」とコメント。女優の渡辺は「思春期の頃だったり仕事が見つからないときに自分を迎え入れてくれたのが映画館だった。自分が信じられる作品がないという思いが強く、たどっていた先にあったのがインディペンデント映画」とミニシアターへの強い思い入れを吐露した。

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 「ミニシアター・エイド基金」には多くの映画監督が賛同しているが、会見では代表して3人の監督のメッセージが読み上げられた。河瀬直美監督は「ミニシアターには顔があります。映画という芸術をこれからも楽しめる日本でありますように」、片渕須直監督は「映画とは、みてくれる方の心の中で完成します。ミニシアターは、上映する映画を独自性を持って選ぶ場所。失われてしまえば、再興するのに時間がかかります。みなさんの支援がありますように」、是枝裕和監督は「映画館は僕の人生の一部です。こっそり泣いたり自身を奮い立たせたり、観終えた後に街の空気を一変させたり、映画館はそんな無数の人たちの無数の記憶を蓄積し、発光させ、次の世代に受け渡していく場所です。このような危機的状況の中でもその場所を維持し、未来に継承していくためにはまずはその場所を必要としてきた人たちが連帯する必要があると思います。これはその小さな、しかし大切な一歩だと思います」と言葉を寄せた。

 会見には東京、名古屋、大阪、京都、広島、大分など全国のミニシアターの支配人が中継をつないで参加。それぞれ、特に4月に入ってから顕著になった経営難を訴えた。東京・アップリンク代表の浅井は「4月に入ってからはオープンしていても赤字になる状態」だと言い、補償なき状況での自粛規制、4月16日を予定していた京都の劇場オープンを延期せざるをえなくなったこと、100名以上いるスタッフをどう抱えていけばいいのかと頭を悩ませる。アップリンクではオンライン映画館を3月28日よりスタートしているが、「オンラインで観るのも意外に面白いと発見する人もいるかもしれないけど、映画館で映画を観る面白さというのはどんなにメディアが発達しても絶対になくならないと思う。平時になったら映画館に観に来てほしいと強く思う」と呼びかける。

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 一方、名古屋「シネマスコーレ」の副支配人・坪井篤史は「特にシニア層のお客さんがまったくこなくなった。4月に入ってからは1日6回上映して10人に満たないぐらいの数字。昨日まで営業し、5月6日まで休館という状況。休館が1か月でもかなり苦しいが、3か月になると必ず閉館に追い込まれる」と切迫した状況を強調。映画、本屋、カフェが融合した京都「出町座」の支配人・田中誠一は、上映は続けているが「観客ゼロの回が3回ぐらいあり、開けていても厳しい。明確に影響が出始めたのは3月末から。いきなりガクッと悪くなった」と振り返り、「映画だけじゃなくてカフェや本屋も厳しい。映画とカフェ、本屋をどう結んでいけるのか」と模索中だ。

 大阪 「シネヌーヴォ」の支配人・山崎紀子も「3月末からおちた。4月3日が史上最悪の売り上げ。これが続くと劇場がもたない。公開作品も延期になっていき、隙間だらけのスケジュールになっていった。大阪の緊急事態宣言が出て悩んだ末に、安全な状態でお客さんに戻ってほしいと決断して休館に至った」と休館までの経緯を説明する。そんななか、京阪神では動員数が減少しているミニシアター13館の支援プロジェクト「Save our local cinemas」を6日から開始。「関西劇場応援Tシャツ」を販売し、「最終的にたくさんの支援が集まり、13館の映画館が1か月半ぐらい休館しても存続できる状態にはなったと思う」と劇場の連携が成し遂げた成果を打ち明けた。

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 広島「シネマ尾道」の支配人・河本清順は、「劇場を支えていたお年寄りの観客が見えなくなった」という苦境に立たされた中での施策として、年会費1口12000円からの「シネマ尾道友の会シニア会員」で支援を呼び掛けている。「現在、50口近く集まった。1週間で普段通ってくれている街の人たちが支えようという気運になっている。明日閉めるかもしれないという状況ではあるけれど、ミニシアター・エイドの活動が映画館を支えている人たちの励みになっているのは間違いない」と力をこめる。

 大分「シネマ5」の支配人・田井肇は、上映は続けているが無観客上映になりつつある状況を報告。「休館というのは基本的には頭の中にはないが、お客さんが本当は来たいのに来られないというのがわかってきた。家族に止められたり、映画館の中は大丈夫でもそこに至るまでの危険を考えたり。いっそ休館してくれた方があきらめがつく。(観客には)そういう苦しみもあると思うので、休館を一つの選択肢にせざるを得ない」と現状を鑑みつつ、「地方にはひと月遅れで新作が届くため、東京が収束したころにかける映画がなくなってしまう」と先も見据える。

 最後に、濱口監督は署名運動「#SaveTheCinema」への署名も呼びかけ、「映画だけでいいのか、と言う人もいるかもしれないけど、映画という抽象的なものではなく映画にかかわる人たちの暮らしを守ることが目標で、これらはそのための一つのアクション。映画に限らずあらゆるところで起きなければならないアクション」と改めて「ミニシアター・エイド基金」の意図を説明。深田監督は「こういったことが起きる前に、大手とインディペンデントが連携すべきだった。ヨーロッパや韓国ではできていることで、日本ではそれができていなかった」とも話していた。(編集部・石井百合子)

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