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東京フィルメックス、再々スタート

共に釜山国際映画祭参加後、会見に挑んだ(写真左から)中川龍太郎監督と広瀬奈々子監督。
共に釜山国際映画祭参加後、会見に挑んだ(写真左から)中川龍太郎監督と広瀬奈々子監督。 - (撮影:中山治美)

 アジアの気鋭作家に着目した映画祭・第20回東京フィルメックスのラインナップ発表が10日、都内で行われ、コンペティション部門に日本から、元乃木坂46のメンバーの衛藤美彩が映画初出演した中川龍太郎監督『静かな雨』と、広瀬奈々子監督のドキュメンタリー『つつんで、ひらいて』が選ばれた。また昨年、特別協賛を申し出た木下グループ(本社・東京)が1年で撤退し、新たな協賛企業を得て再々スタートすることが明らかになった。

市山尚三ディレクターら
(写真左から)市山尚三ディレクター、中川龍太郎監督、広瀬奈々子監督、特別協賛シマフィルムの田中誠一氏。(撮影:中山治美)

 同映画祭は2000年にスタート。歴史こそ浅いが、アート系の質の高い作品を上映することから国内外の映画ファンからも高い評価を得てきた。しかし昨年、創立からのスポンサーだったオフィス北野でお家騒動が勃発し、映画事業から撤退。窮地に手を差し伸べたのが、映画会社や芸能事務所を傘下に持ち、エンターテインメント産業に理解ある木下グループだった。それが、わずか1年で東京フィルメックスの特別協賛から手を引くこととなった。

 会見で経緯を問われた東京フィルメックスの市山尚三ディレクターは「詳しくは木下グループに聞いていただいた方がいいのですが、企業としてはメリットがないという判断ではないかと思います。もともと東京フィルメックスはどう頑張っても動員は2万人いくか、行かないかの映画祭。なかなかそこをご理解いただくのは難しいのかと思ってます」と答えた。

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市山尚三
木下グループ撤退について説明する映画祭ディレクターの市山尚三。(撮影:中山治美)

 それに伴い、日本映画界の新たな才能を発掘すべく木下グループのサポートで「フィルメックス新人監督賞・シナリオ賞」をスタートさせ、第1回目の受賞者が発表されたばかりだが、こちらも見直さざるを得ない状態となった。市山ディレクターも「今年は準備期間がなく無理なので、そこは新たなスポンサーと相談したい。映画祭事務局で賞をあげることはできても、映画製作もとなると難しいかもしれない」と語り、これから検討していくという。

 もっとも既に新たなスポンサーは見つかっており、近々発表予定。さらに特別協賛として森崎東監督『ニワトリはハダシだ』(2003)の製作や京都のミニシアター・出町座を運営するシマフィルム(本社・京都府舞鶴市)が加わることとなった。会見に出席したシマフィルムの田中誠一氏は「映画祭を続けていただきたいという思いで参加させていただきました」と長期的視野を持って支援していくことを語った。

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中川龍太郎監督
コンペティション部門に選ばれた『静かな雨』の中川龍太郎監督。(撮影:中山治美)

 今年の開催に関しては支障はなく、例年にも負けず劣らず注目作が集まった。特別招待作品に今年のロカルノ国際映画祭で金豹賞と最優秀女優賞を受賞したペドロ・コスタ監督『ヴィタリナ(仮題)』と、アカデミー賞外国語映画賞のサウジアラビア代表のハイファ・アル=マンスール監督『完全な候補者』など。

 さらに20回を記念して歴代の受賞作品の中から人気投票を実施し、上位に入ったロウ・イエ監督『ふたりの人魚』(2000)、ヤン・イクチュン監督『息もできない』(2008)、内田伸輝監督『ふゆの獣』(2010)の3本が上映される。

広瀬奈々子監督
ドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』の広瀬奈々子監督。(撮影:中山治美)

 東京フィルメックスで上映される作品は、なかなか大手シネコンで上映されるような商業ベースの作品ではないが、ここでの評判が契機となって『息もできない』や園子温監督『愛のむきだし』(2008)がスマッシュヒットを飛ばしている。どの作品がここからまた世界へと羽ばたいていくのか、今年も目が離せない。(取材・文:中山治美)

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上映ラインナップは以下の通り。

■東京フィルメックス・コンペティション

『水の影』(サナル・クマール・シャシダラン監督 / インド)
『昨夜、あなたが微笑んでいた』(ニアン・カヴィッチ監督 / カンボジア、フランス)
『熱帯雨』(アンソニー・チェン監督 / シンガポール)
評決』(レイムンド・リバイ・グティエレス監督 / フィリピン)
『ニーナ・ウー』(ミディー・ジー監督 / マレーシア、ミャンマー)
『気球』(ペマツェテン監督 / 中国)
『春江水暖』(グー・シャオガン監督 / 中国)
『波高(はこう)』(パク・ジョンボム監督 / 韓国)
『静かな雨』(中川龍太郎監督 / 日本)
『つつんで、ひらいて』(広瀬奈々子監督 / 日本)

■特別招待作品

『シャドウ・プレイ』(ロウ・イエ監督 / 中国)【オープニング作品】
『カミング・ホーム・アゲイン』(ウェイン・ワン監督 / アメリカ、韓国)【クロージング作品】
『完全な候補者』(ハイファ・アル・マンスール監督 / サウジアラビア、ドイツ)
『ヴィタリナ(仮題)』(ペドロ・コスタ監督 / ポルトガル)
ある女優の不在』(ジャファル・パナヒ監督 / イラン)
『夢の裏側~ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ』(マー・インリー監督 / 中国)

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■特別招待作品 フィルメックス・クラシック

『牛』(ダリウシュ・メールジュイ監督 / イラン)
『HHH:侯孝賢』(オリヴィエ・アサイヤス監督 / フランス、台湾)
『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(ホウ・シャオシェン監督 / 台湾)
『大輪廻』(キン・フーリー・シンパイ・ジンルイ監督 / 台湾)
『空山霊雨』(キン・フー監督 / 台湾)

■特集上映 阪本順治

鉄拳
ビリケン
KT

■歴代受賞作人気投票上映

『ふたりの人魚』(ロウ・イエ監督 / 中国 )
『息もできない』(ヤン・イクチュン監督 / 韓国)
『ふゆの獣』(内田伸輝監督 / 日本)

第20回東京フィルメックスは11月23日~12月1日、東京・有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日比谷にて開催

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