新体制の釜山国際映画祭「和合・正常化・新たな跳躍」目指す

第23回釜山国際映画祭

9月4日に行われた第23回釜山国際映画祭会見にて。チョン・ヤンジュン執行委員長(左)とイ・ヨングァン理事長(右)
9月4日に行われた第23回釜山国際映画祭会見にて。チョン・ヤンジュン執行委員長(左)とイ・ヨングァン理事長(右)

 第22回釜山国際映画祭(以下BIFF)終了後、当時のキム・ドンホ理事長、カン・スヨン執行委員長辞任により空席だったそれぞれのポストに、イ・ヨングァン氏、チョン・ヤンジュン氏が、1月31日の臨時総会を経て選任されてから7か月が過ぎた。

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 2014年にセウォル号沈没事件を追ったドキュメンタリー映画『ダイビング・ベル セウォル号の真実』の上映を巡り、釜山市による上映取り消し要請を無視して上映を強行したBIFF。これに対して釜山市は会計監査で報復とも取れる使途不明金を指摘し、当時のイ・ヨングァン執行委員長らを刑事告発した。これに異を唱えた韓国映画各団体が決起集会を実施。2016年からは映画祭参加ボイコット運動を行い、BIFFの問題は世界へと拡散し、世界の多くの映画人が、BIFFの自主独立性支持を表明する事態へと発展した。

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 その後、映画祭は組織委員会から理事会へと組織改編を行い、キム理事長とカン執行委員長体制で運営が行われてきたが、今度は映画祭スタッフから2人に対する不信任が叫ばれ、2017年の映画祭開催の直前には2人が映画祭終了後に辞任を表明する事態となっていた。

 ともあれ4か月間のトップ不在の状態から、前述したように理事会を経てイ理事長、チョン執行委員長が選任され、BIFFへ復帰した。しかしながら、2人は方向性の違いにより、以前から確執があるのではと憂慮されていた。

 9月4日ソウル市内で行われた第23回BIFF公式記者会見でも、質疑応答で真っ先にこの問題について記者席から質問が上がった。

 イ・ヨングァン理事長は部分的にはコミュニケーションに問題があったことは事実と認めた上で、「今は取り組まなければならない問題が山積みの状態だ。わたしとチョン・ヤンジュン執行委員長とは方向性の違いをすり合わせていけば済む話であり、以心伝心でお互い何をすべきかは理解している。それよりも問題はキム・ドンホ理事長とカン・スヨン執行委員長の関係改善が急を要する課題だ」と昨年の映画祭後に辞任したトップの2人について言及した。

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 チョン執行委員長もこれに同意。「イ理事長とのコミュニケーション問題よりも、むしろ2人キム理事長とカン執行委員長との関係修復が重要。個人的な考えではあるが、カン執行委員長とはまだしばらく時間がかかると思う。キム・ドンホ理事長には開幕式に出席してもらうべく、接触を試みている。近々、キム理事長と会って説得するつもりだ」とBIFFの功労者であるキム・ドンホ前理事長を呼びたい考えを明らかにした。

 ともあれ、釜山市との関係悪化や映画祭予算の削減など、この3年間映画祭は逆風にさらされて疲弊していったのも事実。映画祭内部の不協和音の原因とされたカン前執行委員長と彼女の後見人ともいえるキム前理事長が去り、韓国の政治に目を転じるとパク・クネ前大統領の逮捕により、選挙を通じてムン・ジェイン政権が誕生。今年の6月に行われた統一地方選挙では、映画祭での『ダイビング・ベル』上映に異を唱えたソ・ビョンス釜山市長が落選した。韓国国内でも、今年は映画祭参加ボイコットを表明している映画団体は現在のところない。

 一見、映画祭運営には支障がないように思えるが、イ理事長は現在の映画祭を次のように分析する。「患者に例えると、釜山国際映画祭は手術を受けなければならない状態。しかしながら、手術を行うには余りにも体力が落ちており、まずはある程度回復してから手術を行う必要がある」とし、組織内部の問題点を執行委員で組織された特別委員会で検証し、改善していくことを約束した。イ理事長は、今年のBIFFを、「和合」「正常化」「新たな跳躍」元年と位置付けている。映画上映本数は79か国323本と例年並みであり、昨年急逝した故キム・ジソク副執行委員長のドキュメンタリー制作発表やフィルムマーケットの強化など、アピールポイントは多々ある。

 だが、イ理事長の言葉を借りるなら、安静に無事にやり過ごして来年に備えるのが、今の釜山国際映画祭のスタンスのような気がする。(取材・文:土田真樹)

第23回釜山国際映画祭は10月4日から13日まで開催

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