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自殺防止に取り組む僧侶 志願者に必要なのは一緒に悩める仲間

『いのちの深呼吸』初日に登壇した根本一徹さん
『いのちの深呼吸』初日に登壇した根本一徹さん

 8日、自殺防止活動に取り組む僧侶・根本一徹さんを追ったドキュメンタリー映画『いのちの深呼吸』がポレポレ東中野で初日を迎え、根本さんが舞台あいさつに登壇、命の大切さについて、せつせつと語った。

映画『いのちの深呼吸』予告編

 自殺防止活動に取り組む根本さんのもとには、“最後の砦”として全国の自殺志願者からメールや電話が寄せられるという。そこで根本さんがするのは、ただ彼らの話を聞き、一緒に食事をし、そして寄り添うこと。しかし、そんなひとときがまるで命の深呼吸をするように、彼らの心を落ちつかせ、生気を取り戻させていく。

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 本作を監督したのは、アメリカ人監督のラナ・ウィルソン。根本さんについて書かれた雑誌記事を読んだ彼女は、根本さんがどうやって彼らの話に耳を傾け、一歩前に進ませているのかと疑問を抱き、来日。根本さんが住職を務める岐阜県・大禅寺にやってきて、「旅立ち」と題した模擬葬儀のワークショップを体験することにした。その衝撃は涙を流すほどだったという彼女は、根本さんのドキュメンタリー撮影を決意。たびたび日本にやってきては根本さんに密着。完成に3年半をかけた。

 そんな監督の思いを「この映画は一緒にワークショップに参加していただくような、人生に役にたつような映画になってくれたらいい」と代弁した根本さん。ラナ監督を深く感動させたワークショップは「旅立ち」というもので、「大切な人」「大切なもの」「大切な思い出や出来事」「これからやってみたいこと、やり残したこと」をそれぞれ3つずつ思い浮かべ、付箋に記す。そして、それを少しずつ丸めて捨てていき、最後にひとつだけ残るものは何なのかを見極める。その一番大切なものを丸めて捨てることこそが「死」なのだ、と。疑似体験する。

 「ワークショップは1日がかりでやってもらいます。われわれはどうしてもスマホが手放せなかったり、情報が多かったりするものですが、そういったいろいろなものを削っていくわけです。ですが、削りきった先は、意外に身近なものが大事なものであったことに気付く。簡単なので、誰かと一緒にやってもらってもいいですし、うちに来て参加してもらってもいいですね」と語る根本さん。

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 他人の悩みに寄り添う一方で、根本さんは、慢性的な胸の鈍痛や、心臓の血管が詰まっていつ心筋梗塞が起きてもおかしくない状態であった。映画には満身創痍な姿も映し出されており、この日の観客から「体調は大丈夫ですか?」と心配の声があがるひと幕も。「心配していただいてありがとうございます。身体も頭も壊れてしまいましたが、後は心だけでも老化しないようにして。成長していけたらいい」と返答した根本さんに、「いつまでもお元気で」とねぎらいの言葉がかけられた。

 自殺防止活動について「一緒に悩める仲間が必要なんです」とその意義を語る根本さんは、最後に「人と接するときは、春のように温かい心で。仕事をするときは夏のように燃える心で。ものを考える時は秋のように澄んだ心で。自分に向かうときは冬のように厳しい心で。そんな風に生きていけたら」と観客にメッセージを送った。(取材・文:壬生智裕)

ドキュメンタリー映画『いのちの深呼吸』はポレポレ東中野で公開中

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