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ウェス・アンダーソン、ジブリ美術館で宮崎駿作品DVDを爆買い!

日本映画の話になるとテンション高めのウェス!
日本映画の話になるとテンション高めのウェス!

 日本を舞台にした映画『犬ヶ島』を引っ提げ来日したウェス・アンダーソン監督が、黒澤明監督や宮崎駿監督からどのように影響を受けたのか、さらには「エヴァンゲリオン」をはじめとする日本文化への愛と、本作でどのように“ウェス・アンダーソンらしさ”を貫いたかを語った。

パペットの精巧さ…!『犬ヶ島』予告編

 ウェスの日本愛がたっぷり詰まった本作は、日本を舞台にドッグ病の大流行によって犬ヶ島に隔離されてしまった愛犬を探す少年と犬の仲間たちの壮大な冒険をストップモーションアニメで描いた作品。銀熊賞(監督賞)を受賞した第68回ベルリン国際映画祭の記者会見などで、ウェスはかねてから本作に影響を与えた存在に黒澤明監督や宮崎駿監督の名を挙げていた。

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 「この作品に取り掛かり始めたとき、“もしこれが黒澤映画だったらどうなるか?”ということを考えていた」と明かすウェス。とりわけ、人情味あふれる登場人物が悪に立ち向かっていくさまを描いた『悪い奴ほどよく眠る』『天国と地獄』『野良犬』の3本から強く影響を受けたそう。「でも、最終的にできあがった映画は、全く黒澤映画っぽくはないと思う(笑)。黒澤の作品にインスパイアされたけど、何か別のものができたね。黒澤だったらこのストーリーを白黒のワイドスクリーンで撮影して、とってもすばらしい映画にしただろうね」と笑いながら謙遜するウェスだが、前述の作品に限らず、『七人の侍』『蜘蛛巣城』などなど黒澤監督作品へのオマージュを感じられる描写が満載で、それを発見する楽しみがあるのも本作の見どころのひとつとなっている。

 一方、宮崎監督作品を深く知ったのは、ウェスにとって初めてのストップモーションアニメ『ファンタスティックMr.FOX』(2011)の製作中だったという。「かなり前のことなんだけど、前回、日本に来た時、ジブリ美術館に行って、そこで全作のDVDを購入したんだ(笑)。僕が初めてのアニメをつくるまで、実は彼の映画についてそこまで知らなくて。その映画をつくっている間、宮崎監督の映画にどんどん影響を受けていく感じだった。でもその映画では、ストーリーがすでに存在している段階だったので、それほど影響は色濃くないけれど、その映画製作中に彼の作品をよく観ていたのは確かだ。そして『犬ヶ島』をつくっているときは、すでに彼の作品全てを熟知していて……何度も繰り返し観ていたからね。今作のほうが、より宮崎監督作品に影響を受けていると思う」。それでも、黒澤監督作品からの影響と比べると、宮崎駿監督作品からの影響は具体的には気付きにくい。それは宮崎監督作品の「静寂と自然の描写に影響を受けている」からだろう。黒澤監督からの影響は足し算で、宮崎監督からの影響は引き算という形で、『犬ヶ島』の絶妙な世界観がつくられたのだった。

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 その後も、日本愛が止まらないウェスは、「高畑勲さんや、『犬ヶ島』のために特別なイラストまで描いてくれた大友(克洋)さん。あと、一番大きな衝撃を受けた作品が、庵野(秀明)監督の『エヴァンゲリオン』。僕に強烈なインパクトを残した。本当に大好きなんだ」とうれしそう。興味は映画やアニメにとどまることなく、日本食にまで。「僕は日本料理が好きなんだ。だから劇中、寿司の調理シーンがある。ストーリー上、必ずしも必要ではなかったけど、どうしても寿司をつくるシーンをストップモーションアニメでやりたかった。日本の調理場をストップモーションアニメで描いた作品はこれまでにないと思ったからね。もしかしたら、僕が知らないだけで、誰かがやっていたのかもしれないけど」と笑顔を見せる。

画像テキスト
『犬ヶ島』フィギュアで遊んじゃうウェス

 しかし、「そのシーンはとても複雑だった」とも明かすウェス。「僕たちはそのシーンを(観客に)楽しんでもらいたいと思って。愉快な感じというか、ちょっとした幻想みたいなものを織り交ぜようとした。そうすると、寿司職人の包丁さばきとかが、動きとして正しくなくなってしまう」。正しさを取るか、自分らしい演出を取るか。それは今作で何度もぶつかる問題だったという。「この映画をつくっているとき、僕がどれだけ多くのミスをしたことか。でも幸運なことに、僕にはたくさんの日本人コラボレーターがいた。彼らは僕の日本文化に関する間違いを指摘してくれたり、正してくれたりしたんだ」。

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 例えば、ウェスの作品ではグラフィックデザインが重要な要素になっているが、今作ではもちろん日本語表記も多い。「僕には日本語がわからない。だから、日本語をビジュアル的にとらえてしまう。すると、日本で生まれ育ったグラフィックデザイナーたちは何が正しいのかを教えてくれた。でも、それを知ったうえで、最終的には僕がどうしたいかを考えた。“日本での正しさ”ばかりを追求したくなかったんだ。この映画はファンタジーでもあるから。現実に基づいて映画をつくるというよりも、僕たちがどうしたいかという方向性でつくられた」。寿司のシーンで目立つワサビがそれを物語っている。「その寿司を食べる教授は、インテリジェントな人なのに。それでも食べてしまうから、滑稽なんだ」。膨大なリサーチと多くの人々の手助けのうえに、ウェスの美的センスとユーモアで再構築された“日本”は、どこか懐かしくも新しい不思議な魅力に満ちている。(編集部・石神恵美子)

映画『犬ヶ島』は全国公開中

野田洋次郎も参加!ウェス・アンダーソン最新作『犬ヶ島』日本オリジナル版予告 » 動画の詳細
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