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世界を旅しながら映画制作“シネマドリフター”が脚本なしに制作した夫婦愛描く異色作

第13回大阪アジアン映画祭でワールドプレミア上映された『どこでもない、ここしかない』のリム・カーワイ監督
第13回大阪アジアン映画祭でワールドプレミア上映された『どこでもない、ここしかない』のリム・カーワイ監督

 開催中の第13回大阪アジアン映画祭で、マレーシア出身のリム・カーワイ監督による日本・スロベニア・マケドニア・マレーシア合作の異色作『どこでもない、ここしかない』が13日、大阪のシネ・リーブル梅田でワールドプレミア上映された。

 リム監督は大阪を拠点に世界中を旅しながら映画制作をする“シネマドリフター”を名乗っているが、本作はその活動の面目躍如たる作品だ。本作の出演者は、リム監督が2年前に東欧を旅した時にスロベニアで出会ったゲストハウスの経営者フェルディ・ルッビジとその家族や友人たち。同地を気に入ったリム監督は昨年再び旅行をすることを思い立ち、せっかくならば彼らで映画を作ろうと撮影の北原岳志と録音の山下彩を同行し、脚本もないまま再び現地へ赴いたという。

 そして完成した映画は、フェルディのキャラクターや人生を巧みに生かした夫婦愛のドラマだ。事業拡大で大金を手にしたフェルディだったが女遊びも激しくなり、夫婦関係に亀裂が入る。愛想を尽かしてマケドニアに帰ってしまった妻の愛を取り戻すべく奮闘する。

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 リム監督はフェルディ本人のキャラクターについて問われると「役のまんまかというのは観客の想像にお任せしますが、トルコの男性は自分はスルタン(権力者)ですごくモテると思っている人が多いと思う。本当に女性が好きで、ハーレムを築きたいと思っている人も多いです」と持論を語り、会場を盛り上げた。

 物語のテーマは普遍的だが、フェルディがトルコ系移民のマイノリティーであることや、生活の随所に垣間見えるイスラム教の影響など、この地にカメラを据えなければ見えてこない景色が写り込んでいる。圧巻は映画後半に登場するマケドニアでの結婚式で、イスラム教の戒律にのっとり男女別で行われている。このシーンは、本物の結婚式をそのまま映画に活用したという。

 リム監督は「バルカン半島にはトルコ系移民が多く住んでいるが彼らの絆は深い。僕はマレーシア出身の華僑だが、華僑のコミュニティーと似ていると思う。それがこの映画を撮った理由かもしれません」と説明した。

 なおこの日、コンペティション部門の審査委員長を務める予定だったカンボジアのソック・ヴィサル監督がビザの関係で来日できなくなり、リム監督が新たに審査委員長に就任したことが発表された。

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 またリム監督は映画祭連携企画として17日に関西大学梅田キャンパスで行われるトークセッション「アジアに映画は足りているか? 関西から考える映画の一極集中」に、映画『淵に立つ』の深田晃司監督らと参加する。(取材・文:中山治美)

第13回大阪アジアン映画祭は3月18日まで開催

■トークセッション「アジアに映画は足りているか? 関西から考える映画の一極集中」
http://eiganabe.net/2018/03/03/1772

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