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「ハリポタ」キャスティング秘話も飛び出したクリス・コロンバス監督、『ピクセル』への愛

コラム

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『ピクセル』クリス・コロンバス監督、オタクが大好き!
『ピクセル』クリス・コロンバス監督、オタクが大好き!

 映画史に残る名作『ハリー・ポッター』シリーズの第1作目、映画『ハリー・ポッターと賢者の石 』の監督クリス・コロンバスは、熱狂的な原作ファンの多かったこの作品を見事にファンのイメージどおりに映画を作り上げた名匠だ。10年間に8作品続いたシリーズは、後にこの1作目のビジュアルや世界観を踏襲して製作されていった。いわば映画『ハリー・ポッター』の世界を作った監督だ。そんなクリス・コロンバス監督が日本の名作ゲームのキャラクターたちと人類の攻防を描いた映画『ピクセル』(9月12日公開)という奇想天外ながら、まったく新しい世界を創造した。完成まで2年の歳月を費やしたという本作、果たして名匠はどのように未知の世界を組み立てていったのだろうか。

ばかばかしく見えるけど美しいキャラクター

パックマン
『ピクセル』の地球侵略者はどこかにくめない!?

Q:8ビット(ドット絵)のキャラクターをビッグスクリーンで再現するにあたって、ハードルはあったのでしょうか?

僕にとって最大のチャレンジは、観客が、「こんなの、これまでに見たことがない」と感じる映画を作ることだった。目標は、3Dのキャラクターを、ピクセル状にして見せること。それも体中をね。観客をあっと言わせたかったんだよ。この映画のキャラクターは、ばかばかしく見えるし、怖くは見えない。だが、とても美しくも見える。僕は彼らを美しく見せたかった。それに、彼らの破壊の仕方にも気をつけたよ。典型的な、ディザスター映画やアクション映画の破壊の仕方にはしたくなかったんだ。キャラクターが触れるものは、すべてピクセルになる。街が崩壊するとき、そこはすべてピクセルになるんだよ。それはすごい景観だよ。

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Q:これらのキャラクターは人類の敵ですが、憎むべきキャラクターには見えませんね。

愛すべきキャラクターにしようとは思わなかったけれど、チャーミングさを持たせるようには気を付けたよ。彼らは、ゲームのキャラクターがやるべきことをやっているにすぎないんだ。ドンキーコングは樽(たる)を投げるが、それは彼がそうするようにできているからなんだよ。人間を殺すつもりなど、彼にはまったくないのさ。パックマンも同じ。彼はひたすら食べまくる。不運なことに、彼らは地球に身を置くことになったので、状況が変わったんだ。彼らのルールは、地球ではそのまま通用しない。そのせいで、彼らが地球を破壊しようとしているかのように見えるんだよ。

オタクのコミュニティーが大好き

Q:オタクという言葉はアメリカでも使うのでしょうか?

Nerdやgeekがそれに当たるね。ゲームだけに夢中ならgamerという言葉もある。

Q:そういう人たちをどう思いますか?

パックマン
オタクが地球を救う!-映画『ピクセル』より

彼らのコミュニティーは大好きだよ。僕たちにはみんなその要素があると思う。そこまで夢中にならないとしてもね。僕だって、コミックブックが大好きだったし、映画をたくさん観てきた。何かに夢中になると、geekと呼ばれるんだよ。僕は自分もgeekだと思っている。ゲームはやらないけれど、あのコミュニティーはすてきだ。彼らは、僕が愛するタイプの芸術を支持してくれるからね。

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Q:じゃあ、あなたも少しオタクなんですね。

すごくオタクだね(笑)!

Q:ゲーム文化は、80年代からかなり変わってきているとは思うのですが、あなたはどんなゲームがお好きですか?

僕は子供のころ、あまりゲームをしなかったんだよね。バーでドンキーコングやパックマンをやったりはしたが、アーケードには、縦型ではなく、テーブルタイプのゲームがあって、向かい側に誰か別の人がいて、一緒にプレイしたんだ。パックマンとドンキーコングはよく知っている。この映画のリサーチで、ほかのゲームも学ばなければいけなかった。キューバートとか、センチピードとか、ギャラガーとか。時間は掛かったけど、楽しかったよ。ああいった初期のゲームに、僕は魅力を感じる。シンプルでチャーミングで、楽しいからね。

Q:新しいゲームはやりますか?

いや、やらないね。息子はやるけど。息子は「コール・オブ・デューティ」をやっているよ。前は「HALO」「アサシンクリード」もやっていた。息子がやっているのを見ながらおしゃべりしたりはしたが、僕自身はやらないよ。

自分が去った後も踏襲された『ハリー・ポッター』のスタイル

パックマン
『ハリー・ポッターと賢者の石』のときのクリス・コロンバス監督とエマ・ワトソン、ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント Evan Agostini / Getty images

Q:あなたは、最初の『ハリー・ポッター』となった『ハリー・ポッターと賢者の石』を大成功させていますが、その要因はなんだったと思いますか? また、今作にその要素はあると思いますか? 

要因は何かということを考えたことはないんだよね。でも、8作も続けられる作品になったということは確かに大ヒットだね。たぶん僕自身が原作を本当に愛していたからかもしれない。僕はあの本が大好きで、キャラクターたちが大好きだった。僕は、原作に忠実な映画を作りたかった。原作のファンや、僕の子供たちをがっかりさせたくなかったんだよ。だから、僕らは、製作中、原作に忠実であることを、常に意識していた。あの世界が息吹をもつのを目の当たりにするのは、僕にとって、すばらしい体験だったよ。僕は3作しか関わらなかったが、僕が去った後も、あのビジュアルのスタイルは存在し続けた。それを、僕はうれしく感じた。僕はそのことを誇りに思っている。

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Q:キャスティングも上手かったですね。

ああ、キャスティングも成功の理由のひとつだね。でも、あの子たちがどんなふうに成長していくのかは、わからなかった。僕らは、ラッキーだったよ。それに、あの子たちはもともと子役ではない。演技なんて全然知らなかったんだ。一人は、舞台を1回やったことがあるだけだった。撮影の初日、彼らはカメラを見てほほ笑んだり、きょろきょろと照明を見回したり、せりふが一言しかないのにそれを忘れたりしていた。表情を捉えられるよう、一度に3つカメラを回したこともあるよ。最初の2作は、それぞれ、撮影に160日をかけた。2作は連続で撮影したので、僕はすっかり疲れてしまったよ。合わせて320日の撮影だからね。でも、3作目が始まる頃には、彼らは優秀な俳優になっていた。あの映画には、僕はプロデューサーとして関わっている。あの子たちはワンテイクでシーンを全部演じられるようになっていたよ。

Q:現在、あなたは自分のキャリアをどのようにとらえていますか?

わからないな。これからも仕事を続けていきたいよ。映画を作り続けていきたい。僕がこの映画を作ったことにみんな驚いているが、これはまさに、僕が80年代に脚本書いた『グレムリン』とか『グーニーズ』のような映画なんだよ。『ピクセル』は、そこに属すると感じている。僕はできるだけ長い間、映画を作り続けていきたい。もう君なんかいらないよ、と言われるまでね(笑)。

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任天堂のこだわりはすごい!

ミッシェル
ヒロインのミシェル・モナハン

Q:ゲームクリエータ-と、脚本などについて話し合いをしたそうですね。彼らはすごくこだわりをもっていたとのことでした。

どの会社もだが、とりわけ任天堂は、すごく強いこだわりをもっていた。僕らがどういう映画にしようとしているのか細かく知りたがったし、ドンキーコングのデザインも見たがったよ。スクリーンに登場させるドンキーコングを僕らがデザインしていく上で、彼らはとても協力的だった。僕らも、ゲームに忠実でありたかった。全員が一番気にしたのは、その部分だ。僕らは、ゲームとキャラクターに忠実であり続けた。スクリーン用のドンキーコングに関しては、僕らはまずアートワークを送り、次にストーリーボード、そしてアニマティック(映像化)を送った。アニマティックとは、マンガをアニメートしたようなもののこと。僕がどんなふうに撮影するつもりなのかがわかるように、それぞれのショットの下に、レンズ番号まで入れたんだよ。彼らは、それをとても気に入ってくれた。彼らは、今作ですばらしいパートナーになってくれたよ。この映画でドンキーコングを使わせてもらえたことを、僕は本当に幸運だと感じている。パックマン、センチピード、その他多くのキャラクターを使わせてもらえて僕はとてもラッキーだ。

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Q:この映画では日本のゲームを使っていますが、日本に対してどういうイメージをお持ちですか?

「子連れ狼」の大ファン

アダム
アダム・サンドラーは落ちぶれた天才ゲーマー

僕の妻は日本でダンサーとしてしばらく働いていて、日本に行ったことがあるんだ。1993年のことだよ。それで、彼女が仕事をしている間、僕も日本を少し旅行して回ることができた。そして、僕は日本が大好きになったんだ。日本の文化に魅了された。僕はもともと日本映画の大ファンでね。黒澤はもちろん好きだし、ベビーカートの映画も好き。侍がベビーカートを引いている映画だ。

Q:「子連れ狼」ですね?

そうだ。「子連れ狼」だね。僕のキャリアに大きな影響を与えた映画もある。1964年の『鬼婆』(新藤兼人監督)もそのひとつ。あれは、すごく怖い映画だった。それにマンガもね。最初に日本に行ったときに、マンガをたくさん持って帰ったよ。言葉は日本語だけど、絵が気に入ってね。ほかに「カムイ伝」とかいうのも持って帰った。『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』のアニメーターもすごく尊敬している。僕はサンフランシスコに住んでいるので、時々ジャパンタウンの本屋に行くんだ。「カムイ伝」とかベビーカート侍(「子連れ狼」のこと)のマンガが、英語に訳されているものを売っているよ。僕が大好きな漫画家がいるんだけれど、今ちょっと名前が思い出せない……思い出せたらいいんだけれど。

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Q:この映画に出てくるゲームには、40歳以上の人しか知らないものも多いのですが、それより下の年齢層の観客はどう楽しめばいいでしょうか? アダム・サンドラーの息子さんは、これらのゲームを知っていたと語ってはいましたが。

映画のビジュアルスタイルを重視

アダム
キャストのチームワークもばっちり!

そのことについては考えなかったな。僕はゲームそのものより、映画のビジュアルスタイルを重視したんだ。僕はこの映画のビジュアルを、美しくしたかった。アダムはフレンドリーという言葉を使うんだけど、それも意識したよ。映像を見た子供に、「この映画、観たい!」と言ってもらうのが狙い。僕の友達の子供で、8歳や10歳の子に見せたところ、みんな「この映画、絶対連れて行って」と言ったよ。彼らの父親は「僕は昔このゲームをやったけれど、お前たちは知らないだろう?」と言っていたけれど、子供たちはイラストやらほかの形で、これらのキャラクターを見たことがあるみたいなんだよね。そしてこの映画は楽しそうと感じるみたいなんだ。

Q:キャスティングは監督が決めたのですか?

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アダム
アメリカ軍を指揮する立場に?

そうだね。アダム・サンドラーがよく出ているスタイルの映画とは違うものにしたかったんだ。正真正銘のコメディーではなく、もっと演技を見せる映画にしたつもりだ。アダムのキャラクターは、少し世間から浮いていると感じていて、自分に満足していない。彼は、再び勇気を持ち、自分に対する希望を見つけなければならない。彼がこれまでやってきたものより、ちょっと深い役だよね。そして、僕は、彼をすばらしい共演者で囲んであげたかった。それで、コメディアンとして優秀であるだけでなく、演技も上手い人たちをキャストしたのさ。ピーター・ディンクレイジジョシュ・ギャッドミシェル・モナハンらは、みんな、その役に最高のものを持ち込んでくれた上、撮影を本当に楽しんでくれたよ。彼らの間には、すばらしい相性があった。僕は、コメディーの才能と演技力、両方を兼ね備えた人たちを選んだんだ。

Q:これはゲームから生まれたアイデアですが、この映画がヒットしたら、これをまたゲームにすることも考えられますね。

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それはいいかもしれないが、これをゲームにするとなると、ありとあらゆる権利をどう交渉すればいいかが問題だろうね。ゲームを映画にするほうが、ずっと簡単だよ。パックマンやドンキーコングなどみんなを同じゲームに出すなんて、果たして可能かどうか、わからないな。

好きな邦画は「ベビーカートサムライ」(子連れ狼のこと)と語るコロンバス監督は、目がきらきら輝き少年の表情をしていた。インタビューの最中、家族から携帯に電話が入ったため中座したときに「さっきは悪かったね。インタビューの時間を延長していいからね」とほほ笑んだ。クリエイター特有の気難しさは感じられず、いい人オーラがにじみ出ていた。(編集部:下村麻美)

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