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マーベル、ウォシャウスキー姉弟、バズ・ラーマン…なぜクリエイターはNetflixと組みたがる?

コラム

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来年のオリジナルコンテンツ制作予算は6,000億円を予定している - Netflix
来年のオリジナルコンテンツ制作予算は6,000億円を予定している - Netflix - (c) Netflix. All Rights Reserved.

 世界最大級のオンラインストリーミングNetflixは、「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」「デアデビル」「センス8」など自社製作のオリジナルドラマも人気だ。またバズ・ラーマン監督やアンジェリーナ・ジョリー監督といった人気クリエイターたちもオリジナル作品をNetflixで制作することを発表している。しかし、これらのオリジナルドラマは、クリエイター側からの持ち込み企画だという。それを裏付けるように、ドラマ「デアデビル」を展開しているマーベルのテレビ部門のトップであるジェフ・ローブは、本ドラマは「Netflixだからこそできた企画」と語る。Netflixは、なぜここまでクリエイターからの信頼が厚いのか。その秘密を探る。

■<マーベル>ジェフ・ローブと<センス8>ウォシャウスキー姉弟の場合

ジェフ・ローブ
ジェフ・ローブ

 マーベルは、Netflixで「デアデビル」以外にも、「ジェシカ・ジョーンズ」「ルーク・ケイジ」「アイアン・フィスト」の三つのヒーロー作品、そして4人が集まる「ディフェンダーズ」を企画している。これらの企画がスタートしたのは、約2年前。現在は「ジェシカ・ジョーンズ」の撮影が終了し、今月から「ルーク・ケイジ」の撮影が開始される。

 そもそもなぜ、マーベルはNetflixと契約することになったのか。「Netflixはクリエイターに優しい会社である」と力説するジェフは、契約した理由について「パイロット版が必要ない」「表現が地上派放送よりも広がる」「視聴率を気にしなくてよい」と従来のテレビドラマ制作では考えられなかった、制作側のメリットを挙げていく。

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8
ウォシャウスキー姉弟の初ドラマ作品「センス8」 - (c) Netflix. All Rights Reserved.

 また「センス8」で初めてドラマに挑戦した『マトリックス』シリーズのラナ&アンディ・ウォシャウスキー姉弟は、12時間分の1本の映画を作る企画書をNetflixに持ち込んできたという。8人の主要キャラクターが登場し、世界9都市で撮影。さらに全てをまず撮影してから、それぞれのエピソードを編集していくという膨大な時間と経費を必要とする、ほかのテレビ局だと難色を示すような手法だったが、Netflixは彼らの手を取った。ウォシャウスキー姉弟はこのドラマを実現させることができてとても興奮したという。

■パイロット版が必要ない

 ジェフは「デアデビル」「ジェシカ・ジョーンズ」「ルーク・ケイジ」「アイアン・フィスト」「ディフェンダーズ」について、Netflixはパイロット(視聴者の反応をテストするための見本の1話)を作るのではなくて、シリーズとして作ることを最初から約束してくれたと語る。これはアメリカではかなり異例のことだ。

 アメリカでは基本的にテレビシリーズを制作する場合には、パイロット版を作ることが求められる。そして同放送の反響次第でシリーズ化するか、それともお蔵入りになるかが決定する。

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 そのためパイロット版がないということは、企画の段階でその作品が視聴者の興味を惹(ひ)きつけるものになるかの吟味が必要になるが、この時点でキャラクターや世界設定を十分に練り上げたい監督たちとの相性はその分良くなる。また、もともとNetflixは、ドラマを1話ごとに配信するのではなく、全話一気にまとめて配信するスタイルをとっているため、ドラマを観た後に「最新話を観るために1週間待たせる必要」もない。それゆえに1話終了ごとにドキドキ感をあおる演出も求められないため、ストーリーが不自然に盛り上がったりすることもなく、職人気質のクリエイターたちに優しい仕様だ。

■表現が地上派放送よりも広がる

デアデビル
「デアデビル」 - (c) Netflix. All Rights Reserved.

 「Netflixでは、民放で放送される番組よりもバイオレンスにすることも可能です」と話すジェフ。「デアデビル」たちが活躍する世界は、これまでマーベルの映画で描かれてきた世界よりダークな彼らの物語が語れる、既存のテレビ局とは違う場所を探す必要があったという。

 ジェフは、「言葉遣いもより大人向けにすることができます。この番組は、16歳以上を対象とした番組を目指しているのです。子供向け番組ではありません。だからといって、子供たちが観ない、というわけではありません(笑)。何しろマーベルの作品ですから」と続ける。これらの条件を全て理解してくれる場所、それがNetflixだった。

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 またNetflixは、キッズ専用のアカウントを設けることが可能だ。例えば親が子供が視聴する作品に制限を加えることができる。これにより望まない表現がある作品を回避することが可能となり、クリエイター側もまた自由な表現ができる。

■視聴率を気にしない

 Netflixには、それぞれの作品における視聴回数や、それを基にしたランキングなどが存在しない。それらがない理由について、コミュニケーション部門最高責任者のジョナサン・フリードランドは、そもそも「視聴率やアクセス数を公表する」理由がないと言う。

 Netflixは会員の利用料金によって運営しており広告収入はないため、まずは広告主の顔色をうかがうことがない。また、オリジナルではないコンテンツの権利購入も「どれだけ視聴されたか」ではなく、最初から一定の金額を提示して購入しているため、視聴回数は重要ではないという。そのため、広告主などに喜んでもらうことよりも視聴者にどれだけ満足を与えられるかということを目標にできるのだという。

オレンジ・イズ・ニュー・ブラック
女性刑務所を舞台としたブラックコメディー「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」などの作品にもチャレンジできる

 数字を気にしない方針は、クリエイターたちが作る物語に創作の幅を持たせる。ジェフは、(アメリカの有名テレビ局である)ABCで番組を作る時は、視聴者を惹(ひ)きつけるには、「必ず女性がたくさん登場すること、ロマンスがたくさんあること」と明かすと、その制限がないNetflixでは、「キャラクターにとって最高の方法で物語を表現することができる」と笑顔を見せた。

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■Netflixのポリシー

ピーター・フリードランダー
ピーター・フリードランダー

 「Netflixからの要望よりも、クリエイターたちのストーリーテリングやビジョン、オリジナリティーを大事にしたい」とNetflixのオリジナルコンテンツ部門で、バイスプレジデント(部長)を務めているピーター・フリードランダーは語る。もちろん撮影に入る前に、Netflix視聴者に興味のある作品になるか、意見交換を何度もすることによって確認していく必要はあるとフリードランダーはほほ笑むと、「1シーズン作れるかどうかというビジョン」を最初に求めることがほかのテレビ局などとの違いかもしれないと述べた。その考えは日本のコンテンツ制作にも共有されているという。

 一番いいコンテンツを作ることが常に目的だというNetflix。エミー賞やゴールデン・グローブ賞にノミネートされるなど質の良いドラマが次々と生み出されてきたが、それによってクリエイターたちへの報酬は、最初に決めた額から変動することはない。また多数のオリジナル作品を輩出しながらも、自社製作スタジオやシステムを作る予定は今のところないという。利益よりも最高の作品をクリエイターと追い求めたい。その姿勢でクリエイターたちの信頼を勝ち取っている。(編集部・井本早紀)

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