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パルムドール受賞監督クリスティアン・ムンジウが描く修道院で起きた実話を基にした新作

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クリスティアン・ムンジウ監督
クリスティアン・ムンジウ監督

 映画『4ヶ月、3週と2日』で2007年にカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したルーマニア出身のクリスティアン・ムンジウ監督が、第50回ニューヨーク映画祭(50th N.Y.F.F)に出品されている新作『ビヨンド・ザ・ヒルズ(英題) / Beyond the Hills』について語った。

 同作の主人公は、同じ孤児院で育った二人の若き娘アリーナ(クリスティーナ・フルトゥ)とヴォイチタ(コスミナ・ストラタン)。アリーナは一時期、国を出てドイツで暮らしていたが、ヴォイチタを愛する彼女は、ヴォイチタが暮らす正教会の修道院を訪ねて、彼女を取り戻そうとする。だが、神に仕えるヴォイチタとの関係を周りは許すはずがなく、事件へとつながっていくというドラマ作品。ルーマニア人ライター、タチアナ・ニクレスク・ブランが実話をもとに執筆した原作のノンフィクション作品を基に、ルーマニア人映画監督として初めてパルムドールの栄冠に輝いたクリスティアン・ムンジウがメガホンを取っている。クリスティアンはカンヌ国際映画祭で脚本賞、主演二人は女優賞を獲得している。

 ジャーナリストであったタチアナ・ニクレスク・ブラン原作について「タチアナは、2005年に起きたこの事件が多くのプレスによって曲解されてしまったために、この事件のあった修道院を訪れたり、そこにまだ仕えていた修道女たち全員に会ってインタビューをして、実際に何が起きたのかを取材したんだ。彼女が最初に出版した『デッドリー・コンフェッション(原題) / Deadly Confession』は、僕が今作で描くことになった。そして、彼女が次に出版した続編『ザ・ブック・オブ・ジャッジ(原題) / The Book of Judge』は、この事件の裁判を追ったものになっていて、この映画では描いてはいない」と明かした。

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 実際に起きた事件を映画化するうえで、直面した困難は「もちろん、原作のノンフィクションは事実を記しているが、なぜこの事件が起きたかは記されていないことだ。まず僕は、なぜ慈悲のある修道女たちが、このような暴力的な行為(事件)に陥ってしまったのかが気になった。なぜ、そのような事件が起きたのかを僕自身でも調査をしていた際に、これは原作には書かれていないことだが、個人的にこのアリーナとヴォイチタの愛によるものではないかと考えたんだ。そうすることで、アリーナが(暴力的行為を受けても)いつまでも修道院に居ることの理由に説明がつく。もっとも、僕自身はそれ以外の理由がわからなかったけれどね。だから、ノンフィクションの事件をベースにしているが、ストーリー構成はフィクションと言える作品になっている」と答えた。

 全く映画出演経験のない二人をキャスティングしたことについて「実は、この二人とも女優なんだ。アリーナを演じたクリスティーナ・フルトゥはルーマニアの舞台女優で、ヴォイチタを演じたコスミナ・ストラタンは、女優をしている学生なんだ。確かに彼ら二人は映画への出演経験はないが、僕にとっては、そんなことはそれほど重要ではないんだ。なぜなら僕はキャスティングで、まずルックスや性格が原作とのコネクションがあるかを見出してから、さらに4、5人の俳優に絞って、それから脚本を朗読させる。その際に、彼らがその台詞を論理的に理解しているかを見ながら、共に仕事ができるかどうかを決めていくんだ。だから、映画の出演経験があろうとなかろうと、僕には全く関係ないと思っている」と語る通り、そのクリスチャンが選考した二人が見事にカンヌ国際映画祭の女優賞を獲得している。

 映画は、閉塞感のある修道院で繰り広げられる幼なじみの二人の愛が、修道女と神の前では、嗚咽した声のように虚しくこだましていくが、その愛の重さだけがいつまでも心に刻まれていく。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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