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カンヌ国際映画祭で2度のパルムドール受賞した巨匠ダルデンヌ兄弟、原点は故郷の労働者の8割が解雇された経済危機

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左がジャン=ピエール・ダルデンヌ、右が弟のリュック
左がジャン=ピエール・ダルデンヌ、右が弟のリュック

 カンヌ国際映画祭で2度のパルムドール(最高賞)を受賞したベルギーのジャン=ピエール・ダルデンヌリュック・ダルデンヌのダルデンヌ兄弟が新作『少年と自転車』のPRで来日し、インタビューに応じた。

映画『少年と自転車』場面写真

 同作品は、児童相談所に預けられた少年が主人公。少年は父親に育児放棄されたことを認められずに荒れるが、週末だけの里親と出逢って人を信じる心を取り戻していく。映画『ロゼッタ』(1999年製作)で貧困、『息子のまなざし』(2002年製作)で罪を犯した少年、『ロルナの祈り』(2008年製作)で遺法移民と、一環して社会から疎外された人を描いてきたダルデンヌ兄弟の目線はブレない。その原点を尋ねると、弟のリュックは「わたしたちの故郷リエージュ州セランで1977年~82年に起こった大きな経済危機が影響しています」と語り始めた。

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 セランは鉄鋼業で成り立っていたが、経済危機により労働者4万人のうち8割にあたる3万2000人が解雇されるという事態が起こった。当時、20歳代だったダルデンヌ兄弟は、街が荒廃していく様をまざまざと見ていたという。リュックは「街に不法移民が増え、わたしたちが映画『イゴールの約束』(1969年製作)で描いたような移民の斡旋業者も見たし、多くの市民が失業して生活保護を受けるざるを得なくなってしまった。この5年で体感したことは大きい。だからこそわたしたちは社会の片隅に生きる人たちに興味を持ってきたと思うし、実際に初期のドキュメンタリーでは彼らのポートレートを撮ってました」と力を込めて語った。

 そして『少年と自転車』のように、厳しい社会の中で生き抜く子どもたちに対して憂うダルデンヌ兄弟の心情が作品から垣間見える。実生活で兄のジャン=ピエールは1人、リュックに至ってはマダガスカル人の養子を持つ3人の父という顔を持つ。一人の親として子育てについて尋ねると、リュックは「ウチの子は家出することもなかったね。大丈夫。きちんと成長しているよ」。一方のジャン=ピエ-ルも「ウチも不良にならなかったよ。秘訣? 妻がすべて面倒を看たから(笑)。それがわたしのやり方です」とジョークを飛ばした。巨匠は家庭でも、陣頭指揮を執るのがうまいようだ。

 ちなみにジャン=ピエールはすでに2人の孫もいるお爺ちゃん。ジャン=ピエールは「空手を習っている孫たちに稽古用の胴着をお土産に買っていく約束をしたんだ。今は円高だから高いけど、買っていかなきゃ殺される」と、好々爺の顔を見せていた。(取材・文:中山治美)

映画『少年と自転車』は3月31日公開

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