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フランスアニメの巨匠ジャン=フランソワ・ラギオニ監督を直撃!セザール賞にノミネートされた新作について語る!

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脚本家アニーク・レライ(左)、ジャン=フランソワ・ラギオニ監督(右)
脚本家アニーク・レライ(左)、ジャン=フランソワ・ラギオニ監督(右)

 フランスアニメ界注目のジャン=フランソワ・ラギオニ監督が、新作『Le tableau / The Painting(英題)』について、脚本家のアニーク・レライとともに語った。

ジャン=フランソワ・ラギオニが製作に!映画『プリンス&プリンセス』場面写真

 同作は、ある画家が未完成のまま残した絵画には、3つの階級に分かれた人々が描かれていた。それらの階級は、完全にカラーを塗られた人たちを上流階級のToupins、幾つかのカラーが欠けている人たちを中流階級のPafinis、そしてスケッチだけの人たちを下流階級のReufsと呼んでいた。この社会では、Toupinsが支配して、Pafinisを城から追い出し、Reufsを奴隷にしていた。だがある日、Toupinsの世界からReufsに迷い込んだラモと、Reufsのローラ、プルームの3人組が、彼らを描いた画家を見つけ出し、画家に絵を完成してもらおうとしたことから壮大な冒険が始まっていくというアニメ作品。セザール賞長編アニメ部門にもノミネートされた話題作だ。

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 まず、ジャン=フランソワ・ラギオニ監督は最初は演劇に興味を持っていたらしいが、フランスアニメ界の巨匠ポール・グリモー(『やぶにらみの暴君』、『王と鳥』)との出会いが、運命を変えたらしい。「僕が演劇を学んだのはたったの2年間で、演劇学校を卒業してすぐに、ポール・グリモーのもとで仕事を始めたんだ。彼とは10年間共に働いて、僕の最初の作品も彼が制作してくれたんだよ。ポールはとても人情深い人だった。それに彼は政治や芸術など、どんなことに関しても繊細な観点を持っていた。ただ、彼のアニメのスタイルはクラシックなもので、僕は彼とは違ったアニメを制作したいと思っていたんだ」と語った。

 そんな、ジャン=フランソワ・ラギオニ監督が設立したアニメ・プロダクション、“La Fabrique”について「“La Fabrique”は、僕が1979年に設立した古いプロダクションで、このプロダクションでは常に技術を磨くことに専念し、最終的にはアニメの巨匠と言われるくらいの技術を持ったアニメーターたちの育成をしていたんだ。だから、テレビ用のアニメなどは製作せずに、映画だけを手掛けていたんだよ。ただ、僕がこのプロダクションの経営をやめて、他の人に委ねてからもう10年が経つんだ。今のフランスのアニメ界は、それぞれのプロダクションが別々で、アニメのプロダクション同士が提携して製作することもなければ、全くアニメに詳しくないプロデューサーがアイデアを出して、それを製作/配給会社に持ち出して、アニメを制作することも多いんだよ……」と嘆いていた。

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 さて、そんなラギオニ監督がしばらくぶりに手掛けた同作は、3つの階級に分けられた社会を描いているが、これは現在のフランスを象徴したものなのか。「これは普遍的なものだと思っているんだ」とラギオニ監督が答えると、脚本家のアニークは「映画内ではReufsの階級にいる人々が失望し、Toupinsの人々が見下したように物事を見始めたときに、社会に亀裂が生じ始めるの。ただこれは、その時代やどの文化にも起きることだと思っているの。だから、フランスで起きている現在のこととは特に関係があるわけではないわ」と語った。この階級が生み出す亀裂がメッセージ性を色濃くしていて、単なるアニメ作品とは一線を画している。

 映画内では、人々を近づけない森林が描かれているが、これは今日の自然を消費し続ける人間たちへの訴えを表現したものなのだろうか。「特に訴えを目的にした作品ではないわ。もちろん、観客がこれまでのテレビのニュースや人々から話を聞いて、そういうメッセージ性のある解釈をするのは理解できるわ。ただここでの森林は、禁止区域の象徴で、その森林に入るには勇気が必要であることを示しているの」とアニークは説明してくれたが、そんな自然とのかかわりを描くところが、宮崎駿監督作品にも似ているように感じられた。

 映画は、丁寧に繊細に描かれたラギオニ監督のキャラクターが、浮遊するように駆け回っていく姿が印象的だ。最後に、映画内ではラギオニ監督は画家として登場している点も見所だ。たまには、日本のアニメ以外の作品を観てみてはどうだろうか? (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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