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Cocco主演『KOTOKO』ベネチアで20分間拍手鳴りやまず!塚本監督、Coccoの自傷行為を主人公に重ねたことを告白

第68回ベネチア国際映画祭

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塚本監督-第68回ベネチア国際映画祭にて
塚本監督-第68回ベネチア国際映画祭にて - Photo:Harumi Nakayama

 ミュージシャンCocco主演×塚本晋也監督『KOTOKO』が現地時間8日、第68回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門でワールドプレミア上映された。

第68回ベネチア国際映画祭コンペティション部門作品

 その内容は、モノが2つに見えるダブルビジョンや自傷行為などCoccoの半自伝的なことからインスピレーションを得て創作された、一人の女性の壮絶な生き様を描いた応援歌であることがわかった。

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  塚本監督は以前からCoccoのファンで、映画『ヴィタール』(2004年公開)ではCoccoがエンデイング曲を担当。また昨年、Coccoのアルバム「エメラルド」の発売を記念して制作された「0円ポッキリ!完全自主制作映像!Inspired movies(インスパイアード・ムービーズ)」の中では、塚本監督が「Coccoのお散歩。」を手掛けている。今回の長編映画の企画は、その延長として生まれたようだ。

 Coccoの映画初主演作とあって題材を何にすべきか? 塚本監督は関連書籍を読み、Coccoのインタビューを進めたという。その中で不思議に思ったのが、Coccoと愛息との微妙な距離感。それは何なのか? と追究していくうちに、幼い子どもを女手一つで育てていた女性が、息子を大事にするがあまりに過敏になり、やがては姉夫婦のもとへ預けざるを得なくなる琴子というヒロインが生まれたという。

 塚本監督は「そのころ、ちょうど僕は7年間介護していた母親を亡くしたとき。僕は母親に対してベタベタだったのに対し、 Coccoさんは自分が撮った息子さんの写真に“a boy in my bed”と、一人の少年~という表現をしていて、違和感を感じたんです。でも二人で話し合ううちに、最終的には両者とも大事なモノをむちゃくちゃ愛しているという感情は変わらないことに気づいた。そこで、そんな女性が、大事な人を大切に思う心の旅の映画にしようと思ったんです。ちょうど撮影の安全祈願をした日に東日本大震災が起こり、撮影を断念しようかとも思ったけど、愛する人への神経質なまでの強さを今撮っておかなければと、撮影を決行しました」と語る。

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 Coccoはドキュメンタリー映画に主演したことはあるが、劇映画は初めて。しかし、そのリアルな芝居は衝撃的だ。子どもをうまく育てたいけど育てられない琴子の精神バランスは危うく、演じるCoccoは全身全霊で泣き叫ぶ。また「生きている証を確かめたい」とたびたび自傷行為にも及んで血だらけになる。 Coccoと言えば2009年に雑誌で拒食症と自傷行為を告白しているだけに、白熱の演技は日本でも話題となりそうだ。

 塚本監督は「脚本を作るときに、僕もどこまでそのことに触れていいのか距離感がわからなかった。その一方で Coccoさんに肉薄したいという思いもあり、どうして自傷行為に走るのか? など僕なりに想像を膨らませ、Cocco さん像も取り入れながら脚本に書かせていただいた。それを一度Coccoさんに見せて、違和感があるところを指摘してもらいながら最終的にOKをもらいました。いつもの制作体制ではなく、本当に自主映画みたいにCoccoさんと一緒に作ったような作品です」と説明した。

 完成作品を観たCoccoの反応は「いつもなかなかパッとは答えてくれないけれど、とても喜んでくれたと思う。自分の濃密なテーマも入っているけど、『Coccoさんの生きてきたころは良かったでしょ?』という僕の思いは感じてくれたと思うので」と塚本監督は胸を張る。

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 その自信の言葉通り、公式上映ではエンディングロールが終わった後も拍手が鳴り止まず、約20分のスタンディングオベーションとなる熱狂ぶりとなった。残念ながらCoccoは現地入りせず、劇中でも披露する Coccoの歌声に魅了された観客から「彼女は来ていないの?」と残念がる声が多数あった。塚本監督は、2002年に同映画祭コントロコレンテ部門(現在のオリゾンティ部門)で審査員特別賞を受賞した『六月の蛇』を含む6度目のベネチア参加となるが、“世界のツカモト”の健在ぶりを見せつけていた。(取材・文:中山治美)

 映画『KOTOKO』は2012年春公開

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