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アカデミー賞を受賞した『瞳の奥の秘密』の監督、眠れぬ夜が続いた日々を告白

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ファン・ホセ・カンパネラ監督
ファン・ホセ・カンパネラ監督 - Photo:Nobuhiro Hosoki

 今年のアカデミー賞で、見事に外国語映画賞を受賞した映画『瞳の奥の秘密』(『The Secret in Their Eyes』原題)について、監督のファン・ホセ・カンパネラに話を聞いた。本作は、長年務めていた刑事裁判所を退職しベンハミン(リカルド・ダリン)が、かつて自分がかかわった残虐な事件を基にした小説を書くことを決意し、小説を書いていくうちに、さらに奥深い真相が見えてくる。ストーリーは、70年代と現在を交錯させながら秀逸な演出で語られていく。

 カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『白いリボン』と、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した『悲しみのミルク』を破って、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したことについて「まず、ノミネーションを受けてからアカデミー賞の1週間前までは、間違いなく『白いリボン』が受賞すると思っていたんだ。それまで、ほとんどの賞を受賞していたからね。それに、個人的にミヒャエル監督の作品は好きだし、もし僕が今回ノミネートされていなかったら、彼に受賞して欲しかったくらいなんだ。だから、ノミネートされたことは名誉なことだと思ったけれど、受賞するわけないから、リラックスな気分でいたんだよ」と謙虚に答えた後で、「ところが、アカデミー賞1週間前に、いろいろな映画のサイトやブログ、さらに雑誌などでこの映画の試写の評価がすごくよくて、ひょっとしたら受賞するかもしれないという記事を沢山読んだんだ。それから、僕は勘違いし始めて、夜まったく眠れない日々を送ったんだ(笑)。だから授賞式は、僕自身それなりに期待していたために、受賞したときもそんなには驚かなかったんだよ(笑)」と貴重な受賞体験を語ってくれた。

 原作者のエドゥアルド・サチェリと共に書いたカンパネラ監督の脚本は、原作の内容を少し変えているらしい「実は、原作では女優ソレダー・ビジャミルが演じたイレーヌ役は、70年代に起きたこの衝撃的な事件の裁判にはかかわっていないんだ。だが映画では、主役ベンハミンとイレーヌの関係が重要な形で描かれている。それに、原作ではベンハミンがイレーヌへの思いを心に秘めているだけなんだ」と映画とは設定が違うことを説明してくれたが、実際に変更したか所は「ただ僕は、もしこの過去に起きた残虐な事件が、彼ら二人の愛の出発点なるとしたら、現在の彼らの状況と交錯させながらストーリーが伝えられると思ったんだ。そこで、この発想を原作者のエドゥアルドに話したら、快く引き受けてくれて、容を変更することになったんだ」とこの二人のキャラクターの25年以上にも渡るラブストーリーに変更したことで、より奥深い構成に仕上がっている。

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 この映画の見どころは、ワンショットで撮影されるサッカー・スタジアムでの犯人の追跡シーン「スタジアムでの撮影自体はわずか3日だったけれど、その撮影をセットアップする過程は約9か月も掛かったんだ。すべてがスムースのいくように、50人のスタッフが携わっていたんだ。実は、このシーンも原作にはないんだが、これを映画内に加えたことで、観客自身がまるで犯人を追跡しているような感覚になり、それがキャラクターへの感情移入にもつながるんだ」と素晴らしいアクションシーンを説明してくれた。

 主人公のベンハミンを演じたリカルド・ダリンと、イレーヌを演じたソレダー・ビジャミルのキャスティングについて「リカルドは原作を読んだ時点で彼に決めていたし、彼とはこれまで3作共に仕事をしているから完璧だと思ったんだ。ソレダーも、別の映画で仕事をしてきたから、やり易いと思ってキャスティングしたんだよ」と述べたが、この映画では70年代と現在の役を同一人物が演じている「実際、70年代の40代の人と、現在の40代の人を較べてみると結構違っていて、70年代の40代の方が老けて見えるんだよ。だから、そのまま同一人物が演じても大丈夫だと思ったんだ」。だが、現在の設定は俳優たちがメイクアップは施している「ソレダーは、もともと若く見えるし、実際の年が現在の年と同じくらいなので、首筋だけで、そんなにメイクアップは施さなかったが、リカルドは、現在の設定でゴム状のメイクアップをかなり顔に施したんだ(笑)」。映画内では、同一人物が演じていても、違和感を感じないくらいうまく作り上げられている。

 全米で人気テレビシリーズの『ロー&オーダー』も手掛けてきた彼は、英語でうまく表現できないキャラクターの魅力を母国語で表現したかったために、再びアルゼンチンで製作したらしい。次回作は、アニメーションを制作する予定らしい。(取材・文:細木信宏 Nobuhiro Hosoki)

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