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アカデミー賞作品賞は世相を反映する 経済不安や地球温暖化は賞にどう影響する?

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昨年、アカデミー賞作品賞含む8部門を制した『スラムドッグ$ミリオネア』
昨年、アカデミー賞作品賞含む8部門を制した『スラムドッグ$ミリオネア』 - (c)2008 Celador Films and Channel 4 Television Corporation

 作品賞候補枠がこれまでの5作品から10作品に拡大され、受賞作の予想が例年以上に難しくなっている今年のアカデミー賞だが、アカデミー賞を受賞する作品は、そのときのアメリカの国情や、世相を反映しているものが受賞する傾向がある。では、なぜ昨年の受賞作品『スラムドッグ$ミリオネア』は、アカデミー賞作品賞含む8部門を制するほどの快挙を成し遂げたのか。映画史を振り返りながら探ってみた。

 1930年から40年代までのハリウッドの黄金期には、『オズの魔法使』『駅馬車』『嵐が丘』など規模の大きいエンターテインメント作が製作され、その中でもアカデミー賞作品賞含む9部門受賞した映画『風と共に去りぬ』(1939年)がヒットした背景には、南北戦争敗北による没落から見事経済的に成功するものの、精神的な幸福感を得られないヒロイン・スカーレットの姿が、世界恐慌での復興の途上にありながらも大義や志を失った当時のアメリカの国情と類似していたことがあげられる。

 また、ベトナム戦争や、人種差別の反対を声高に叫ぶ運動が盛んだった60年代には、映画『野のユリ』(1963年)で、シドニー・ポワチエが黒人初の主演男優賞を受賞した。70年代には、終わりの見えないベトナム戦争の影響で、アメリカン・ニュースネマといわれる反体制的な主人公のドラマ『カッコーの巣の上で』がアカデミー賞作品賞、主演男優賞(ジャック・ニコルソン)、監督賞(ミロス・フォアマン)ほか主要5部門を独占。第51回アカデミー賞(1978年)では、ベトナム戦争の敗北とその後遺症を描いた『ディア・ハンター』(作品賞ほか5冠)、『帰郷』(主演男優賞ほか3冠)が賞を独占した。そして、80年代は冷戦の影響が人々の不安を増長させ、その反動でアカデミー賞では『普通の人々』『愛と追憶の日々』『レインマン』など家族という身近なテーマを重厚に描いた映画が、次々と作品賞を受賞した。

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 では、昨年アカデミー賞8部門を制した、インドを舞台に、貧しい環境に育った無学の青年がクイズ番組で勝ち進む姿を描いた『スラムドッグ$ミリオネア』が、なぜ有名スターが出演する話題作に圧勝したのか。それは、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』『ミルク』『愛を読むひと』などの候補作の中で、2008年のリーマンショックが引き金となった国際的な金融危機の影響が、色濃く反映された結果だろう。

 さて、今年のアカデミー賞作品賞は一体どの作品に与えられるのか。オバマ大統領が就任し、世の中が変わる兆しをみせる一方、ハイチの大地震や、地球温暖化問題、そしてイラク問題など解決しない問題で世の中は混沌としている。そんな中、環境問題を揶揄(やゆ)しているといわれている映画『アバター』や、イラク問題を真正面から描いた映画『ハート・ロッカー』は時代を色濃く反映していると言えよう。対抗馬の、映画『プレシャス』、『マイレージ・マイライフ』も、時代によって生み出された問題を描いてはいるが、こちらは個人的な問題。よりスケールの大きい『アバター』や『ハート・ロッカー』にアカデミー協会の審査員の注目が集まる可能性が高いだろう。

『スラムドッグ$ミリオネア』は3月7日よる8:00よりWOWOWにて放送

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