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蜜蜂と遠雷 (2019):映画短評

蜜蜂と遠雷 (2019)

2019年10月4日公開 119分

蜜蜂と遠雷
(C) 2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

くれい響

原作者絶賛も納得の、作り手の本気度

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

闇に葬られた感のある石川慶監督の『愚行録』での妙な緊迫感はそのまま、原作者・恩田陸が絶賛するのも納得の仕上がりだ。500ページ超の原作を119分の尺で収めるため、やはり駆け足感はあるものの、それが作り手との本気度の高さとともに、作品全体にただならぬ熱量を与え、ほぼ中だるみなしで一気に魅せる。キーワードとなるオリジナル「春と修羅」を楽曲として聴くことができるのは悦ばしいが、やはり『ちはやふる』の“しのぶちゃん”同様、今や天才役を演じたら右に出る者はいない松岡茉優の圧倒的な存在感。どこか素に近い物腰の柔らかい家庭持ちを演じる松坂桃李など、ほかのキャストとのバランスもいい。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

ちゃんとプロコフィエフで世界が鳴動する!

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

現在の価値基準におけるガチなクラシック音楽界を題材に、恋愛や余計なドラマに流れることなく、2時間という適切な時間内でこれだけ濃密な作品に仕上げた石川慶の冒険的精神にまず拍手。硬質で色数を抑えた撮影で、3人の天才と1人の秀才の「自分探し≒自分の音探し」(砂浜で戯れるシーンは感動的)を簡潔な台詞と適切な音で描いてみせるが、そこを言葉で適当に誤魔化すんじゃなく、それぞれのキャラクターに合った音符を藤倉大に書かせ、近似値の奏者に演奏させたからこその成果がはっきり表れている。松岡茉優も勿論いいが、それ以上に松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士の男性三人が見せる、真の意味での「自然な演技」が凄い。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

天才という人間

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

重厚な原作を愚直に映画化。凡人には計り知れない領域にいる人々の人間としての喜怒哀楽を描くという難題に全力で挑んだスタッフ・キャストの熱意に素直に拍手を贈ります。松岡茉優は流石の存在感、また天才ではない人間の目線の持ち主を演じた松坂桃李の“普通さ”も新鮮。新人鈴鹿央士の無邪気な天才さも光ります。表情で伝える平田満、個性を消したブルゾンちえみの好演も◎です。
スタントダブルのピアニストをしっかり明記しているのも好感が持てる。できるだけ、音響の条件がいい劇場で見て欲しい一作。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

音楽の美しさと再生力を、選ばれし天才たちと体験する

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

前作『愚行録』は微妙に神経を逆なでし、もったいつけた演出もあったが、それも原作の精神への忠実さ。今回も石川監督は原作の支柱をブラさない。多少、作り込みすぎな瞬間はあるが、終盤の音楽とドラマの異様レベルの化学反応、盛り上がりは、作品のテーマをまっすぐ表現し、陶酔させる。前作に続くポーランド人撮影監督の大胆なカメラワークも効果的。

コンクールに懸けるピアニストの切実な思いがドキュメンタリーかと錯覚する強靭な生々しさで伝わるのは、適材適所のキャスト、その役どころをわきまえた演技の賜物。とくにこれがデビュー作で、天才少年独特の感性を憑依的にみせきった鈴鹿央士は、文字どおり「新星」のきらめきを放つ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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