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『生理ちゃん』二階堂ふみ 単独インタビュー

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『生理ちゃん』二階堂ふみ 単独インタビュー

自分のものさしで人を測らないことが大切

取材・文:早川あゆみ 写真:ナカムラヨシノーブ

女性たちの「生理」を擬人化し、手塚治虫文化賞短編賞を受賞した大ヒットコミックの映画化作品。女性ファッション誌の編集部でバリバリ働きつつも恋人に思春期の娘がいることで悩む、二階堂ふみ演じる主人公を中心に、SNSで毒を吐く清掃員や、彼氏との関係に煩悶する受験生ら、さまざまな立場の女性たちとその「生理ちゃん」が、コミカルに、でも共感度抜群のほろ苦さで描かれる。若くしてその実力に定評のある二階堂は、異色な設定とビジュアルを持つ今作にどう挑んだのか。さらに女優としての生き方まで、存分に語った。

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作品として世に出ることの意義

二階堂ふみ

Q:「生理」をキャラクター化して直接的に表現するという、なかなかインパクトのある作品ですが、どこに魅力を感じられてご出演を決めましたか?

お話をいただいてから原作を読ませていただいたんですが、自分も女性として生まれてきて体の変化を体験してきましたし、世の中の女性の多くが経験されていることだと思います。これまではあまり語られなかったことが、こういうストレートな形で作品として世に出るようになったのは、素晴らしいことだと感じました。それに参加させていただけるのは、すごく意義のあることだと思います。

Q:女性の生きづらさなどが男性にもわかりやすい形で表現されていたので、「女性は大変だ」とわかってくれるかもしれませんね。

そうですね。でも、男性も男性で別な部分で大変ですから。女性が毎月向き合ってることだって人によってぜんぜん違うので、一概に「こういう症状があります」「これくらい辛いです」と表せません。ですから、この作品からは、その人のことを考えるとか、自分のものさしで辛さを測らないとか、人に対する思いやりが大事だと感じました。男性側と女性側と分けるのではなく、女性同士でも男性同士でもそうです。

Q:ご自身は、女性として人として、この時代に生きづらさを感じることはないですか?

最近は、結婚や出産だけが女性の生き方ではないと広く認知されてきましたよね。男性にも女性にもいろいろな生き方があっていいんだと、世の中が寛容になってきたと思っています。

周囲の声が自分の糧になる

二階堂ふみ

Q:女優として広く活躍されていますが、その活動の原動力になっているのは何ですか?

ここ数年で、見てくださった方の声を直接聞けるようになりました。わたしはInstagramをやってるんですが、そこに「いつも見ています」「映画、面白かったです」といった声をたくさんいただくんです。自分が肌で触れられる距離感の人だけではなく、実際にはお会いしたことのない方の中にも、自分の映画で楽しい時間を作ることができたんだなと思うようになって、より一層、「誰かと一緒に生きている」ということを強く実感するようになりました。

Q:ファンの方の声が大きいということですね。

いま、一番大事にしてることかもしれません。もちろん、直接お会いして、つながることも大切です。昨年、大河ドラマ「西郷どん」で島の女性を演じた際、実際に島で生活してらっしゃる方々との関わりで生まれてくる感情がありました。そこで仲良くなったおばあちゃんとその後もずっと交流を持っていて、放送のときにとても喜んでくださったんですよ。そんなふうに実際にお会いした方々や、ネットを通じて声を届けてくださる方々、そういう周囲からのたくさんの言葉が、ちゃんと自分の糧になっている感じがあります。いろいろな方に、自分の中の引き出しを開けていただいている気がしています。

表に立つことでできること

二階堂ふみ

Q:カメラマンとして写真集を出版されたり、お洋服がお好きだったり、歌がお上手だったり、興味や趣味の幅が広いですよね。

広げようと思って広げているわけではなくて、誰かに教えてもらったりして好きになると、その世界に魅了されてしまって、どんどん深く知っていく感じなんです。女優というのは、いい意味でも悪い意味でも影響力のある仕事だと思っていますけど、見てくださる方の興味の選択肢の中間地点にいられたらいいなと思っています。それが表に立つことの意義でもあるのかな、とも。

Q:選択肢の中間地点とは、具体的にどういうことでしょうか。

たとえば、テレビでわたしのことを好きになってくださった方が、わたしの映画を観て映画自体をすごく好きになって、「ほかの映画もたくさん観るようになりました」というお声を、Instagramでいただいたことがあります。微力ながら、自分がその方の「知るきっかけ」を作ることができたんです。わたしを通して、それまでその方が知らなかったカルチャーに触れてくださったら、すごく素敵だなと思っています。

Q:たとえばどんな事柄ですか?

わたしは動物がとても好きで、いま、犬や猫の保護活動にとても関心があります。そのことでいろいろな取り組みをされている方々に何か協力したいと思っていますし、それを見てくださった方が何かの行動を起こしてくださったらいいなと思っています。そして、そのみなさんと一緒にいろいろ考えられる人になりたいですね。

感情の経験が増えていく

二階堂ふみ

Q:女優以外の別の職業につくことは考えたことがありますか?

違う人生を歩んでいたらどうだったのかと考えることはけっこうあるのですが、でも、どんな職業も簡単にできることではないですから。長い経験が必要だったり、そのために努力してらっしゃる方がいるので、簡単に「やりたい」「なりたい」とは言えません。

Q:二階堂さんにとって、女優という職業の魅力は何ですか?

役を演じさせていただくと、自然と自分の中の経験になるし、そこで生まれた感情が自分のものと結びつくことがあるんです。本当は経験してないのに、感情の経験になるというか。それがとても素敵なことだなと思っています。あとは、これしかできないからかもしれません(笑)。もちろん、表に立たせていただくありがたさや難しさも含めて、好きで続けているんですけど。

Q:今後のために心掛けていることはありますか?

なるべくフラットでいることは、常に心掛けています。主観だけではなく、客観性もすごく大事だなって。お芝居のこともそうですけど、たとえばメディアを通して知った何かのニュースなどでも、いろんな考えを持つ方がいらっしゃるので、多角的に見ることが大事だと思っています。自分が実際に生で見て、聞いたことじゃない限り、常に別の可能性も視野に入れながら物事を見るようにしています。難しいですが(笑)。

Q:女優として、この先にやりたい役や企画はありますか?

作品や役は、出合いだと思っています。ですから、あまり「あれをやりたい」「これがいい」というのはないんですが、そのときどきに自分を必要としてくださる方々のもとに行けたらいいなと思います。


二階堂ふみ

クールな刑事、男子(!)高校生、色気と狂気をたたえた愛人……どんな役でも「この人しかいない!」と思わせる究極の演技力の持ち主である二階堂ふみは、その中身もとても魅力的だった。しっかりと自身の意見を語り、その立ち位置までも意識しているたたずまいは凜としていて、うっとりするほど美しい。彼女がこの先の邦画界にもたらすものは、計り知れないほど大きい。それは予測ではなく、確信だ。

ヘアメイク:足立真利子/スタイリング:大島陸

映画『生理ちゃん』は11月8日より全国順次公開

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