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『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』染谷将太 単独インタビュー

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『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』染谷将太 単独インタビュー

周りは全員外国人という初の経験

取材・文:柴田メグミ 撮影:金井尭子

遣唐使として中国へ渡った若き天才僧侶・空海を主人公とする、「陰陽師」シリーズのベストセラー作家・夢枕獏の「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」。その小説をカンヌ国際映画祭パルムドール受賞監督、チェン・カイコーが映画化した日中合作ビッグプロジェクト『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』で、空海役に抜擢された染谷将太。幸せな海外作品初主演を飾った彼が、贅沢かつクリエイティブなカイコー組の撮影現場を振り返った。

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中国で“謎の笑み”と言われる空海

染谷将太

Q:ほぼ中国の方に囲まれた環境での撮影は、遣唐使の空海と重なる部分があるかと思いますが、気持ちをつくるうえで役に立ちましたか?

比べるのはおこがましいですが、置かれた状況が似ている感覚はありました。中国は今も、パワーがある大国。そこへ独りで向かい、日本人として何か一つ成し遂げなくてはならない、という想いは当時とすごくつながりました。自分の周りは全員外国人という関係性は人生で初めての経験でしたから、面白かったです。

Q:共演された俳優から刺激を受けたこと、学んだことはありますか?

しっかり自分の役割をわかっていて、自信やプライド、意見を持っている方ばかり。堂々とパフォーマンスする、その力強さがとても刺激になりました。現場ではシーンごとに、監督とスタッフとキャストで円陣を組んでミーティングをしたり、台本を開いてどういうシーンにするか、芝居をどう創り上げるかを話し合うんです。もちろん意見も求められます。とても刺激的でクリエイティブな空気があふれている、コミュニケーションの多い現場でした。

Q:空海のキャラクターについては、どのような話し合いをされましたか?

空海は特殊な人物ですが、監督の思う日本人らしさについて伺う一方、こうしたらより日本人らしく、空海らしく見えるのではないかという提案をさせていただきました。日本人らしさがそのまま空海らしさにつながる、というのが現場の一致した意見だったんです。例えば一歩引いて物事を見たり、お辞儀を入れてみたり。白楽天はあぐらをかいているのに空海は正座をするといった、細かい作法です。

Q:親日家の監督がイメージしていた日本人らしさについて、教えてください。

実は知っているけれど、それを相手にあえて伝えずにニヒルに笑う(笑)。「お見通しだよ」という感じで、相手をからかうんじゃなくて、クールなイメージのようです。「僕の友人には、そういう日本人が多いんだ」と監督はおっしゃっていました。

Q:確かに、これまで演じられてきた役柄以上に、染谷さんの笑顔が印象に残っています。

中国の観客の間では、“空海の謎の笑み”と言われているらしいです(笑)。

0.1秒単位で追求した美の世界

染谷将太

Q:チェン・カイコー監督の作品で、特に好きな1本を挙げるとしたら?

代表的な作品となりますが、『さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき)』ですね。10代の頃に知り合いに薦められて、初めて監督の作品に触れました。美しくて、どうしようもなく心を揺さぶられて、世界が絶賛するのも納得です。

Q:実は空海役の染谷さんの姿から、(『さらば、わが愛~』に主演した)レスリー・チャンを思い浮かべていました。優雅な身のこなしのせいか、染谷さんの色気が旧作以上に際立って見えたようです。

うれしいですね。優雅さについては自分でも意識しましたし、監督からも言われました。「たとえ慌てるシーンでも優雅に」と。急いでもバタバタせずスムーズに、ただし誰よりも速く(笑)、というような演出が多かったです。色気のことは特に考えてはいませんでしたが、現場の役者さんたちを見て、「この映画の世界にいる人たちはみんな色気があるな」と思っていました。

Q:カイコー組ならではのマジック、でしょうか?

監督は「真の美しさとは何なのか、この映画を通して見つけ出したい」とおっしゃっていました。その言葉通り、監督はすべてにわたって細かく、指の先まで美しさを追求して実現させた、贅沢な作品だと思います。振り向きが0.2秒早いとか、そういうこだわりに日々、驚いていましたね。何も考えずにこの世界に浸ればいいじゃないかと、現場ではスタッフの方々が創り上げた完璧な世界観に身を任せていました。撮影のスケールが大きいゆえに監督が求めるものもとても大きい、今でも信じられないような体験ですね。

頭が真っ白になった吹き替え体験

染谷将太

Q:5か月間に及ぶ長期撮影というのも、日本の撮影現場ではなかなか経験しないことだと思います。時間にせかされずに演技に没頭できる反面、集中力の持続や体調管理の面では大変ですよね?

まず環境が違うので、体が慣れるまで少し大変でした。撮影ではデイシーンをまずワーッとやって、それからナイトシュート。ナイトは基本的に、昼夜逆転で行うんです。夕方集合でリハーサルをして、日が昇る朝までやって帰るパターンが1週間続く。それが体に結構応えて……風邪を引いたりしました。でも自分が頑張ればいいだけのことで、それは大したことないですね(苦笑)。ただ集中力を持続することは、意識しました。モチベーションを長く保つのはやはり難しいので、アスリートになった気持ちで、いい意味での息抜きをしつつメリハリをつけて。それから食事も、食べ慣れた中華とはいえ朝・昼・晩となると、和食が恋しかったです。

Q:全編にわたる中国語での演技はもちろん、日本公開版用にそれを新たに日本語で吹き替えるというのも、初めての経験ですよね?

中国語のニュアンスのまま演じると、どうしてもおかしくなってしまうんです。日本語吹き替え版では、日本語での空海というキャラクターを新たに創らないといけなかったので、久々に頭が真っ白になるくらい難しかったです。そして天才の空海だけに、美しい言葉遣いで、しゃべり方も美しく。例えば普段の自分の口調で声をあてると、子どもっぽく聞こえてしまう。スマートな青年に仕上げるためには、また全然違った技術が必要になるんですよね。

ホームズ&ワトソン的な面白さ

染谷将太

Q:親しみやすい、チャーミングな空海像が出来上がったと思います。

今回は監督が親近感を覚えやすい空海像を目指したので。ちょっといたずら心があったり、やんちゃだったり。少年っぽい魅力を残したキャラクター像にしていきました。何を考えているかわからないミステリアスな部分もあるんですけど、フッと普通の人間らしい感情を露わにするところもある。その点は、観客の共感を呼ぶんじゃないかと思います。

Q:タイトルからは、観客にとって遠い存在の偉人ドラマが連想されますが、「シャーロック・ホームズ」のホームズとワトソン的な面白さがありますね。

自分はそういうイメージを持って撮影に臨んでいました。頭脳プレイヤーで推理に長けた空海と、とにかくよく動く白楽天という、「静」と「動」の2人。白楽天がさまざまな情報を得てきて、空海が謎解きをしていくミステリー劇です。空海と白楽天のバランスが面白くて、バディものとしても楽しめますし、彼らがどんどん謎に迫っていく、謎解きのエンターテインメントにもなっている。1,800円の料金の元が取れる映画だと思っています。


染谷将太

コメントの端々から監督をはじめスタッフ、そして共演者への尊敬の念が感じられ、彼らと創り上げた作品に対する自信が滲む染谷。10代で主演した園子温監督作『ヒミズ』で、ベネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)を日本人として初受賞してから7年。日本が誇る若き才能が大舞台で披露する晴れ姿に、多くの映画ファンが魅了され、ますます世界へ羽ばたいていく彼の今後を予感させられることだろう。

(C) 2017 New Classics Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film

映画『空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎』は2月24日より全国公開

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